Vol.30
「なんなのだ、あのふざけた演説は!」
カドニア王宮は、大混乱に陥っていた。
ヴェルガードは怒りのあまりに口をぱくぱくとさせることしかできなかったが、正気を取り戻すとあたりに喚き散らした。
「やめさせろ! 今すぐにやめさせるんだ! そうだ、教団に抗議しろ!」
「無理です! とても教団支部まで辿り着けません!」
「王都は大変な有様です! 教団支部には人がごった返し、それらを止めようとした騎士団までもが統制を失い、聖鍵派に下る者も現れております!」
「な、な、な……」
絶句するヴェルガードに、部下の兵士は無情な事実を突きつける。
「あの演説を聞き、王宮から姿を消した者もおります……!」
ばかな、そんなばかな。
カドニアは自分の思い通りになるはずなのだ。
こんなことがあってはならない。
愚民どもはワシに従い、媚びへつらうだけの連中だ。
浄火派などという糞どもも、ワシの恐ろしさをいずれ知ることになるはずなのだ。
なのに、なのにどうして。
このとき、ヴェルガードはそんなことを考えていた。
「ウェンターは! ウェンターはどうしておる! 奴が勇者を連れてくる手筈になっておるのではなかったか!」
「まだウェンター殿は王都に帰還しておりません!」
勇者がフォスにいるという知らせは、すでに届いていた。
それを知ったヴェルガードはフォスの近くにいた子飼いの部下、ウェンターを派遣したのだ。
ヤツは腰巾着だが、騎士団もついている。問題なく勇者を連れてくることができるはずだったのだ。
なのに、これは一体どういうことなのか!
「今さきほど、ウェンター殿より魔法便にて封書が!」
「構わん、封を切って読み上げよ!」
本来であればヴェルガードが自ら専用のナイフで封を切り、己で手紙の文面に目を落とさねばならないところだ。
しかし、それを大臣に指摘する命知らずは、ここに残っていなかった。
「恐れながら読み上げます!
……再三の説得にも関わらず、勇者は聞き入れず! 勇者は白光騎士及び聖剣教団の庇護下に入り、連行には失敗せり! 聖鍵派なる組織を立ち上げる不遜を宣言す! 騎士団の戦力では白光騎士には到底勝ち目はなく、此度の責任我にナシ! ついては我に罰を与えることなく寛大なる処置を望ム!」
「ウェンターは処刑せよ!」
ヴェルガードの無慈悲な宣言が宮殿に轟き渡った。
「いつから、ワシの部下は無能ばかりになったのだ!?」
「はっ! 先日の裏切り者と思しき者たちの粛清以降、国を動かせる人材が足りません!」
「ならばお前がやらんか、馬鹿者!」
ヴェルガードは、それがまかり通ると思って部下を怒鳴りちらす。
自分が命じれば部下が有能になるのは、彼にとっては当たり前らしい。
ワシは自分こそが選ばれた有能な存在であると自負している。
何故なら!
ワシこそがが魔王ザーダスの誇る、八鬼侯の第三位なのだから!
ワシの能力は瘴気を隠し、普通の人間として振る舞うことのできる変身能力と。
そして何より優れる、この智謀!
カドニア王国を内乱状態に導き、無力化した手腕こそがワシの誇る功績なのである!
