Vol.00
第二部のプロローグ。
詰んでいる。
それが、俺のカドニア王国に対する見解だった。
タート=ロードニア現国王、クライン=ルド=ロードニア……リオミの父の見立ては、この上なく正しい。このカドニアという国、調べれば調べるほど、ため息しか出てこない。
何をどうすれば、これほど悪化するまで放置できるのか。こうなる前に打てる手はあったはずだ。だが、状況が変わるまで誰も。少なくとも多数の人々が気に留めなかった。いつまでも好景気が続くと信じていたバブル期の日本と同じだ。あるいは、アースフィアの日本贔屓が、俺にブラックジョークを提供しているのかもしれない。
もしそうであったとしても。俺は、このカドニアという国に対して、ほとんど何の感情も動かなかった。日本で平和に暮らしていたとき、アフリカの内戦のニュースを見ても「向こうは大変だなぁ~」程度にしか思わないのと同じだ。
現実感がない。
100年間に亘る魔王の支配体制のなかで歯車が狂ってしまい。最も魔王による魔物の被害が少ないにも関わらず、最も社会的、経済的打撃が大きく。そして、あろうことか癌が発覚してからも、10年近い歳月を治療に費やさなかった国家。
それがカドニアなのだ。
ここで暮らす民衆には同情する。
しかし、それだけだ。今更、何もかもが遅すぎる。
アースフィアの民の笑顔を見たいなんて言っておきながら、この突き放しっぷりである。我ながら呆れるしかない。
もう一度、言おう。
カドニア王国は詰んでいる。
だから、気楽に考えていた。
この国が滅んでも、それは仕方のないことだと。
そう、思っていたんだ。
……あの日、までは。




