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13話

「これから、旭はどうするの??」


月牙との契約を交わし終わった陽太が思い出したように聞いてきた時、私も漸く、本来の目的を思い出した。


「しまった試験!!!!」


結構時間経ったよね!!??大丈夫かな!!??


《問題ない。確かに徒歩では無謀だが、我々の足なら余裕だ》


「良かった・・・マジで忘れてた・・・」


ほーーーと深く息を吐いた私に、陽太はキョトンとした顔をする。


「試験って、なんの・・・?」


「陰陽寮に入るための試験だよ。私は、それを受けるために(本当はイヤだけど、とっても面倒だけど)鞍馬山から降りてきたの」


「陰陽寮・・・」


《旭、何かまた含みのあったような気がしたが?》


ワキワキと何時でもアイアンクローが出来るように手を動かす夕霧に、ブンブンと首を横に振った。暴力ハンターイ!!


「ねえ旭!!ボクもそれ、受けることが出来るかな?」


「え?陽太は陰陽師になりたいの?」


「ボク、でもなれるなら・・・」


《大丈夫だろう》


語尾を小さくする陽太に、暁さんが安心させるように微笑んだ。


「本当!!??」


《明るい時間に妖を視ることの出来る見鬼の才、青鬼との契約・・・どちらも陰陽師になるには十分すぎる力だ。


陰陽師の中には、見鬼がまともに出来ない奴も少なくない》


目を輝かせる陽太に暁さんはワシワシと髪を撫で、理由を話した。


というか、見れないのに陰陽師やって大丈夫なの?


《陰陽師には、幾つか仕事が分かれているから、見鬼の才が無くとも他が勤まれば問題ないので。


もっと詳しく説明したい所だけど、そろそろ向かった方が賢明だねぇ》


私の表情を読み取った暁さんは苦笑混じりにそう言うと、妖三人でアイコンタクトを交わす。


なんかイヤな予感がひしひしと。


《では、月牙。場所は分からないだろうからしっかり後ろを着いてこい》


《わかっている》


《・・・旭、何後退っている?》


「イヤな予感がするからかなー!!」


《ふむ。その予感は当たっているぞ。仕方あるまい?間に合わなければ意味がないからな》


ハハハと態とらしく笑った夕霧は、ひょいっと私を抱える。


まさかこのパターンは!!!!


《心配するな。空は飛ばぬ。月牙は飛べないからな。


屋根を駆けるだけだ》


にんまり笑って音もなく近くの屋根に飛び乗ると(どんな跳躍力!!)凄まじい早さで走り出した。


やっぱり!!


「(ハヤイハヤイハヤイ)」


《顔面蒼白だな旭・・・。だが我慢しろ。流石に時間を食いすぎだ。


全力は止めておくから怒るなよ》


猛スピードで変わる景色に気持ち悪くなっていると、夕霧のそんな声が聞こえて、えぇ!!??と思わず声を上げる。


「(これで全力じゃないなんてーーーーーー!!)」


《妖だぞ?俺は。


空を飛ぶ方が確かに速いが、地を駆けるのもそれなりに速い》


ふふん、と胸を張る夕霧に、頬が引きつったのは仕方ないよね。うん。


とりあえずその全力は一生味わいたくないな、うん。






「楽しかった!!」


《それは良かった》


猛スピードで変わる景色を楽しんだ猛者、陽太とその反応に頬を緩める月牙の姿はほのぼのして見える。


月牙、マジでなんか可愛いよね。青いし超ゴツイのに!ホワホワしてるよ、陽太に褒められて花が舞ってるよ!


でも、とにもかくにも!!


「陽太大物過ぎる!!」



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