……ほう、そうだったのか。
道理で。それなら様々なことに納得がいく。
ヴェルガードを操っていた魔王がいなくなった後、急に大臣が無能になったのは……そういうことだったのだ。
おそらくヴェルガード自身も気づかぬうちに魔王によって操られ、魔王が立てた策をいつしか自分の知略によるものだと錯覚するようになったのだろう。
しかし、こいつが八鬼侯とは。
今までのマインドリサーチでは、そんなことを考えていなかったが、この状況になって遂に余裕を失ったようだ。
となると、『闇の転移術法』をもたらしたのもコイツだったのかもしれない。
しかし、それだと浄火派に流す意味がわからないか。
そんなことを考えつつ、私は新装備に身を固め、王宮への上陸作戦を指揮していた。
『首尾はどうか?』
電子音に変化した私の声が、無機質な響きでもって漆黒のドロイドトルーパーに向けられる。
『モウジキ、カドニアノ、オウキュウニ、チャクリクシマス』
『アルティメット・ゴクアック皇帝陛下のご命令だ。速やかにカドニア王宮を制圧せよ』
『リョウカイ、リョウカイ』
満足気に頷く俺の腕を、漆黒のローブを纏った少女がツンツンとつつく。
『あの……アキヒコ様?』
『私はアキヒコではない、ダーク・ミヨシン卿だ! そしてお前は私の忠実な部下ダーク・リオミン姫だ!』
『は、はぁ……』
ダーク・リオミン姫のため息もまた、電子音に変換されている。
尚、私もまた漆黒のルナ・オリハルコン製の甲冑に身を固め、これまた漆黒のマントで自身を覆っている。
これこそが私の新装備なのだ。後ほど、その性能の程をご覧に入れよう。
『ダーク・シーリアス卿。そなたも、気を引き締めよ。ここから先は戦場だぞ』
『……聞いてはいたが、こんな芝居をする必要はあるのか?』
ダーク・シーリアスと呼ばれた漆黒の仮面剣士もまた、音声が電子音変換されている。
『芝居ゆーな。私だって本当は恥ずかしいのを、こうやって超宇宙大銀河帝国ジャ・アークの黒闇騎士ダーク・ミヨシン卿としてのロールプレイを頑張ってるんだから!』
『そ、そうか。私はええと……ダーク……』
『ダーク・シーリアス卿だ』
『どうして私だけ”ン”で終わっていないんだ! 仲間はずれか? 仲間はずれなんだな!?』
『いいや、お前の名前が”ス”で終わっているのは、伝統的に見て正しいのだ!』
『本当か!?』
『超銀河大邪神ク・ト・スター様に誓って本当だ』
『嘘か! 嘘なんだな!』
まったく、こんな漫才をするために、このような格好をしたわけではないというのに。
『よいか、ひとりたりとも殺すな。全員、超宇宙大銀河帝国ジャ・アークの銀河奴隷とするのだ!』
『は、はい!』
『ええぃ、こうなればカドニアの奸賊を斬り捨てて、このモヤモヤを解消してくれる!』
こうして、おそるべき黒闇騎士たちがカドニア王宮を襲ったのである!
混乱していたカドニア王宮の制圧は、あっという間に終わった。
兵士たちのほとんどは剣を抜く前に無力化され、宮廷魔術師も魔法を唱える前に捕らえられた。
我々、黒闇騎士の面々も謁見の間へと悠々と歩いて参じた。
「な、何者だ貴様らは!」
ヴェルガードが、玉座の横で慌てふためいている。
玉座には放心状態のアンガス王。もちろん、我々に放心しているのではなく、トリップしているためである。
既に周囲を固めていた兵士は、ドロイドトルーパー超宇宙大銀河帝国仕様によって捕縛されている。
この作戦の運用のためだけに開発した量産兵器だ。デザイン以外はほとんど変わらないが、聖鍵派の用いるトルーパーよりも鋭角的になっていて、これを同じ兵器と考える者はいないだろう。
ともかく兵士は動けないので、残っているのは大臣だけだ。
