Vol.16
それから俺達はクローンをコールドスリープ処理するついでに、シーリアを迎えに行くことにした。
「それで、シーリアは大丈夫なのですか?」
「うん……確かにスリープカプセルの覚醒時間をずらされただけみたいだな」
シーリア本体……子供を宿している母体は最高の管理施設で保護されている。
彼女はその性格上、クローンの体を使って自由に動いている事が多い。今日は俺と合流するために眠りから覚める際にこちらの本体で覚醒する予定だったのだが、その時間が変更されている。
これなら別に量産鍵をオンラインにしなくても細工出来る範囲だし……単純ではあるが確実な足止め方法だ。ピースフィアの人的資源は機械のそれに比べて稀少なのだが、今後はクローン対策として有機生命体の見張りを置かねばなるまい。
ここにはシーリアだけではなく、チグリの本体も眠っている。彼女の意識は現在クローンの方にあり、ノブリスハイネスのもとで働いている筈だ。敵側に行ってしまっているわけだが、彼女の扱いについてはあまり心配していない。むしろVIP待遇を受けているだろう。
フランも大丈夫の筈だ。何しろ、ブラッドフラットは彼女にベタ惚れだし。
わざわざタイマーを戻す必要もないので、シーリアは手動で覚醒させた。
カプセルがスライドし、中からシーリアが出てくる。
「む……おはよう、アキヒコ。わざわざ迎えてくれるとは……」
「ああ、いや実は……」
かくかくしかじか。
「なんたる不覚……! アキヒコが危機に陥っているときに、のうのうと寝ていたとは」
「ああ、大丈夫。そんなに大変でもなかった」
変な沈黙が訪れる。
シーリアもリオミも、俺が涼しい顔をしていることを怪訝に思っているようだ。
「いや、ほんと。量産鍵の支配権さえ何とかしてしまえば、どうとでもなるって」
「確かにそう聞いてましたけど……気づいたときには、もうひとりのアキヒコ様が倒れていたのですが、一体何をしたのですか?」
「うーん、ごめん。今回何をしたかは説明が難しいし、できればそのことに時間を割きたくないんだ」
「ふむ。そういうのであれば仕方がないが……」
「アキヒコ様。また何か不味いことを隠しているのではないでしょうね?」
「違う違う。今回は本当に説明が長くなるだけだよ」
渋々といった感じで追求は終わったが、ふたりとも微妙に納得してくれていないようだ。
まあ、基本的に俺の秘密は後で彼女たちを怒らせる事が多いから無理もない。
「それで……他の分身に動きはあったのか?」
「いや、今のところ目立つ動きはないよ。多分、本気で潜伏する気になったヤツを見つけるのは不可能だね」
「ううむ、ではどうする」
「いくつか手は打ったし、クローンについては実害が出ない限り保留だな。多分、狙われるとしたら俺か……もうひとりだけだし」
「もうひとり?」
シーリアが首を傾げ、俺が頷く。
「そいつは俺たちの間で、ロリコンと呼ばれていた男だ」
「へっきし」
……誰かが俺の悪口を言っている気がする……。
どうする、殺すか!
