第十五章 篠ノ目学園高校(木曜日) 2.放課後
少し短いです。
放課後、僕は「幕戸」――しつこいようだが、正式名称を「帳と扉」という喫茶店――で友人三人にタカられていた。
「ううぅ~……匠に缶ジュース一本奢って終わりの筈だったのに……」
「や~、蒐君に感謝~♪」
「本当にご馳走様♪」
「その……悪いな、蒐」
「けちけちしないの! レア素材でウッハウハなんでしょ?」
「現実にお金が入ってくる訳じゃないよ!」
匠だけじゃなく、茜ちゃんと要ちゃんにまで奢る羽目になったんだよ。……二人とも遠慮ってものを投げ捨ててるし……(泣)。
「まぁまぁ、掲示板には私たちも書き込んでおくし」
「そぅそぅ、人数が多いほど拡散するよ」
「……別に僕の利益にはならないし……」
「うわぁ、蒐君がヤサグレてる……」
うぅ~、ヤサグレたくもなるよ……。
「それより、蒐、なんか進展はあったのか?」
「なんで僕の事ばかり聞くのさ? 匠たちこそどうなの? 一応βプレイヤーがナンの町で最前線を争ってんだから、何か話す事がある筈だよね?」
僕が聞き返すと、三人とも微妙な顔を返してきた。
「や~、それがな~」
「PKも、クエストも、乱闘もないの!」
「十年一日の如しって感じなのよ」
「フィールドに出てモンスターを狩って、ドロップを売って、終わりって感じだから、殊更に報告する事が無くてなぁ……」
何それ……。
「だからっ! 蒐君の話を聞きたいの!」
「代わり映えのしない毎日における、一服の清涼剤なのよ」
「ゲームまで倦怠感に侵蝕されるようじゃ拙いんじゃ……」
「で、俺たちの事はおいといて、何かあったか?」
「うん。明日、従魔術師と召喚術師の娘たちとウルフ狩りに行く事になった」
「……待て、どうしてそういう話になった?」
不思議そうな三人に、プレーリーウルフをテイムするというメイとニアの計画について説明する。
「あ~、そういう事か~」
「モフモフ云々はともかく、連携して闘えそうなプレーリーウルフを二体というのはありね」
「ああ。現時点で最善の選択かもな」
「蒐君、こっちも掲示板に載せる?」
「メイとニアの意向も確かめずに、勝手な事はできないよ。それに、狙いどおりにいくかどうか判んないしね」
「結果については報告しろよ?」
「ねぇねぇ蒐君、シルちゃんのデビュー戦?」
「う~ん、もう少し内緒にしておきたいかな」
少なくとも、従魔がそれほど珍しくなくなるまでは隠しておいた方がいいよね?




