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22話

そのお屋敷は、陰陽寮から意外と近くにあった。



まあ、近いと言っても子供の足では一時間は歩く距離だ。



周辺には似たような屋敷が多く、聞けば一帯の屋敷の持ち主は皆、朝廷で働く貴族の屋敷なのだそうだ。



《ここが橘の屋敷だよ》



「?・・・何だかイヤな雰囲気だし、結界も張ってますね?」



《妖と人避けの呪が掛かっているな。結界も、とは随分厳重じゃないか?》



門に近付くにつれて、重たい雰囲気になり、とうとう門の3歩前で足を止めた。



そんな私を見て、門を見た夕霧は半ば感心したように暁さんに尋ねた。


というか、妖避けたはともかく人避けって・・・。



《橘道邑という男は、優秀だが人嫌いでね。



この呪と結界も私が彼の依頼で掛けたんだ。ちょっと変人だが、根は良い奴だよ》




ははは、と笑う暁さんに、人嫌いなのに治部省で働くの?と疑問を投げ掛ける。だって、絶対人に関わるよね?



《好き嫌いで残念ながら仕事は出来ないという事だね。


彼の記憶力は素晴らしい。恐らくだがこの都の戸籍は頭に入っているだろう》



「なにそれ羨ましい。その記憶力分けて欲しいわ」



暗記系のテストで怖いものなしじゃないかと、まだ見ぬ橘さんの頭脳を羨ましく思った。



《ははは、なるほどね。



だが、残念ながら彼はその能力のせいでずっと大変だったのだよ。



私も羨ましく思うが、一方で哀れとも思うよ》



そう言って、暁さんは私の手を引き、門とは反対に進む。



「行かないの?」



《呪を解いてないか確認したかったんだ。



入る為には、裏に回らないとダメなんだよ》



そこに隠した入口があるから。と続いた台詞に、凄い知人なのだと思った。色んなイミで。



うん、流石前陰陽頭の知人。






裏に回って、暁さんが何もない壁を押したら結界が少し綻んだ。



《さ、入ろうか》



「壁を押して結界が綻ぶってアリ?というか大丈夫なの?」



《問題ないよ。僕が鍵でもある。



仮に夕霧が触れたら怪我するから》



仮面の下、笑った暁さんにナルホド、と呟いた。



張った本人だものねー。



感心してた私は、暁さんを呆れた目で見ていた夕霧に気付かなかった。



《(幾ら自分が張ったからといえ、今は自分も妖。霊力が変化し阻まれて火傷した癖に隠すか。カッコつけめ)》

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