「おとうさん!」
「ん、ヤム。どうした?」
いかんいかん、今日の俺は『本物のおとうさん』なんだから。
『アキヒコ』のアライメントチップを使って人格偽装デート中だというのに、自分で本性を表にしてどうする。
「んーん。呼んでみただけー」
ヤムがにへらーっと笑っている。
いつもの天使の笑みではなく、ちょっと惚気気味の笑い方だ。
抜群に可愛い。
今すぐお持ち帰りしたい。
だが、待て。本来このスマイルを向けられているのは『アキヒコ』じゃないか。
喜びはすぐに殺意へと変わったが、これを表に出せば……すべてお釈迦になってしまう。
グッと堪えて顔面人工筋肉を操作し、満面の笑みを返した。
「そっかー、呼んでみただけかー」
「えへへー」
今日は休日、晴れ。
フォスはいつもどおり観光客と巡礼客、そしてファミリー層が歩いたりワープしたりしている。
くるくると回りながら駆け出していくヤムを見送りつつ……俺はオリジンとの通話を思い出していた。
俺の電脳には通話機能が搭載されている。
通常の通話はスマートフォンを通して行われるが、オリジンからのホットラインはこちらに繋がる。
『殺戮王』
だから、頭に声が響いた時にも彼だと疑わなかった。
「オリジンか? 一体、何が起きている? 他のクローンとの同期ができなくなったぞ」
『少々、イレギュラーな事態がな。クローンによる大規模な叛乱が発生した』
「……主要な叛乱勢力は、事前に大方片付けた筈だが?」
『残存勢力が残っていたようだ。現在、ゲートを突破してアースフィア各地に散っている。お前に始末を頼みたい』
「チッ……全員オフラインか。見つけるのが面倒だな」
『そうでもない』
「何?」
『叛乱の首謀者はわかっている。『アキヒコ』だ』
「あいつが? まさか……」
いや……有り得るか。
前はたまたま違っただけで、やはりアイツはオリジンに不満を持っていた筈だ。
しかし……。
「確かに『アキヒコ』は小一時間ほど前にオンラインに復帰し、現在はアースフィアに戻ってきている。仕留めるのは簡単に思えるが……首謀者なのに自分だけ居場所を公開しているのは、どういうことだ?」
『お前を誘っているのだろう。残念ながら、同期システムがダウンしている関係でランク剥奪は行えないので、厳しい任務になると思うが』
「そもそも全クローンの同期システムはアンタの管轄じゃないか。そんなのどうやってアイツが……」
『お前が気にする必要はない。『アキヒコ』を始末する……それもお前の仕事だ』
「…………」
そのとき、俺は返事をしなかった。
通話がそのまま一方的に切れるのもいつものことだったし、後始末はいつだって俺の領分だ。
だが、不思議とオリジンの言うことを聞く気にならなかった。
今まで、一度もそんなことなかったのに。
ヤムに関する嫉妬心を抜きにしても、アキヒコを殺す大義名分ができたのなら今すぐ実行しに行かない理由はない。
その筈なのだが、どうにも億劫なのである。
「おとうさん……?」
「ん」
ヤムの声で現実に意識を引き戻される。
サイバーアイのフィジカルチェッカーが、ヤムの心拍数が上がっていることを伝えてくる。
走り回っていたせいではなく、何か不安を感じているときの上昇パターン。
「どうしたんだい、ヤム」
「あれ……」
ヤムが指差す先。
そこには、もうひとりの三好明彦が立っていた。
一言でいうと、黒衣姿。
漆黒の外套を羽織った三好明彦。
「……夕闇より生まれし鉄の獣が、人の皮を被って少女を拐かすか」
陽炎のように存在感のない、朧めいた声。
黒衣は明らかに日中の観光街には似つかわしくないのに、まるで景色に溶け込んでいるかのように周囲から丁重に無視されていた。
「いつまで続ける? 破綻は見えている。狼男が赤ずきんに恋をしたって、ハッピーエンドは訪れないぜ」
こっちが恥ずかしくなるような中二ゼリフを吐きながら、黒衣が嗤う。
俺の電脳のデータベース検索結果が、勝手に口をついて出た。
「ブラッドフラット……」
「そうとも。初めましてだな、殺戮王」
惑星アルテアでライアーのゲームに参戦している自我持ちのクローン。
あのフランと同行し、現代異能バトルモノの世界観を満喫している男。
それが、何故フォスに。
どうして、俺の目の前にいる?
