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第二十三章 篠ノ目学園高校(火曜日) 2.放課後

 (あかね)ちゃんと(かなめ)ちゃんが、毎日「(マク)()」でパフェ三昧は健康に悪いと言い出したため、今日は学校の近くにある親水公園まで歩いて来ている。教室の前でこそこそとウェストとか体重がどうとかいう言葉が聞こえたのは気のせいだ。そう言う事にしておかないと駄目なんだよ。


(たま)にはこういうノンビリした雰囲気もいいわね~」


 木蔭のベンチに座って(かなめ)ちゃんはご機嫌だ。学校からここまで、片道およそ三千歩ほどあるしね、うん。


「何か言いたい事でもあるの? (しゅう)君」

「ううん? 健康的で良いな~と思ってただけだよ?」


 うん、健康的なんだよ。


「まぁ、気持ち良いのは事実だよな」


 親水公園は小さな子供たちにとって恰好(かっこう)の遊び場だ。今日も母親に連れられたちびっ子たちが歓声を上げている。僕たちも子供の頃はよくお世話になったもんだ。


 長閑(のどか)な光景を目の当たりにしながら、僕らはしばらくぼけーっとしていた。こういう時間も大切だし、その時間を共有できる友人がいるのは良い事だよね。


「そう言えば(しゅう)、レベリングは(はかど)ってるのか?」

「うん、順調だよ。僕はLv7になったけど、シルはまだLv3なんだよね……。幻獣というだけあって、レベルが上がりにくいみたいなんだ」

「幻獣だもんね~」

「てか……(しゅう)はもうLv7かよ。一体どんなレベリングやってんだ?」

「え? シルのレベリングに付き合って狩りをしてるだけだよ?」

「従魔の狩りに付き合うって……何かおかしくない?」

「いや、問題はそこじゃなくて……何を狩ってるんだ?」

「別に……プレーリーウルフとかスラストボアとか……ワイルドボアにスキップジャックヴァイパー……大物はモノコーンベアとマーブルボアくらいかな?」

「……」

「……ソロでか?」

「え? ソロの(わけ)ないじゃん」


 そう言うと、なぜか三人はほっとしたような顔をした。心配してくれてるのかな。大丈夫、シルがいるから。


「実質ソロって事じゃねぇか……」

(しゅう)君、気付いてないのかもしれないけど、その戦果は異常だからね?」


 へ? ケインさんたちなんか、ギャンビットグリズリーやレッドタイガーを狩ってたよ? ソロだとこんなもんじゃないの?


「比較対象が間違ってるよ……」

(しゅう)君、『黙示録(アポカリプス)』はβプレイヤーでトップパーティだからね?」

「ケインさんたちを基準にすんなよ……」


 そうなの?


「でも、今のままだと火力不足だから、攻撃手段が欲しいんだよね」

「あぁ……魔法スキルが取れないんだっけ」

「うん。武器スキルはこないだ【杖術】を拾ったし、自力である程度は何とかなるかもしれないけど、魔法スキルはね。『スキルコレクター』の仕様だと厳しいかな」

「ねぇねぇ、魔道具は?」


 魔道具!? そういえば以前そんな事を……


(あかね)ちゃん、戦闘向きの魔道具ってあるの?」

「え~と……」


 (あかね)ちゃんは困ったように(たくみ)たちの方を向いた。あぁ、言ってみただけか。


「噂だと魔剣があるんじゃないかって言ってたな」


 魔剣!?


(たくみ)! その話、詳しく!」

「いや……β時代にプレイヤーの一人から聞いたんだけどな、クローズドβに参加したプレイヤーとリアルで飲んだ時に、そういう話がポロッと出たらしい。詳しくは聞き出せなかったみたいだけどな」

「その話は初耳ね」

「む~、(たくみ)君、何で黙ってたの~?」

「いや、だって噂だけだし、曖昧な話を流すわけにもいかないだろ?」


 うん、噂だけでもこれは期待が持てるかな?


「それに、似たようなもんなら既にあるだろ?」


 うん?


「あぁ、効果付きの武器ね」

(かなめ)ちゃん、それって何?」

「簡単に言うと、斬りつけた時に効果がプラスされるような武器の事。与えるダメージが増えたり、火属性のダメージを与えたりね」

「……それって、魔剣とは違うの?」

「効果付きの武器はキャラクターが作るものだから」

「今は住民(NPC)しか作れないけどな」

「魔剣はそれの上位版って事?」

「みたいなんだが……よく判らねぇんだよな」

「他のゲームだと、武器自体が意志を持ってたりするわね」

「あと、進化したりとか」

「何か……凄いんだね」


 うん、魔剣はともかく、効果付きの武器なら手に入るかな?


「効果付きの武器って、どこで買えるの?」

「あ~……一応ナンの町にはあるけどな」

「何?」

「俺が見たのは大剣と盾だったぞ?」

「う……使えない」

「まあ、この先入手の機会があるかもしれないし」


 それを期待するかぁ……

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