『我々は超宇宙大銀河帝国ジャ・アークだ。アルティメット・ゴクアック陛下のご命令により、このカドニア王国を制圧しにやってきた』
「は……? な、何を意味のわからんことを」
『私はその尖兵として派遣された皇帝陛下の忠実なる黒闇騎士ダーク・ミヨシン卿である。右が帝国最強のサイキックの使い手ダーク・リオミン姫。左が帝国最強の剣士ダーク・シーリアス卿だ』
『『…………』』
紹介されたふたりは無言だ。
ノリが悪いのではなく、最初から彼女たちにはセリフを用意していないのだ。
『これよりカドニア王国は超宇宙大銀河帝国ジャ・アークの支配下となる。よって、お前たちはこれから我々の銀河奴隷となって死ぬまで働くのだ!』
「ふ、ふざけるな! 誰がお前らなんぞに……ワシを誰だと思っている! カドニアでもっとも偉大な大臣、ヴェルガードであるぞ!」
『ほう、お前がこの国の首脳というわけか。てっきり、そちらの玉座で気をやっている男のほうかと思ったが?』
「馬鹿なことを言うな、そやつはワシの操り人形! 傀儡よ! すべての権力はワシが握っておるのだ!」
『そうか。ならば処刑するのは、お前ということになるな』
「……へ?」
偉そうに講釈を垂れていたヴェルガードの動きが、両手を広げた支配者のポーズのまま止まった。
『カドニアは既に我らのものとなった。これより見せしめとして、国のトップを処刑する。本来であれば、そこの王と思しき者を血祭りにあげるのだが、どうやらお前は王を庇い、自らが人身御供となるつもりのようだな』
「え、いや、その……」
『実に立派な忠臣ではないか、気に入ったぞ? お前の望みどおり、殺すのはお前ひとりにしてやろう』
「い、いや違う! そう、そうだ! その男が王なのだ。ワシはただのその者の部下なのだ! だから殺すのはワシではなく、そこの玉座の王だ!」
どうやら、自分の置かれた立場がわかったらしい。
ヴェルガードは実に小物らしく踊った。
『……では、本人に直接聞いてみるとしよう』
「あ……っ!」
ヴェルガードの目が見開かれた。
私は構うことなく、玉座のアンガスに話しかける。
『お前が王か?』
「う……あー…………」
『お前がカドニア王国を治めている、支配者か?』
「えーーおぅー……」
『……フン。どうやら、この男は既に精神をやられておるようだな。これでは王としての務めは果たせまい。となると、やはり……』
「ひぃっ!?」
『カドニアで最も偉大な大臣ヴェルガードといったな。やはり、お前ということになるが……』
「お、おのれぇぇっ!!」
ヴェルガードが手の中に火球を生み出し、私に放った。《ファイアボール》といったところか。
もしこれが爆発すれば周囲にいる兵士も巻き込んでしまうだろうに、そんなことには一切構わないらしい。
『……かの地に魔の通じぬ領域を生み出さん。《アンチ・マジック・フィールド》』
ダーク・リオミン姫の電子音が形となり、周囲に魔法をすべて抑止する空間を生み出した。
本来であれば予めかけなければ意味のない結界魔法……じゃない、ダークサイキックだが、彼女の高速発動は割り込みが可能なのだ。
「ひぃっ!?」
『愚か者め。尚も見苦しく抵抗するか』
仮にも八鬼侯ならば、相当な苦戦も覚悟していたのだが、こいつは正体を隠すことしか能がないらしい。
今まで浄火プログラムにも引っかからなかったぐらいだ、相当な隠蔽力だったのだろう。だが、本当にそれだけのようだ。
魔王統制下では、マインドリサーチ対策もしっかりしていたのだろうが……。
「お、お助け……そ、そうです! ワシの力と貴方がたの力があれば、この世界を思いのままに動かすこともできますぞ!
