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機械仕掛けの聖剣使い  作者: epina
Episode03 Sinner Zardas

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Vol.34

 ちょっとした遊びのつもりが、まさかドラゴンに遭遇してしまうとは。

 とりあえずブレス対策に、ヤツの口を空間拘束(ロック)する。


「!!?」


 おおー、混乱してる混乱してる。

 ん、ものすごい暴れ出した!

 イオノクラフトに命令して距離を取る。


 しばらくもがき苦しんでいたが、やがてホワイトドラゴンはその身を横たえ、動かなくなった。


「あれ?」


 死んでしまったようだ。


「あ、窒息したのか!?」


 むごい殺し方をしてしまった。

 ドリッパーを召喚して、気絶させようと思っていたのに。


 巣の中を探索する。

 こんなトコロに住んでたんじゃ、たいした宝もなさそうだ。


「うっ……」


 人間と思しき白骨死体がある。

 肉がないのでグロくはないが、気分のいいものではない。


「つか、この辺に人が住んでるのか?」


 いわゆる凍土は未踏破の地域だ。

 領土拡張中の聖鍵領ははるか西だし、魔王もこんなところには侵攻していないので、情報などもほとんどない。

 一応念のため、このへんにも寒冷地仕様の調査ドローンを派遣しよう。


 ドラゴンの巣は早速、拠点改造指定。

 この辺に展開するならドロイドトルーパーより、セントリーボットがいいだろう。


「ん、そろそろのぼせてきたかも」


 長湯は良くない。そろそろ帰るとしよう。



 晩御飯は宣言どおり、ハルードからシェフを招いてバケシロパーティだ。

 今回は身内だけで、楽しむことにする。


「ほーっほっほ! さすがは聖鍵陛下ですわ、こんなに美味な料理の数々を披露できるなんて!」


 ヒルデは美味いイコール高いという認識らしい。


「一応いい店のヤツだけど、王族の手の出ないような素材でもないはずだぞ」

「陛下、エーデルベルトは他よりも食料の物価が高いことをお忘れでして?」

「あー、そういやそうだった」

「ましてや、高級食材ともなればレア度も上がって天井知らずですわ!」


 ヒルデは金かかる子なのかと思いきや、特にそうでもなかった。

 守銭奴だけど、浪費家ではない。お国柄か。


「そういえば、陛下。わたくしまだご寵愛を頂いたことがないのですけど……」

「ん? いや、食事のときに、そういう話はよしてくれないか」

「むっ、べ、別にそういうつもりでは……ただ、リオミばかりずるいですわ」

「なんで今リオミが出てくるんだ……?」

「……もういいですわ!」


 ヒルデがむくれて、どっかへ行ってしまった。

 ちょっと言い過ぎたか?


「アッキー様……」

「リプラさん」

「リプラで結構です。先日は、申し訳ありませんでした……」

「い、いや……」


 先日の一件以来、ちょいときまずい。

 リプラさんが良いといってくれたのだけど、俺は固辞した。

 どうも、それが逆にリプラさん的にはショックだったらしく、泣かせてしまったのだ。

 おかげでフランだけではなく、ヤムエルにもしばらく口を聞いてもらえなかった。


「ですが、アッキー様の気遣いがときに女性を傷つけるのだということは、はっきりと言わせて頂きます」

「うっ……」

「わたしとて、女としてのプライドがありますので……」


 リプラさんは去っていった。

 入れ替わりにフランが現れた!


「やー、アッキー様は大変ですなあ!」

「あんたは、だーっとれー!」

「ひっど! どーして、いつも自分にだけ辛くあたるのさ!?」

「自分の胸に聞いてみろ」

「んー、自慢のおっぱいなんだけど?」

「寄せるな! 上げるな!」


 どうしても、フランにだけはこうなってしまう。

 自分でも、よくわからん。


「んー、心配してんのかもしれないけど、別に何も狙ったりしてないよ? 自分なりに、感謝の気持ちとかあるからなんだけど」

「もっと別の方法で返してくれよ……」

「別の方法かー。わかった、なんか考えてみるよ。ところでさー……リプラが怒ってるの、なんでかわかってる?」

「それは……その」

「はぁ。その分じゃ、全然わかってないね。あのさぁ……何もあたしらや側室のみんなは、子供だけが欲しいわけじゃないんだよ? わかってる?」

「そんなこと言われても……」


 先日、ちょろっと体外受精の件をフランに漏らしたら、アホかーっと突っ込まれた。


「聖鍵陛下のご寵愛がほしいわけ。何も、夜だけ頑張れとは言わないからさ、もっとみんなをかまってやりなよ。道具扱いされる女性ほど、哀れなモンはないんだから」


 道具扱い……か。

 フランが言うと、非常に説得力がある。

 

「わかった……ちょっと、考えなおしてみる」

「そーしてよ。今のままだと、結構危ないと思うよ? 後宮全部」


 フランなりの助言だったらしい。

 別の場所へ向かう彼女に、それとなく感謝の意を込めて頭を下げた。


「うーん……」

「どうした、勇者よ。知恵熱か」

「ああ、ザ……いやラディか。どうした」


 魔王幼女はけしからんことに、ワインを飲んでいた。

 酔っているようには見えないが、この体でアルコールをきちんと処理できるんだろうか?

