第十四章 トンの町 2.ナントの道具屋
明日はメイとニアに付き合ってウルフ狩りだから、そのための準備が必要だ――って事で、ナントさんの店にやって来た。
「ご免下さ~い」
「いらっしゃ……おや、シュウイ君か。ナンの町はどうだった?」
「あはは、レア素材が売れて、俄お大尽ですよ。なので、今日は道具を買いに」
「ははぁ、良かったね。で、お望みの品は?」
「丈夫な縄と錘はありますか?」
「……忍者プレイでもする気かい?」
「できるんですか!? 忍者プレイ?」
「いや……β組の一部が探してるらしいけど、該当するアーツは見つかってないね。寧ろシュウイ君の方が見つけやすいんじゃないかと思ってるけど?」
そっか~、NINJAか~。あればいいな~……。
「NINJAには惹かれるものがありますけど、今回の狙いは少し違います。ボーラを作れないかと思いまして……」
「ボーラ……あぁ、三つ叉鎖の事ね」
「はい。忍者が遣うものは『微塵』とも言いますね。それを作ろうかと」
「また、渋いとこ狙ってくるね、君は。差し支えなかったら理由を聞いても?」
ナントさんが興味津々といった体なので、理由を説明しておいた。別に隠す事じゃないよね?
「テイム用にプレーリーウルフを捕獲するねぇ……相変わらず面白い事考えるなぁ、シュウイ君は」
「駄目ですかね?」
「いや、駄目って事は無いと思うよ? けど、そうしたら重さが結構重要だよねぇ」
「そうですね。重過ぎても軽過ぎても上手く飛ばないと思いますから」
ナントさんは裏の方でごそごそと探していたが、幾つかの錘を持って戻って来た。ボーラに使えそうなやや大きめの錘の他に、巧い具合に手の中に収まりそうで、かつ握るのに丁度良い太さの鉄の分銅も混じっていた。これは……解ってるなぁ、ナントさん。
「うわぁ……使い易そうな分銅も混じってますね~。材質は鉄ですか?」
「そりゃ当然。質の良い鋼鉄だよ」
「ナントさん、狙って仕入れたんですか……忍者用ですか?」
どう見ても正木流の万力鎖か、後藤流の分銅鎖だよねぇ。
「あ~、やっぱり憧れるからねぇ……ちなみに、鎖は鍛冶屋に頼めば付けてくれる筈だよ」
「あ、ナンからの帰りに知り合いになった鍛冶師の人がいるんで、そのうち頼んでみます」
「へぇ……ちなみに、誰だい?」
「テムジンさんっていうエルフの鍛冶屋さんです」
そう言うと、ナントさんは驚いたような顔をした。
「テムジンかい? また、シュウイ君は引きが強いというか……よくもまぁって言いたくなるほどβ組の知り合いが多いよね」
「ナントさんもその一人ですよ?」
「ははは、光栄だね。で、必要な物はこれだけでいいのかい?」
「え~と……他に買っておいた方が良い物って、あります?」
「う~ん……あ、ポーションは多めに持って行った方が良いよ。自分だけでなく、契約対象のウルフにも必要になるかもしれないし」
あ……そうか。考えてなかったけど、そういう可能性もあるんだ……。
「ここって、ポーションも売ってますか?」
「いやぁ、さすがにポーションまでは扱ってないねぇ。あれは薬師ギルドの取り扱いになるから」
薬師ギルド……薬屋になるのか。後で行ってみようかな。吹き矢用の毒も欲しいところだし。
「じゃあ、とりあえずこれだけ下さい。あ、あと、スキルのない僕にも使えそうな道具があったら教えて下さいね」
「毎度あり~。気をつけておくよ」




