12話
しまった!と頭を抱える私に、アルビノ少年と青鬼はキョトンとしている。
うーむ。少年はともかく、青鬼も可愛い・・・・じゃなくて!
「夕霧!何で教えてくれないの!
っていうか、夕霧も暁さんも、しっかり聞いたでしょう!
ダメじゃん!!」
《旭、そう怒るな。
青鬼は戦闘能力がずば抜けているんだ。
特に、自我の生まれたばかりの鬼は時に混乱し、暴走しかねん》
溜め息混じりの夕霧の言葉に、私は未だにキョトンとしている青鬼を見る。
うん、全身青いけど絶対イケメンだよね。声も良いし。
顔面偏差値高いやつ多くない?
「とにかく!
青鬼サン、ごめんね!!聞いちゃって!!
記憶消せるなら消しちゃって!!」
痛くなきゃオーケーよ!と頭を下げながら言えば、何故か皆、わたわたし始めた。
《旭、頭を上げろ!なんで青鬼に頭下げるんだ!》
《お、お前妖になんで簡単に頭下げるんだ》
「なんで頭下げるの?!悪いことしたの??!」
夕霧、青鬼、アルビノ少年が反応バラバラだけどほぼ同時に言うので、結局イマイチちゃんと聞き取れなかった。
でも、とりあえず夕霧の頭は届かないから太ももをペシリと叩いておく。
「あのね、妖は真名を知られると、命を握られたも同然なんだって。
青鬼サンは、生まれて間もなく、首に縄が掛かったようなものなんだよ」
一人分かっていない少年に教えると、名前・・・・と小さく呟いた。
「そういえば、名前聞いてなかったね。私は旭。君の名前は?」
何時までもアルビノ少年と呼ぶのもね、と名前を聞いたら、ウルッとした涙目で此方を見てきて吃驚する。
「ボクにも、名前を付けて?」
「え」
《なんだ、名無しだったのか》
「え」
「ずっと名前が欲しかったけれど、誰もボクに名前を付けてくれないし、誰も呼んでくれないから、諦めかけていたんだけど」
青鬼の言葉に頷いた少年は、再びウルッとした目で此方を見てくる。
いやいやいや・・・・私、そんなセンスないし!
「扇子?」
「じゃなく!
あー・・・・・陽太かな。」
名前が扇子ってオカシイでしょ。
扇子でも喜びそうな少年に、直感で、少年っぽい名前を考える。
太陽みたいに明るい少年になれば、と思った。
「ひなた・・・・ボクの名前」
「気に入った・・・・?」
「ウン!ありがとう!旭!」
目を輝かせ喜ぶ陽太に、照れくさいなあ、と頬を掻く。
《よしよし。
では陽太、青鬼と契約を交わすか?》
暁さんの言葉に、陽太はキョトンとする。
「けいやく?」
《青鬼と真名を交換し、盃を交わせ。
青鬼は、強いからな。お前が生んだのだ。責任を取れ》
「青鬼は、良いの?」
《俺に問うか?俺を生んだのは、お前だろう?
だが、契約するならば仮名も付けてくれ》
「だって、君は君だもの。
仮名??」
《・・・・お前は守る奴がいないと早死にしそうだから、守ってやる。
青鬼は種族名だ。仮名とは、そこの烏天狗の夕霧や、鬼神の暁のように、呼んでも構わぬ名前だ。
真名は隠すものだからな》
「仮名・・・」
うーん、と悩む陽太に、青鬼はどこかソワソワしている。
楽しみなんだー、可愛いよね、やっぱり。
「月牙でどうかな?ボクがお日様だから、お月様から」
《月牙・・・・有り難く頂く》
心なしか嬉しそうな青鬼、基、月牙に、陽太も嬉しそうに笑った。
《では契約すると良い》
すちゃっ!と盃、小太刀、神水を袂から取り出した暁さん。
え、マジで袂にどれだけ入れてるの??
何で誰も突っ込まないんだー!?
容量オカシイでしょ、絶対。