 ……ああ、できるだろうな。


「いや、何。先ほどから聞いていたのだが、そなたの女関係は相当爛れておると思ってな」

「言わないでくれ……」


 ハーレムは男の夢みたいな話はよく聞いたが、実際は本当に大変だ。

 女社会の中に、ひとりだけ男の権力者が組み込まれる構造は、男もかなり神経を使う。


「さすがに、これ以上は増えまいて。そなたも懲りておるようだしの」

「俺のキャパシティはリオミ……まあ、頑張ってもシーリアまでだ。他はやっぱりどうしてもな」

「申し訳ないという気持ちが先に立ってしまうか? まあ、そもそもそなた自身、王の器というわけでもあるまい。奉仕される者としての心構えがまったくできておらんしな」

「奉仕される者の心構え……」

「うむ。そなたのような人間は自分は奉仕されて当然ぐらいのつもりでおらんと、罪悪感から逆に他の者を傷つけてしまう。相手が良いと言っているなら、受け入れてやれ。女の本音はどうあれ、それはその者が自身で処理する。そなたを恨むことはない」

「……その姿で言われてもなー」

「無礼な……! ええい、もう知らんぞ」


 ザーダスは、ぷんすか怒って行ってしまった。

 うーん、これだけいろんなツッコミを受けるってことは、俺は相当やらかしてしまっているらしい。

 欲望のままに頑張ったほうが良いのだろうか。


「アキヒコ様、御気分が優れないのですか? 先ほどから、みんながアキヒコ様と話したあとは機嫌が悪くなって……」

「うっ」


 ラスボス(リオミ)がきた。

 

「む……なんですか。人の顔を見て、あからさまに嫌そうな顔をするなんて失礼です」

「ご、ごめん……」

「はぁ……ま、いいです。なんか、もう慣れました」

「そ、そっか」

「どうせアキヒコ様のことだから、いろんな女性を上げては落としているのでしょう?」


 わかってるんですよ、と睨まれてしまった。


「多分そうだね……」

「絶対そうですよ。シーリアも言ってましたが、アキヒコ様はわたし達に気を使い過ぎで側室の皆さんと距離を取り過ぎです。

 確かに気持ちがそっちにあんまり行っちゃうのは少し……いや、かなり嫌ですけど。だからと言って、アキヒコ様がそんなだと、わたし達も彼女たちとやりにくくなってしまいます」

「なんか、みんなに言われるから、だんだんヘコんできた……」

「ア、アキヒコ様……申し訳ありません。言い過ぎましたかね……」

「いや、悪いのは俺だから……」

「いえいえ、アキヒコ様はバランスの取り方がわからないだけだと思いますし。今のところ、わたしとシーリアは大丈夫ですので、他の皆さんとも仲良くしてあげてくださいね」

「うん、努力するよ」


 リオミは話が終わっても、側にいてくれた。

 やがて、シーリアが合流して、そこからはいつもどおりの何気ない会話が続いた。



 その夜。

 俺は1時間交代で側室のみんなに部屋へ来るよう命令した。

 まずは一号側室のチグリ。


「あぅぅ~……」

「ほら、大人しくする」


 側室の中では、彼女とは比較的うまくやっている気がするのだが。

 耳も尻尾も素晴らしいし。

 しかもメガネ属性で巨乳だ。文句の付け所がない。


「チグリ、俺とは嫌?」

「そ、そんなことは! 恥ずかしいだけですぅ……」


 彼女は直系の王族というわけではない。

 明確に俺とは身分差があるため、本音を言うことはできないだろう。


 まあ、そういうわけなんで悪いんだけど。


 ――マインドリサーチ、開始。


「チグリは俺のこと、好き?」

「ひゃえええっ!?」


 うーん、思考がぐっちゃぐちゃだ。

 逆に混乱させてしまっては、ダメだったな。


「もし、そうなら嬉しいな」

「ほ、ほんとですかぁ……?」


 ふむ……淡い恋心のようなものが芽生えつつある……ってところだな。

 彼女については、本当に遠慮する必要はないみたいだ。


 ワンコとのお楽しみを終え、二号側室の出番だ。


「今夜も雑談ですの?」

「いや……夜のお勤めの方を頑張ってもらいたく」

「えっ」

「えっ」


 あれ?


