Vol.00
第三部プロローグ。
ここから結構エロくなってくるから、嫌いな人はブラウザバック。
好きな人は?
いいから、ドーピングだ!
今日は俺にとって、重要な日だ。
中枢に聖鍵を接続することで、情報開示レベルが上昇するという話を覚えているだろうか。
今日は3回目の更新。2回目の時に開示された情報のほとんどは、浄火プログラムや聖剣教団の成り立ちについてのものがほとんどで、今更感があった。
だが、今回は違う。
これまで謎だったダークス係数について情報開示されることが、前回の更新時に判明したのだ。
瘴気によって侵された魔物が魔王に操られていた。この瘴気にどれだけ侵されているかの数値がダークス係数であることは、もう説明不要だろう。
これまで、ダークス係数が生来高い魔物に関しては倒すしかなかった。
だが、ダークス係数の謎が解ければ、それらの魔物を助ける方法がわかるかもしれないのだ。
そんな方法はないかもしれない。助けられないという事実がわかるだけかもしれない。
しかし、俺はある事象によってダークス係数が0になった例を既に知っている。
ディーラちゃんとラディちゃんだ。
彼女たちはホワイト・レイを浴びたにも関わらず、奇跡的に生き残った。
ホワイト・レイが瘴気に対して効果的なのは、アンダーソン君の白光魔法が小型のそれであることからも見て取れる。
とはいっても、アンダーソン君に出力を落としたレイで魔物を攻撃させる実験などを行なったが、ほとんどは一撃で死んでしまい、生き残った魔物も係数の低下が見られたものの、劇的に改心させるには至らなかった。
何か特別な条件があるに違いない。
そして、ダークス係数について俺がこれほど興味を示している理由がもうひとつ。
あの男だ。
ヤツは、その肉体を瘴気によって構成している。今回の情報開示で、何か倒す決め手が見つかる可能性もあるのだ。
今のところ聖鍵から得た情報によると、ホワイト・レイでもヤツを完全に消し去ることが不可能であるというデータしかない。
「ふぅ……」
深呼吸する。
マザーシップ中枢の台座の前で、俺は聖鍵をぶら下げたまま立ち尽くしている。
少なからず答えを出すという行為は、普段正解を見つけようとしない俺にとってはプレッシャーである。
なんかよくわからないままにしておくのが、今までの俺だったのだ。
「今回は、そういうわけにはいかない」
決意する。
俺は聖鍵を台座へと納めた。
もう慣れてしまった0と1が流れ込んでくる感覚。
情報開示レベルの上昇が許可される。
現在は教団についての2まで。次でダークス係数に関する情報が開示される3。
――情報開示レベル上昇。
――ブラックボックス解放。
作業は地味だ。
聖鍵のスリットの七色が次々に光り、情報のアップデートを表現するだけ。
俺自身。超宇宙文明の秘匿する情報を知っていくたびに、地球が離れていくような気がしていた。
すべての情報が開示されるとき、俺は超宇宙文明の一員として完全に認められるのかもしれない。
情報開示レベルが3まで上昇した。
これにより、今までブラックボックスになっていたダークス係数についての謎がすべて閲覧可能になる。
そして俺は知った。
ダークス係数の秘密を。
否。
宇宙の真実を。
「……は、はは……」
乾いた笑いしか出てこない。
こんな荒唐無稽な話を信じろというのか。
いや。
アースフィアに来た当時ならいざしらず、今の俺ならこの真実を受け入れることができる。
超宇宙文明が、段階を踏んで情報を開示していくことの意味。
それを理解する。
「無理だろ、無理無理。こんなの俺にどうしろっていうんだ……」
ルナベースは俺に対して情報を開示しただけだ。
何も返しては来ない。
唖然とする俺に、ルナベースは事務的に次回更新時の開示情報を予告する。
「魔王ザーダスについて……だと…………!?」
いや、確かにダークス係数の情報の後なら、当然瘴気によって魔物を操っていたザーダスが関連してくるのはわかる。
前から予感していたが、ここで開示されるとなると、魔王ザーダスの正体って……。
「超宇宙文明に関係してるってこと、だよな……」
今回の情報開示は俺の世界観がガラリと変わりかねない重要性を持っていた。
にも関わらず、既に倒してしまった魔王に関する情報がそれ以上に重要な扱いを受けている。
「俺は一体、何を倒してしまったんだ……!?」