ワシの智謀は役に立つ! 殺したりしたら、絶対に後悔しますぞ!」
『もうお前は黙れ』
「っ!?」
私が右手を上げて、何かを掴むような動作をすると、ヴェルガードの顔がみるみる青ざめた。
「い……息が」
『このまま絞め殺してやってもいいのだが、せっかくだ。ダーク・シーリアス卿の剣にかかる名誉をくれてやろう。お前のような下衆にはもったいないが、我らジャ・アークは慈悲深いのだ』
「か……は………っ…や……めて」
私が頷いて合図すると、ダーク・シーリアス卿が無言のままヴェルガードに向かって歩いて行く。
ゆっくりと剣を抜き、ヴェルガードの首に押し当てた。
『ヴェルガードよ、お前は死ぬのだ』
「~~~~~~ぁぁぁッ!!」
ヴェルガードは断末魔の叫びすらあげることができなかった。
ダーク・シリアース卿の剣がヴェルガードの首に振り下ろされ。
カドニアで権勢を振るっていた大臣が倒れる。
『よし、兵士は全員営倉に連行せよ。そこで転がっている屑は、コールドスリープにかけておけ。そこの王は……そうだな。メディカルルームに運び、治療してやれ』
『リョウカイ、リョウカイ』
トルーパーたちが、すぐに命令を実行した。
謁見の間には黒闇騎士の3人が残される。
『さて……我らも帰るぞ、ダーク・リオミン姫。ダーク・シーリアス卿よ』
『……アキヒコ様、もういいのではないですか?』
『何?』
『もう、カドニアの関係者は誰もいない。芝居をする必要はないだろう』
『……ちぇっ、少し楽しくなってきたところだったのに』
私は甲冑の兜を外す。
そこには、どこからどう見ても普通の日本人男性の顔があった。
続いて、リオミン姫もフードを外し、シーリアス卿も仮面を外した。
「あー、まさか俺の黒歴史ノートの設定を、こんな形で実現できるなんて」
「黒歴史……ですか?」
「脳内設定ってことだよ」
「貴方の頭の中には、こんな連中が住んでいるのか」
「まあ、そんなところだね」
さて、賢明な人はとっくにおわかりであろうが、超宇宙大銀河帝国ジャ・アークの黒闇騎士の正体は、俺、リオミ、シーリアである。
どうしてこんな芝居がかったことをやったのかというと……それは数日前の作戦会議に遡る。
「なあ、声明のすぐ後にカドニア王国を抑えるのは、どうしてなんだ?」
「異端視されれば活動が事実上の正当性を失う浄火派と違い、王国側は聖鍵派の存在を許容できません。恭順しようとする人々を止めようとし、各地で多くの犠牲が出ることになります。中立の街ならば、それほど大きな事態にはならないでしょうが、北方の王国勢力圏だとそうはいきません」
フェイティスの丁寧な作戦説明が終わった後、俺が真っ先に手を挙げた。
彼女の話によると、聖鍵派表明の後は速やかにヴェルガードや、そこに連なる主だった者を抑えなければならないという。
「王国を抑えさえすれば、ご主人様が教えてくださったコピー機を使って、カドニア王国の書面を利用できます」
「ああ、アレを使うのか!」
カドニアの書面を使えば、王国統制下に置かれた兵士たちにアンガス王の名で聖鍵派に恭順しようとする人々を止めたりしないよう、偽の命令を発布できる。
王宮はしばらくはこれまで通りの状態を維持しているように見せかけ、その上で聖鍵派に対して一切対策をとらせない。
それがフェイティスの用意した作戦だった。
「しかし、王国を制圧するのが聖鍵派であってはなりません」
「それはどうして?」
「確かに聖鍵派は人間の争いにも介入する組織として世に出ることになりますが、他国から見て聖鍵派が王宮に雪崩れ込んで機能を奪えるような組織であると思われるのは、あまりよろしくないからです。これは、ご主人様の意向に沿うためですね」
「ああ、そうか」
俺がもともと目立ちたくないと言ってたから、ってことか。
確かにその気になれば、表立ってでも各国をいつでも支配できるだろうけど、そう思われるのは俺のやろうとしてる事を考えれば良くない。
本来なら、俺が聞き返すような内容じゃなかったな。
「そこで、王国を抑える場合には、聖鍵派とは無関係で、尚且つ後ほど我々が王国を解放するときに後腐れなく消滅できるような存在が好ましいのですが……」
「ふーむ」
「できれば、聖剣教団とはまったく無関係か敵対関係、そして魔王との関連も少しは匂わせるような組織を詐称するのがいいでしょう。制圧された兵士たちを時期がきて解放したあと、聖鍵派の仕業だと誰も思わないような証言が出るのが理想です」
「そんな連中、実在するの?」
「いえ、わたくしの知る限りではありませんね」
ふーむ、困った。
そうすると、どういう風に誤魔化すのかが問題か。
万が一にも聖鍵派との関係を匂わせるようなことがあってはならないと。
できれば敵対関係で……って、あ!
