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15話

「近くまで来たら余計にでっかい門だねぇ」


陽太の声に、頷く。門もだけど、門番の鬼が大きい。


陽太の生んだ月牙も2mもあるから大きいけれど、門番は3mはあるんじゃないだろうか。とにかく大きい。めっちゃ大きい。


でもって生まれたての月牙と違って、何年も生きてきたんだろう。とってもどっしりとした二鬼だ。


《おや、これはこれは。既に妖と契約しているとは中々優秀な子やね》


《おぅおぅ。安倍晴明以来やのぅ》


赤鬼青鬼の声に、え?と顔を上げる。見上げた先には思ったよりずっと優しげな目が二対あった。


「こんにちは?」


《こんにちは。お嬢ちゃん。えらい強い妖を連れてんなぁ》


夕霧と暁を見た赤鬼の言葉に、旭がにへらと笑う。


「素敵な友達であり、家族であり、先輩?でもあるの」


《これは面白い子やナァ。妖が友で家族か》


《奇特な子や。けれど儂は好きやのぅ》


《僕もや。こんな子が陰陽師になるんは大歓迎やで》


にんまり笑う青鬼に赤鬼もニコニコ笑う。


「・・・というかスルーしかけたんだけど、安倍晴明って言った?」


《知ってるか?今一番実力がある有名な陰陽師や》


《先の陰陽頭の小野道隆を陰陽対決で破ったンや。今一番勢いあるのぅ。儂は小野道隆のが好きやったけどなぁ》


青鬼の言葉に、おかめの面を被った暁さんを見れば、その雰囲気はちょっと嬉しそうなものだった。


「(しっかし、安倍晴明・・・超有名人じゃん)」


無知とは言わないが、余り歴史に詳しくない旭でも知っている陰陽師。ドラマや漫画の主人公になっていた名前だ。


「(そんな人、ぎゃふんと言わせる事出来るのかなぁ。無理な気がするわ。だって私だし)」


《さ、嬢ちゃん。もうじき鐘が鳴るで》


《鐘が鳴ったら、門が開く。開いたら右にまっすぐや》


「右?」


《嬢ちゃん、それからそっちの青鬼連れた坊は、合格や。右行き》


「ごう、かく?」


《僕らは最初の試験管やねん。見鬼を持ってたら合格や。嬢ちゃんと坊は文句なしの合格や。まっすぐ、右に行けば待機してる陰陽師がおるで》


赤鬼がそう言った途端、鐘が鳴り響いた。


《さ、門が開くでぇ》


青鬼の言葉とほぼ同時に、巨大な門が音を立てて開いた。


「門が開いたぞ!!」


門が開いた途端、恐らく貴族ではない人達から慌てたように門を抜けていく。一方の貴族達も、牛車に乗ったまま門に入り始めた。


「旭、行く?」


「行こうか。右だね?鬼さん達」


《ああ、右だ》


《小野のような陰陽師になれよ嬢ちゃん、坊》


二鬼の言葉に、大きく頷いた。


「あ、夕霧、暁さん」


《なんだ?》


《どうした?》


「手、繋いでいこう」


《・・・は?》


《ふーん?良いよ勿論》


ポカンとする夕霧に笑って、右手を差し出す。暁さんには左手を差し出した。


「陰陽師になれるかは、わかんないけど、この門を潜るのは私にとってこの世界で大きな一歩だと、思うから。私がここに来る切っ掛けというか、背中を押してくれた二人と一緒に、潜りたいな、なーんて」


別に鞍馬山にいても良かったと思うよ。今でも、ちょっとそう思う。


でも、陽太や月牙に出会えたのは良い出会いだと心から思えるし、羅城門の水瀬さんと山姥さんと出会えたのも良かった。


この教科書に出ていた平安京に足を踏み入れたのも良い経験かなあ、と思える。


だからこそ、夕霧と暁さんと一緒に踏み入れたい。


《仕方ないな》


《ふふふ。良いね、本当に旭は》


そっぽを向く夕霧と、おかめの面をしているけれど嬉しそうに笑う暁さんに私はちょっとだけ照れつつ、両手を繋いで門を潜った。


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