表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/899

第二十五章 篠ノ目学園高校(水曜日) 2.放課後

 放課後、図書委員会の用事があるという(かなめ)ちゃんを除いた僕たち三人は、昨日に続いて今日も親水公園にやって来ている。心地よい春風に吹き散らされる桜の花片(はなびら)の中を、木漏れ日を受けて歩くのは良い気持ちだよね。


「四月も半ばだというのに、ここは桜が満開だよな」

「同じ桜でも種類が違うみたいだよ。大島桜とか大山桜の系統じゃないかな」

「花期の長い桜並木は親水公園の名物だもんね」

「へぇ、知らんかったわ」

「むぅ~、(たくみ)君は花より団子かぁ~」

「いや、そんな事はないぞ? 同じ見るだけなら団子より桜の方が楽しいし」

「むぅ~」


 (あかね)ちゃんは不服のようだけど、僕も指を(くわ)えて団子を見ているよりも、花を見ている方が楽しいけどな。


「論点が違うよ~」

「「?」」


 なぜかご機嫌斜めの(あかね)ちゃんを(なだ)めて、桜並木のベンチに腰掛ける。柔らかな木漏れ日の中で話す内容がゲームというのが風情をぶち壊してるけどね。


「で、(しゅう)は【錬金術】をモノにしたのか?」

「そう、あたしもそれ聞きたかった」

「モノにしたって程じゃ……初級の仮免許を取ったところだよ」

「やっぱり【錬金術】?」

「いや……初級は【調薬】も【錬金術】も同じ内容みたいだよ? 薬屋の師匠に【調薬】の指導を受けたら、【錬金術】も取得済みになってたし」

「あぁ……そう言えばβテストの時にもそんな事があったな」


 (たくみ)の証言によると、【錬金術】の取得を目指していたβプレイヤーが該当するスキルを取得して、目出度(めでた)く転職となった時に、【錬金術】と【調薬】の二つの選択肢が提示されたんだそうだ。


「初級のスキルは【錬金術】も【調薬】も共通って事なんだろうな」

「でも、通常はどっちか一つしか取れないのよね?」

「あぁ、(しゅう)のケースはかなり特殊だな」

「む~、どうやったら二つも取得できたの?」

「判んないよ。気がついたら拾ってたんだから」

「『スキルコレクター』ってのは謎のスキルだな」



 実はレア素材を無造作に売り払うシュウイに辟易(へきえき)した運営陣が、レア素材の流出をシュウイの手元で止めるべく、素材を消費する【錬金術】と【調薬】を押し付けたというのが真相なのだが、三人ともそんな裏事情は知らない。ごく単純に「スキルコレクター」というユニークスキルのせいだと誤解していた。



「で、今は初級だとか言ってたよな」

「仮免許だけどね。修得した筈のスキルにしても、まだまだ覚えなきゃならない技術が多いみたいだし」


 中級の作製をやろうとしたら【抽出】スキルが未修得判定だった件と、ビタミン抽出の件を二人に話しておく。


「普通の【錬金術】や【調薬】にはそんな面倒な手順は無かった筈だから、やっぱり邪道アーツの特徴みたいだな」

「でも、できる事は多いんだよね?」

「その分成長が遅いんじゃないか?」

「でも、(しゅう)君は【器用貧乏】持ってるよね?」

「あのスキル、Lv3以上に上がるのには効果無いよ?」

「そうなんだ……」


 スキルをある程度使えるようにするという点では役に立つけど、本格的に熟練するためには、結局繰り返して練習するしかない。


「けど、【錬金術(邪道)】や【調薬(邪道)】で、レシピが解放されないってのは厄介だよな」


 うん? どういう意味だろう。


「普通の【錬金術】や【調薬】は違うの?」

「基礎だか初級だかを修得したら、扱えるレシピが自動的に解放される筈だぞ?」

「何、その至れり尽くせりの仕様……」

「邪道アーツの場合は自力で探さなきゃ駄目なのかもな」

「茨の道だよね~」


 気力を削られるなぁ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