「……なあ、その組織って実在してる必要はないんだよな?」
「え? ああ、はい。できれば荒唐無稽で誰も信じないようなモノがいいと思います。万が一にも教団と癒着関係があるように見えないような」
「それなら、うってつけの組織がある」
「それは一体……?」
「……超宇宙大銀河帝国ジャ・アークだ!」
そして、採用されて今に至るというわけだ。
言い出したときは俺だって、ちょっと冗談めかして言ったんだ。
それがまさか……。
「それ、いいですね! それで、そのジャ・アークにはどんな勢力が?」
「皇帝はアルティメット・ゴクアックといって、この宇宙のすべてを支配している存在なんだ。そして黒闇騎士という邪悪な騎士団を抱えている。そいつらは……」
黒闇騎士が如何に強く、とんでもない連中かを、俺は得意げに語った。
フェイティスは、さらに目を輝かせる。
「すごいです! それで、どんな信仰を?」
「超銀河大邪神ク・ト・スター様を崇め、宇宙に闇をもたらさんとしているのだ!」
「そ、それで制圧された人々は皆殺しにされたり、供物として捧げられてしまうのですか!?」
「いいや、帝国の労働力として銀河奴隷にされ、永久に働かされるのだ!」
「ああっ! なんてことでしょう! 男は兵士として召し上げられ、女は皇帝の後宮に送られ、性奴隷として一生を過ごすのですね!」
「え、ええっと……そ、それはどうなんだろうな。子供向けの作品だったら性奴隷はちょっとまずいんじゃ……」
「いえいえ、きっとそうですよ。そして、その超宇宙大銀河帝国ジャ・アークと戦っているのが、実は聖剣教団なんですよ!」
「「「「な、なんだってーっ!?」」」」
「アースフィアをジャ・アークの支配から守るために戦っている組織、それが聖剣教団だったのです! そして、ジャ・アークの暗躍を感知したご主人様は聖鍵派を立ち上げるのです! 表向きは人々を笑顔をもたらすための慈善活動を行ない、その裏ではアースフィアを支配しようとする黒闇騎士と影で戦っているのです! 魔王ザーダスですら、実はジャ・アークの尖兵に過ぎなかったんですよ!」
「そ、そうなのですかアキヒコ様!?」
「えっ!? 俺に聞かれても……」
「くっ、だとしたら私が真に斬るべきは魔王ザーダスではなく、そのなんたら帝国の皇帝だったということか!」
「アルティメット・ゴクアック皇帝は魔王の1兆倍の魔力と戦闘力を持つ神のごとき存在なのです。そんなとてつもない存在と戦うために、ご主人様は予言の勇者として召喚されたのです。ご主人様の本当の敵は、ゴクアック皇帝だったんですよ!」
「そ、そうだったのか!? くっそ、ゴクアックめ、俺の聖鍵の力を舐めるなよ……!」
「お兄ちゃん、そんなヤツらに勝てるの……? いやだよ、お兄ちゃん、死なないで……!」
「止めてくれるな、妹よ! 俺は戦わねばならないんだ!」
……そんなこんながありまして。ノリノリで黒闇騎士の専用装備を作った。
そんな装備で大丈夫かと言われそうだが、問題ない。
ダーク・ミヨシン卿セットはサイコキネシスオプションで、どのような敵も近づけず吹っ飛ばすことができるように。
ダーク・リオミン姫セットは魔術割り込みオプションで、魔法のインタラプト発動が可能に。
ダーク・シーリアス卿セットは魔剣士オプションで、あらゆる物理防御を無効化できるように。まあ、白閃峰剣と同等の能力が扱えるってことだな。
ディーラちゃんのダーク・ドラゴニオンセットは、残念ながら開発が間に合わなかった。今頃、仲間はずれにされてプンスカ怒っていることだろう。
そして、この時に至って俺はようやく、パーティのみんなに超宇宙文明の装備を使わせるという案に至ったのだった。
黒闇騎士装備じゃなくても、みんなが強くなれる装備を開発中です、ええ。
というか、フェイティスが中二病だったんだってことが、一番意外だった。
何気に俺が言わなかったら、フェイティスがやりたいものをやらされたかもしれん。
きっと彼女の右手には封印が施されているに違いない。




