31話
2018年、見に来てくださりありがとうございました!
「何がいります?」
袂に幾つか符を突っ込みながら、先輩2人に聞いてみる。
人、それも陰陽寮生の捜索だ。何か変わった捜索の仕方があるのか無いのか。
「なしてそない思うん?」
「だって、ただの捜索なら前みたいに妖達の人海戦術だけで良いんじゃ無いかなぁって思って。
それなら、他部署との協力とかいらないしなあ、って」
違う?と占術署には行けずお留守番していた夕霧と暁さんにも聞いてみる。
≪中々、分かってきたねぇ≫
「というと」
≪各部署には各部署のやり方がある。疎かにすれば、面倒なんだよ≫
「プライド的なやつね。大人って面倒だわぁ」
「ぷらいど・・・?相変わらずチョイチョイ変わった言い回しするなぁ。
準備するんは、とりあえず自分で考えぇ。それも練習やからなぁ」
にんまり笑う東堂さんに、うーむ、と顎に手を当てて考えてみる。
とりあえず、幾つか当たりをつけて袂に突っ込んだり夕霧の袂に突っ込んだり暁さんの袂に突っ込んだりした。
≪オイ≫
≪自然に突っ込んだねぇ≫
青筋立てる夕霧に、仕方ない子だなぁと笑う暁さんと対照的な2人にへらりと笑って誤魔化した。
≪しかも。何故食い物≫
袂から私が突っ込んだものを取り出した夕霧は、笹に包まれた鹿肉のジャーキー擬きに眉間に皺を寄せた。
「とりあえず食い物があれば良いかな、と」
≪極論だねぇ≫
「さー、準備できた!」
ちゃっちゃとやりましょう!
腕捲りをするように示せば、何故か夕霧以外に笑われてしまった。解せぬ。
太陽が中天に差し掛かった頃、陰陽寮の門で門番の赤鬼と青鬼と談笑しながら慈郎サンを待つ。
≪アー、占術署との共同かぁ≫
≪えらい面倒なこっちゃなあ≫
赤鬼と青鬼にも言われるとはよっぽどだなぁ、と思う。
≪都は今、ちいとばかり騒がしい≫
≪我らは此処から動かぬ故に詳しくは知らぬがな。気をつけなさいよ≫
≪左様。気をつけよ旭≫
ワシワシと、3mの巨躯に見合う大きさの手で頭を撫でられる。
≪気をつけるー。2人も気をつけてね≫
へらりと笑う。この陰陽寮の門番の方が絶対大変だしねー。
「旭は、いつのまに門番と仲良くなっててん」
「驚いたな」
≪あぁ、出かける度に声掛けたり土産渡したりしてたかなあ≫
「お土産?」
≪些細なものだぞ。
門番は動けぬもの故、アレが楽しさのお裾分けをするのだと毎回毎回起こった出来事、見聞きしたものを話して関連するものを渡している≫
≪可愛いよねぇ。前回は山に行った時の土産と木通を渡していたよ≫
門番は、あくまでも、門番でしかない。何より妖であるし旭のように親しげにする存在ではない筈なのだが。
「オモロイ子やなあ」
「妖との距離が近い旭ならではだなあ」
すごーい、良いなあ、と陽太がキラキラした視線を旭に向ける。
そんな時だ、門番と話す旭を怪訝な表情で見ながら慈郎がやって来たのは。
「お待たせしましたね。で、アレは何です」
「あれとはなんや。あれとは」
アレ、と指すのは時間が来たのかと門番達に手を振る旭の事だ。
≪アァ、視えぬと旭が門に笑顔を振りまいているようにしか見えぬか≫
≪視えぬ故に仕方のない事、だが、どうも気に触る言い回しではないか≫
≪ワシ、あいつ嫌いやわ≫
≪私も関わりたくないニンゲンです≫
「まあまあ、雷市、落ち着きぃや。占術署のが不躾なんは今更や」
「炎環、落ち着け」
夕霧や暁とは違い、雷市と炎環は普段から常に姿を見せているわけではないので珍しいな、と今この瞬間は至極どうでもいい事を旭はのほほんと考えていた。
≪あれはまたどーでも良い事考えてるな≫
≪旭らしいな≫
「・・・」
「ほな、行こうか」
「(先の思いやられる)」
眉間に深く皺を刻み苛立ちを隠さない慈郎を気にするそぶりなく、旭と陽太の背を押す東堂にやれやれ、と源は溜息を吐いたのだった。
2019年も皆様を少しでも楽しませれるような、むしろ私が楽しめる話を書いて行きたいと思います。引き続きよろしくお願いします!