「あ、そ、そうでしたの……その、一応それなりに教育は受けておりますので、が、頑張りますわ」

「お、おう……」


 あ、あのヒルデが恥じらいを見せている。

 もじもじと体をくねらせながら、頬を染めている。


 とにかく彼女にとっては初めてなわけなので、肌を重ねるまでを長めに時間を採った。取った

 滞り無くなんて言うと作業感があるが、トラブルもなく済んだ。


「ん、ありがとうヒルデ」

「い、いえ。ご満足頂けたのでしたら、多少は対価をお支払いできたと思えますわ」

「えっと……やっぱり、俺のことはお金をくれる人だから?」

「もちろんそれもありますけれど、もうわたくしたち家族ですから。仲良くやりたいと思っていますわ」

「そ、そうか」

「確かに、恋はしておりませんけど。陛下のことは家族として愛せるよう、努力致しますわ」


 そのためには時間が必要ですのよ、なんて笑顔で言ってきた。

 王女のお手本のような心がけなんじゃないか、と思う。


 さて、お次の三号側室と言えばあの娘なわけだが……。


「聖鍵陛下、今夜は頑張ってますね~」

「そ、そうだね」


 ベニーの体は、生体義体バイオボディである。

 普通の人間と同じように造ってはあるが、本質的な意味で彼女の本当の体ではない。

 本当の体はとうの昔に失って久しい。

 ちなみに、彼女の注文だったので義体は処女で造った。


 とはいえ、彼女はもうそうではない。

 解放してからすぐ、彼女のほうから迫ってきたのだ。

 有り体に言うと、彼女が相手だと俺は床戦闘で手も足も出ない。

 俺が知らない弱点を知悉しており、ずっと俺のターンは来ない。


 だからこそ、今夜こそ少しでも彼女に勝利すべくいろいろ探るのだが……。


「今夜はよかったですよ~。なんか、気合が入ってました」

「さ、左様でございますか」


 さすがに、もう3戦目。

 勝ち目はなかった。


 さてメリーナは療養中のため、次は……。


「アッキー様……よろしいのですか?」

「よろしいも何も……俺のほうは、大丈夫」


 正直、俺の心持ちリプラさんを相手にするのが一番堪える。

 彼女はヤムエルの母親だし。


「では、どうぞ……」


 彼女はさらけ出した裸身をそのままベッドに横たえ、待っている。 

 彼女のほうから何かをしてくる、ということはまったくなかった。


「……やはり、汚れた女はお嫌ですか?」

「そんなんじゃありません!」


 その言葉を証明すべく、俺は精力ドーピング薬を服用し、リプラさんの上に。


「……っ」


 うう。

 リプラさんの表情に怯えが……。


「だ、大丈夫ですか?」

「は、はい……平気です」


 とても、そうは見えない。


「あの、リプラさん。やっぱり無理なんじゃ……」

「…………」


 そんな風に悲しげに見つめられても……困る。


「でも、これを乗り越えないと……アッキー様はもう、ヤムの父親になってくれたのだから……わたしだって……」


 リプラさんは、ヤムエルのために頑張ろうとしてくれている。


「大丈夫、です。わたしも戦いますから」

「…………」


 母は強し、か。

 彼女の顔から、怯えが消えた。

 正確には押し殺しているのだろうが、それを俺が悟ったように見せないほうがいい。


 決して楽しんだとは言えないが、一歩前に進むことができた。


「本当に大丈夫ですか、リプラさん」

「……はい。アッキー様は、とても、優しかったですから……。もっと痛いものだと思っていました」

「俺も頑張りますから。少しずつ、克服していきましょう」

「はい」


 こうしてなんとか、すべてのローテーションを終えて、俺も人心地つく。


「あれ、誰か忘れてるような……」

「……扱いがどこまでエスカレートするのか、試してみたくなってきたかも、あははは……☆」

「ひっ」


 しまった、まだフランが残ってた!

 彼女の立ち姿は……だめだ、放送コードをブッちぎっている!

 描写ができん!


「さあ、勇者様☆」

「た、頼みがある!」

「なーに~?☆」

「娼婦モードじゃなく、自分モードじゃダメか!?」

「え~、でも色気とか全然ないよ~?☆」

「それでいい! いや、むしろそれがいい!」

「本当に? じゃあ……」


 フランの表情がすっと変わる。

 ピンクに色づいていた顔が、あっという間に素に。


「注文には応じるけどさ、ほんとにいいの? つまんないと思うけど」

「そんなことない。ぶつかり合うなら、演じてないフランじゃないと……」

「んー、でも、自分だって自分という自分を演じてるだけとも言えるよ?」

「それでもいいよ」

「そう?」


 彼女の言うとおり、自分モードのフランは色気がまったくなかった。

 女を武器として使わなくなった彼女は、実に事務的に作業を進めていく。


「んー」

「フラン?」

「いや、自分でも意外なんだけど……なんか、いいかもしれない」

「そうなのか」


 とても、そうは見えないが。

 一方で、俺は充分に楽しい。

 彼女は色を作らなくたって、充分に魅力的な女性だと思う。


「自分、こういうの初めてかも。これが本当の恋人同士なのかな?」

「どうだろう。ちょっと違うかもしれないけど」

「そっかー」


 フランはあっけらかんと返事しつつ、着衣を整えた。


「じゃあ、また今度ねー」

「おう」


 普通に友達っぽく別れた。

 さて、今度こそ間違いなく終わりだ。

 疲れたし、もう寝よう……。


「ご主人様、寝るにはまだ早いです」

「ええー……」


 ここに来て、フェイティス……俺が弱り切るのを待っていたな。


「今回の趣旨からして、わたくしがトリを務めるべきかと愚考致します」


 いやまあ、いいんですけどね。

 相手が多すぎて寝られない……。

 我ながら贅沢な悩みだ。

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