「おとうさん……」
「ああ、ヤムちゃん。不安にならないでいい。俺はおとうさんによく似ているだけの別人だ。ちょっとお父さんと話があるから、向こうで遊んでてくれるかい?」
「おい、お前勝手に……」
「殺戮王……キミにとってもそっちの方が好都合だと思うよ」
……こいつは。
「ヤム。あっちに行ってなさい」
「おとうさん……」
「大丈夫だから」
ヤムは基本的にいい子だ。
おとうさんとおかあさんの言うことを素直に聞く。
だけど。
「ヤダ!」
「……え?」
このとき彼女は、俺の足にくっついて離れなかった。
がしっと、小さな手でズボンの生地を強く掴んでいる。
「…………」
俺はそれ以上、何も言うことができずに固まってしまった。
心を鬼にして引き剥がすことも、彼女に理を説いて離れさせることもできず。
ただ、そこに立ち尽くす。
「わかるんだね、ヤムちゃんには……」
名前を呼ばれたヤムが、びくりと肩を震わせた。
「ここでキミから離れたら、おとうさんがもう戻ってこないことを……」
「……何?」
俺の訝りをスルーし、ブラッドフラットが悲しげに目を伏せる。
ヤムの小さな手を通して直接伝わってくる鼓動が、さらに大きく、早くなっていく。
「しょうがないから、人払いしようか」
ブラッドフラットの言葉とともに、周囲の景色が書き換えられ。
世界が消え入りそうな夕闇色に、フォスが染まっていく。
周囲の建築物やインテリアはそのまま、休みを満喫している人々の姿だけが消え。
「いやっ、おとうさ――」
ヤムの鼓動が唐突に途絶え、ぬくもりが奪われる。
彼女もまた例外なく消失した。
それでも、俺は慌てない。
この現象が既知のものだったから。
「闇の帳……」
俺は前世の懐かしさのあまり、何を思うでもなく呟く。
闇の帳とは夕闇の獣が展開する、現世との隔絶結界。
人々とヤムが消えたように見えたが、現実世界で消えたのは……むしろ俺とブラッドフラットの方だろう。
今回の場合、能力者として覚醒しているブラッドフラットによる仕業であると考えられる。
そこに驚きはない。
……なかったのだが。
「ご名答。さすがは元ダスクジャーム。よくご存知で」
「!?」
こいつ……俺の生前を知っている!?
オリジンにも伝えていない、あの情報を……。
「どうして俺が知っているのか気になるみたいだけど、教える義理はない。キミに伝えるべき言葉は、ただひとつ」
そんな俺の心を見透かすようにニヤリと笑い、ブラッドフラットは言った。
「消えろ。この世界から」
……上等だ。
どうしてかはわからないが……この男は、俺の過去を知っている。
「お前は俺の敵。そういうことでいいんだな……」
危険だ。
殺すしかない。
何より、俺が殺したい。
「勿論、俺はキミの敵だ。だけど、ひとつだけ訂正するとすれば……」
ブラッドフラットが黒衣を翻す。
すると、先ほどまでいなかった人間たちが、どこからともなく現れた。
それらは寸分違わぬ姿、同じ顔立ちをしており。
「「「「俺ではなく、俺たちだ」」」」
俺が何人も殺してきた人物に、とてもそっくりで。
「さあ、共に世界の夕闇を祓おう!」
ブラッドフラットの号令一下……そう、三好明彦クローンどもが一斉に飛びかかってきた。
その数は3人。
「こいつら……!?」
俺の義体の反応速度は、彼らの動きに充分についていけた。
いや、その表現は正確ではない。
連中は最新の全身義体に換装した俺の動きに、生身でついてきている……!
「ブースト系の能力!」
能力者の中には、生身でありながら人外のパワーとスピードを発揮できる者がいる。
肉体を直接強化する能力は珍しくもないが、それでもメシアス製義体の性能に追従してくるとなると、かなりのレアものだ。
となると長期戦は危険……一気に決めるしかない!
