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28話

「いろいろ有り難うございました!!!!」


「ああ、解決したンか。良かったなぁ」


協力してくれた橘道邑さんにちょび髭さん事件のお礼を言いにこれたのは、諸々の事後処置・・・報告書とか報告書とか報告書・・・が終わって初の休日のことだった。


事件中、何度か訪れたため人避けの呪は全て例外扱いされているようで何の縛りもなく正面から屋敷に入った私と夕霧と暁さんを溜息混じりに出迎えてくれた道邑さんの顔は気のせいか諦めが見える。


一室に案内され、茶を夕霧が淹れる間に野球部も吃驚なくらい90度のお辞儀をして礼を言えば、声の大きさにかお辞儀にか道邑さんは目をパチパチと瞬かせたあと嗚呼、と納得したような声で頷く。


「けったいな挨拶やさかい驚いたわ。それ、式神署の礼の仕方なん?」


「いや、私方式で!」


「さよか・・・」


にっこり笑えば、道邑さんは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした後、クツリと声を押し殺すかのように笑った・・・微笑みはほんの数度見たけれど声に出して(押し殺してはいても)笑っているのを見たのは初で、おお!!と目を輝かせてしまう。



「なんや、ウチが笑うのがそんなに珍しいか?」


「もの凄く!!縁起がよさそう!」


「縁起・・・?」


<ふは!!!余りにも笑顔が貴重で縁起物扱いとは!流石我が友!それに旭だ!>


今日は稲荷の面の暁さんの爆笑に、そんなに笑うほど面白いこと言ったかな?事実じゃない?と返せば、更に笑う始末。

「暁サン、最近笑い上戸過ぎないかしら?」


「道隆はそんなに笑っとるのか。不思議なモンやなぁ」


「?」


首を傾げれば、不意に前髪がさらりと流れ、普段は見ることのない道邑さんの目が真っ直ぐ私を見ていて思わずそわそわしてしまう。


前髪長くて雰囲気は引きこもりだけれど、初めて見た道邑さんの整った顔立ち。正統派2枚目といった雰囲気だ。



そういえば夕霧はイケメンだ。自信を持って言える。タイプで言ったらアスリート系むしろ武闘系?


暁さんも普段はオモシロお面で顔を隠したオッさんだけど、顔立ちは整っている。一世を風靡したアイドルが素敵オジサンになった感じ。最近じゃあ滅多に素顔を見ないけど。


先輩二人もタイプの違うアイドル系だ。序でに言えば伊佐さんもチョイワル親父風イケメンだった。オジサンのファッション雑誌に出てきそうな雰囲気の。


「私の周りにはイケメンしかいないのか・・・」


<池面?>


「いけてるメンズ・・・ね。つまり格好いい人ってこと」


「かっこいい?」


「んーなんて言うんだっけ。平安的なイケメン・・・・この間聞いた・・・雅男?」


「ふむ・・・道隆は雅男とは縁遠かったと思うが?教養はともかく」


「そう?まあ私の時代だったら間違いなく此処にいる四人は女の人に困らなかったと思うよ。断言する!」

にへらと笑って言えば、道邑さんは目を瞬いてウチも?と驚いた顔をした


もう、道邑さんは笑顔だけじゃなくて表情変わるだけで縁起物な気がする。



「さておき、一件落着したならようやったんやない?ウチが渡した情報を元にしたと言うても一人に絞れたわけやない。虱潰しに当たって、よう見つかったわ」


「そりゃあまあ、人海戦術のおかげって言うモノですね!」


道邑さんから渡された20人前後まで絞り込まれた対象に、鴉達の協力と羅城門の二人、暁サンや夕霧も私が寝た後交代で探し回ってくれていたからこそ、ギリギリだが間に合うことが出来たのだ。


「もうちっと、己を褒めたらどうや・・・君はようやったと思うで。君やなく、仮に他の寮生に尋ねられていたら、ウチは協力せんかったと思うしなぁ」


「?それは暁サンがいたから・・・」


「道隆にやったら余計協力せえへんでウチ。勝手にやれ、ゆーてりだすわ」


やれやれと頭を振った道邑さんは、恐る恐る手を伸ばし、私の頭をふわりと撫でた。


「ようやった」



「!!」



・・・それは、ひょっとしたらこの平安に来て1、2を争うくらい胸にキた褒めの言葉だった。






Side道邑


ようやった。その言葉に嘘偽りは無い。陰陽寮に入りたての童が少ない情報を元に動いた結果被害は最小限の賊の根城のみ。


都の一部を騒がせていた賊も気絶していたところを縄に掛け、検非違使に引き渡したというのだから上々だろう。


ちんまいのになぁ・・・と改めて旭を見れば、驚くほど顔を朱に染めてあわあわとしていた。



「なんや、熱でも出たンか?」


さっきまで顔色は普段と変わらなかったはずだが、まるで熟れた柿のように頬のみならず耳まで朱に染める旭に熱冷ましの薬はあったかと薬箱の中身を思い浮かべる。


「熱なんかじゃないよ・・・」


「んん?ほんなら何でそないに頬を染めてるンや」


「嬉しかったから、かなぁ」


「は?」


「嬉しかったの。褒めてもらって。認めてもらったような気がするから」


・・・・なんやのこのイキモノ。へにゃりふにゃりと顔を緩めて、全身で嬉しくて堪らないという雰囲気。

こんな顔、自分に向けられたことがない。

なんやの?なんでこんな、ウチまで熱くなってくるやないの。


「なんなんやいったい・・・」


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