24話
「で、用件はなんや」
「人を探しているんです。正確には幽霊なその人の身元を」
部屋に上がり、宣言通りお茶を淹れ(夕霧お母さんが)、暁さんが何処から取り出したのか茶請けの干し柿を私と道邑さんの前に出してくれた。
そのとき、道邑さんが奇妙なものを見る目をしていたのに気付きつつスルーした。
やっぱり、暁さんの袂の容量は謎だよね。
「・・・ウチの記憶は、台帳10冊分程度や。
やから、それ以前になるなら台帳を見直さないとアカン。
とりあえず、特徴を言いや」
台帳10冊分がどの程度かわからないけど、教科書10冊丸暗記と考えると凄まじい。
本気でその記憶力を分けて欲しい!
「そんなえぇもんやない」
「そう?私は羨ましいよ。
だって、陰陽術の教科書分厚いんだもんー!」
うへぇという顔をしたら、道邑さんはポカンと口をと開けた。
・・・こいつ、阿呆なんだろうか、って思われている気がする。
「キミ、変やなあ」
「そんなしみじみ言わなくても」
「変なとこは、道隆そっくりや。アイツも変な奴やった」
《変って》
「放っておいて欲しかったんや。やのに、あの馬鹿は何かにつけて構って来よって。
ほんで、散々掻き回して死によったんや」
最後に小さく呟いた言葉に、ナルホド。っと横に座る暁さんを見上げた。
《?なんだい??
というか、道邑は今なにを?》
「道邑さんは淋しいですか??」
「ウチが?そんなことあらへん」
ないない、と首を振る道邑さんだけど絶対淋しいんだろうなー、と思う。
私だったら淋しい通り越して悲しいもの。
「パーソナルスペースにずかずか入って来るやつが、ある日消えたらやっぱり淋しいよ。
最初は苛つくけどね、きっと」
「苛つくんは同意しとくわ。
ぱーそなるなんちゃらが何かはわからんけど」
ふっと口元を緩ませる道邑さんに対して、ボロクソに言われている暁さんはズーンとしている。
・・・お面しているのに、表情豊かな人だ。あ、人じゃなくて鬼神でした。
「経を書いた尊い人ってのを探すんが近道やろーなぁ」
「デスヨネ」
「とりあえず、何人か可能性のある方を選んでみたるわ」
「ありがとうございます!」
「エェ顔するやん君。
・・・馬鹿が気に入るんも分かるよぅな気がするわ」
「え?」
《道邑も分かる??やっぱり僕ら似た者同士や》
「道邑さん、似た者同士や、って喜んでますけど」
「はぁ?勘弁してや。イヤやわ」
《ヒドイ!!》
プイッと顔を背けた道邑さん。二人のやり取りは見ていて面白い。
道邑さんが暁さんの姿見れたら良いのになあ、と思いながら見守っていた夕霧を見る。
《どうした?》
「んー。私もあの二人みたいに夕霧とコンビになれたらいいなあー、って」
《こんび?》
「相方みたいな?」
《あぁ、ナルホド。
なれるだろ。何より、お前の隣をどこぞの馬の骨に譲るつもりはない》
笑う夕霧に、デレが来たー!って珍しいものを見る目をしたら頭を叩かれた。
・・・解せぬ。