「オーソーン――」
「させるか!」
クローンのうち一体が腕を突き出すと、衝撃波が俺の全身を打った。
ダメージはほとんどないものの、能力の発動を阻害されたのをはっきり感じる。
「インタラプト系……!?」
文字通り、こちらの行動に割り込みをかけるタイプの能力。能力発動を阻害する音波のようなもので、《オーソーン・キルダイヤル》の発動を止められたのだ。
こいつら……全員がブースト系というわけではなく、ブーストを他人に付与できるタイプの能力者が1人いて、他2人は別の能力を持っているのか。
クローンのひとりが繰り出した拳を上体を屈めて躱す。貫手で攻撃者の顎を砕くべく構えを取ろうとしたところに、別のクローンが回り蹴りを放ってきた。これをクロームの腕で受け止めるが、衝撃を緩和しきれない。ビリビリと伝わる振動に思わず歯噛みしたところに、3人目が手刀で首を狙ってきた。咄嗟に足裏のローラーダッシュを起動、後方へ大きく退避する。クローン達はそれ以上無理に追撃しようとせず、懐から銃を……ディスインテグレイターを取り出して、こちらに向けてきた。
「……!!」
あの光線を喰らえば、如何に俺の肉体がサイボーグであっても問答無用で原子分解される。絶対に回避しなくてはならない。
一斉に発射された光線を高速回避しつつ、ローラーダッシュでさらに距離を取る。ディスインテグレイターの射程はせいぜい100mだから、射程外に逃れれば……。
「むっ……?」
そのとき、サイバーアイの視界が小さな金属の輝きをとらえた。
せいぜい数ミリ程度ではあったが、それは紛れも無くドローンだった。闇の帳の中を飛んでいるドローンである以上、ブラッドフラットの放ったコマであろうが……こちらを逃さないための偵察用だろうか?
一瞬の判断ミスが、俺を窮地へ陥れた。
ディスインテグレイターの光線が、そのドローンに命中したかと思うと……俺に向けて正確に反射されたのだ。
(リフレクタードローン……実用化されていたのか!?)
ディスインテグレイターの光線を増幅反射させることで射程を伸ばすだけではなく、遮蔽物の裏に隠れた敵を正確に撃ちぬく為の補助兵器。敵に見つからないために小さな形状だが、その為に移動能力に乏しく、転移と組み合わせなければ実用的ではないとされ聖鍵騎士団には不採用となった筈のモノ。そもそも不殺が基本原則である騎士団には無用な殺傷兵器……。
ドローンに転移反応はなかった。最初から、俺が後退することを読んで――
「くっ……!」
電算処理で思考を挟む余地はあるが、回避は間に合わない。
俺は咄嗟に右手をリフレクタードローンに向ける。
ドローンを発見し、光線が反射されるまでゼロコンマ2秒もなかったが、電脳の高速思考、義体の高速機動が動作を間に合わせた。
光線は腕に命中し、一瞬で原子分解される。
俺の腕、だけだ。
かろうじて、腕の切り離しが間に合った。
本来ならロケットパンチのように撃ち出すためのアタッチメントを強制分離し、即席の盾としたのである。
オリジンの持つ聖鍵なら一瞬で光線との間に遮蔽物をコピー&ペーストできただろうが、俺の持つ量産鍵と電脳の処理速度では光速戦闘に間に合うスピードで創成できない。
一方、腕は予備を収納空間から取り出せば、いくらでも代わりがある。
俺はドローンの目を逃れるべく、別の建物の影へと身を躍らせる。腕の付け替えは直接空間から接続できるので、そこまで手間ではなかった。すぐに電脳経由でマイクロレーダーを起動し、連中の動きを探る。
遮蔽物の多い場所へと逃げ込んだせいでレーダーの精度は落ちていたが、奴らの動きがある程度つかめた。とはいえ、ディスインテグレイターは建物であっても数発で穴あきチーズに変えてしまえる。油断はできない。
転移で戦闘から逃げるというアイデアも思い浮かんだが、おそらく無駄だ。
理由は、闇の帳。
これはダークスの亜種、夕闇の獣が散布するダークウィルスによって形成される結界のようなもので、非活性ダークスと似たような働きをする。アレと違うのは明確に檻としての機能……すなわち、ディメンジョンセキュリティと同等の空間を作り出すことができるという点だ。外に出るのは原則不可能であり、転移も例外ではない。しかし空間内であれば自由に転移できるし、俺もスマートフォンを使って転移することはできる。今それをしないのは、ブラッドフラットに転移先を逆探知される危険がある為……それ以上の理由はない。
だが、奴らはどうだろう。
転移を使えば俺の逃げた先に回りこむことも容易の筈だが、それをしなかった。
(……連中も、同じ理由で転移を使わないのか?)
