第二十六章 トンの町 4.市場
複数回更新の二話目です。少し短いです。
ナントさんの店を出てから真っ直ぐ宿へ向かおうとしたけど、思い直して足を市場の方に向ける。昨日ちょっと歩いただけで、スパークリングオレンジと昆布が見つかったくらいだ。今日は今日で、また新しい練習材料が見つからないとも限らない。スキルの練習になるものは、とにかく見つけ次第に確保しておいた方がいいような気がするしね。
昨日の続きを観るような感じで市場を歩き回っていると、懐のシルが何かを感じ取ったように動き出す。シルの注意が向けられている方向へ歩いていくと……
あぁ、これかぁ。エキセントリックマンゴーとサンディーメロン、それに初見の果物が幾つか。どれもこれも品質はB。瑞々しくって美味しそうだ。シルのご飯と僕のデザート代わりに幾つか買い込んでおこう……マンゴールはどうしようかな。かぶれの原因なんか抽出して、かぶれたりしたら厭だしなぁ……。
そうだ、どれを買うかはシルに決めてもらおう。シルが選んだのは……
「あいよっ。メロンとマンゴーが四個ずつ。アップルヴァインとゴールデンプラムは何個にするかい?」
「どんな味なんですか?」
「説明しろって言われてもねぇ……そうだな、アップルヴァインの実は、形は林檎に似ちゃあいるが、もっとねっとりとした感じで甘みが強いな。メロンみてぇに蔓の先に生るんだが。マンゴーもそうだが、干しても美味いぜ。ゴールデンプラムは……まぁ、プラムだわな。見てのとおりでかいけどよ」
ゴールデンプラムは練習用にはならないみたいだけど、アップルヴァインの方は一応スキルの対象になるみたいだ……ただし中級の。
【素材/食品アイテム】アップルヴァインの果実 品質B レア度2
多年生の蔓植物の果実。水分はやや少なめで、ねっとりした甘さが特徴。生食するほか、ドライフルーツやソースに加工して食する事も多い。
特殊スキル【分離(特殊)】によって水を抜き、ドライフルーツに変える事ができる。ただし、初級スキルで水分を分離した場合、水溶性のエキスを溶かし込んだまま除去されるため、できたドライフルーツは味が劣化する。ドライフルーツの作製には中級スキルの使用が推奨される。
「それじゃぁ……それも同じように四個ずつ下さい」
「あいよっ、毎度ありっ」
果物屋を離れて歩いていくと、昆布を買ったのとは別の乾物屋が見つかった。店の品を眺めていると、スキルの練習になりそうな素材があったので迷う事無く買っておく。干した貝柱みたいだけど……結構良い値がした。
【食品アイテム】ダイミョウホタテの貝柱(干物) 品質B レア度4
ダイミョウホタテの貝柱を干したもの。三年物で旨味が濃縮されている。
特殊スキル【浸漬(特殊)】を使うと上手く戻す事ができる。
更に歩いて行くと、懐の中でシルが再び身じろぎをした。あ……この辺りには憶えがあるな。だとするとシルの目当ては……あぁ、やっぱりここか。以前に鶏卵を買った店だ。茹で玉子にしたら美味しかったんだよね。……買っていこう。
そろそろ日も暮れてきたので宿へ戻る事にする。
次話は21時頃更新の予定です。




