第二十二章 トンの町 1.北東のフィールド
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
ログインしてから宿で朝食を済ませると――現実で夕食を済ませた後にSROで朝食というのにも最近は慣れた――その日の予定を考える。
匠たちには【錬金術(邪道)】と【調薬(邪道)】のスキル検証って言っておいたけど、道具も素材も何も無いんじゃできる事なんてほとんど無い。せめて薬瓶くらいは買っておきたいところだけど、早朝じゃ開いてる店も多くない……バランドさんもお店は十時過ぎに開けるって言ってたしね。
という事で、少なくとも午前中は選択の余地無く狩りに決まった。昼頃戻ってきて道具を買い揃え、【錬金術(邪道)】と【調薬(邪道)】の検証でいいかな。
で、狩りのフィールドなんだけど……
「北のフィールドじゃあ手緩過ぎてお前のレベリングにならないし、だからと言って東のフィールドでギャンビットグリズリーやレッドタイガーを相手にするのは、主に僕の攻撃力の点で厳しいし……北と東の真ん中ぐらいに行こうか?」
そう問いかけると、シルは同意するかのように頷いた。……小さいけどそこは幻獣(のAI)だし、きっと僕の言う事も解ってるんだろうな。
場所も決まったし、シルの朝ご飯が済んだら出かけよう。……シル、お前、果物ばかり食べてるけど、本当にそれで大丈夫なの? 運営さんは大丈夫だって言ってるけどさぁ……。
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北と東の真ん中辺りのフィールドに来てみたんだけど、出てくるモンスターの難易度も二つのフィールドの中間くらいかな……数は多いけど。さっきから【虫の知らせ】【気配察知】【嗅覚強化】をオンにしているんだけど、結構ボロボロと引っかかるんだよ。
スラストボア、プレーリーウルフ、ワイルドベア、ミミックジャガー、スニーカークロウ、スキップジャックヴァイパー、レイダーワーム……それにマーブルボア。
マーブルボアはケインさんたちが東のフィールドで狩ったのよりは一回り小さな個体だったけど、僕とシルだけで仕留めるのはさすがにきつかった。シルの【力場障壁】が無かったらあっさり詰んでたよ。もっと火力を備えてからじゃないと、東のフィールドはソロにはきついよね。……というか、僕のスキルをどうレベリングしても、ギャンビットグリズリーやレッドタイガーに通じるとは思えないんだけど。いや……【土転び】は大活躍したけど、肝心の打撃力が不足して、ちまちまと削っていくしかなかったんだよね。……スキルに関係なく叩き斬るような武器、例えば鉈みたいなものを準備しておけば良かったのかな?
守りについてはシルの【力場障壁】は万全だし、盗賊退治クエストで得た【シルバーバックの革鎧】もあるしで、そう心配は無いんだけど……やっぱり攻撃力がなぁ……。
ナントさんに相談してみるか、それとも新しく手に入れた【錬金術(邪道)】が何か仕事をしてくれないかな……。いや、武器で思いついたんだけど、モーニングスターってどうかな。あれなら単純に殴るだけだし、スキル無しでも何とか使えるんじゃないかな?
シュウイが頭を悩ませていると電子音が響き、「スキルコレクター」が新たなスキルの落手を報せた。
へぇ、【飛礫】かぁ……既に【投擲】スキルは持ってるんだけど……【飛礫】の方は石に特化したスキルみたいだね。投げ槍なんかは扱えないんで捨てられたのかな? でも、特化スキルって強力なものが多いし、【投擲】も持ってるから、重ね掛けすれば強力なものになるんじゃないかな。だとすると投げるのは石かそれに近いものになるけど……待てよ?
シュウイは何かを思いついた様子で、昼食もそこそこにトンの町に戻って行った。