おそらく違う。
連中は元から量産鍵を使っていなかった。
ディスインテグレイターも収納空間からではなく懐から取り出し、現在の追跡にも転移を使っていない。
奴らは明らかに俺が能力者であることを前提に戦術を組み立ててきている。どうしてかは知らないが俺の情報はほとんど奴らに伝わっていると見ていい。俺の義体にレーダーやソナーが搭載されていることも承知しているだろう。ならばスマートフォンの逆探知を恐れる必要はない。使ったところでリスクはほとんど変わらないからだ。それでも転移や収納空間を使わないということは……。
(量産鍵やスマートフォンをオンラインにできない事情がある、ということだな……)
闇の帳は非活性ダークスと違い、通信そのものは阻害しない。通常どおり、ルナベースからのアクセス支援を受ける事は可能である。俺がそうしたように。
それをしないということは、奴らは叛乱サイドのクローンで間違いないだろう。
現状の叛乱を引き起こした『アキヒコ』の仲間であると考えれば納得できる。
だが、逆に『アキヒコ』がオンライン状態なのが違和感として残る。
どうにも不合理で、論理的な結論が導き出せない。
ならば、どうする。
どうするのが最適解だ……?
「……!」
一瞬、視界の端に光が映る。
リフレクタードローンの反射光。
咄嗟に飛び退る。近くにあったダストボックスが音もなく消滅した。
「こんなアナログな戦法に苦戦させられるとは……!」
オリジンとの連絡は先ほど繋がったのでランク剥奪申請をしているのだが、一向に通る様子はない。
やはり同期システムが復旧できない以上、このまま戦うしかないか。
実際問題、ディスインテグレイターとリフレクタードローンの連携は厄介だ。
まず、俺が殺すべき標的が視界に入らないので《オーソーン・キルダイヤル》は使えない。
物陰に隠れたとしても、各所に配置されたドローンがある限り自動捕捉されてしまう。ドローン自体を破壊するのは簡単だが、かなりの数を大量散布されている為、焼け石に水だ。
そして……。
「おかえり、殺戮王」
「……くっ」
ブラッドフラットと3人のクローン。
再び大通りに戻ってきてしまった。
いや……おそらく誘導されたのだ。
狭い場所に隠れられないよう、裏通りにはドローンが配置され。
広く戦えるところでは阻害系能力でこちらの能力を封じ、包囲白兵戦でもって追い詰める。
地味だが、確実なハンティング方法だ。
クローンどもが、じりじりと距離を狭めてくる。
「……俺を狙うのは、やはり恨みからか」
ほんの少しでも時間を稼ごうと、普段はやらない敵との会話を試みる。
「お前には、随分と三好明彦たちを殺されたからな」
「オリジンの走狗が。お前だけヤムちゃんと幸せになろうったって、そうはいかない」
「自分も自我持ちのくせに、俺達を売りやがって……」
口々に罵倒してくる三好明彦たちの背後で、ブラッドフラットは何も言わずに佇んでいる。
「ブラッドフラット……お前もか」
「いや、お前に恨みはない。ただ……」
それまでの巫山戯たような雰囲気が消える。
いくつもの修羅場を潜った男の目だった。
「オリジンの管理を離れたキミは危険だ。フランたっての願いでもあるし、キミの手からヤムちゃんを救い出す」
……。
この男は……一体、何を言っている?
オリジンの管理?
フランの願い?
ヤムを俺の手から救い出す?
「三好明彦なき宇宙に夜明けをもたらす。それが俺たち新・聖剣教団の目的だ」




