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機械仕掛けの聖剣使い  作者: epina
Episode04 Dark Menace

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Vol.20

 グラナド無双から数日後、執務室で公務をこなしているときのことだ。


「ご主人様、サフォール伯が動きました」

「ようやくか」


 聖鍵派スタッフから連絡を受けていたフェイティスの報告に、俺は深く息を吐いた。


「5日か。滞在日ギリギリまで迷ってたんだな」

「呪言魔法使いを雇ってまで転移してきたからには、確実に計画を実行に移すつもりでしょうね」


 サフォール伯は、保守派筆頭ドルガール候の息のかかった貴族である。

 表向きの訪問理由は、恭順派と保守派が歩み寄るための交渉とのことだが……。


「やっぱ、計画通りにやるのか? 正直、気がすすまないんだけど……」

「あら、聖鍵王クローンの方はノリノリでしたのに」

「あいつは俺らの中でも生粋の変態なんだよ……」


 俺は王宮担当クローンなので、フェイティスや王妃組、側室と関わる事が一番多い。

 人格が別になっているわけではないといっても、こうしてクローンに外部出力することで、各ループの経験に引っ張られるようになってきている。

 要するに個性が出てきているのだが……。

 聖鍵王クローンも同じようなこと考えてたけど、これはひょっとして……。


「ご主人様もいい勝負だと思いますけどねぇ」

「な、なにおう……」

「私は好きですよ? ああいうのも」

「やめろー! よせー!」

「フフ、私はやっぱり根っこは同じご主人様だと思います」


 なんでそこで、そんないい笑顔をするんだフェイティス。

 くっ、どのループでも……この女郎蜘蛛だけは決してブレないわ……。


「とりあえず、大義名分を手に入れましょう。グラーデンに報復を行なっても、各国から批判を受けないレベルのものを。そこからはもう、グラーデンに合わせる必要は一切ありません」

「最終的には、チグリ次第だけどな」

「それなんですが……ここ数日のうちに、やってしまったようです」

「何をだ?」


 フェイティスは一呼吸置いて、その言葉を口にした。

 俺は椅子からズリ落ちた。


「……マジで?」

「はい」

「いや……いくらなんでも普通、間に合わないだろ」

「こんなこともあろうかと、随分前から用意していたらしいですよ。なんでも誰も心を痛めない兵器をお造りになると」

「あのときか!」


 海戦で犠牲者を出してしまったことを、随分後悔している様子だった。

 しかし、一度も俺に実験を見せていないってことは、ぶっつけ本番ってことか……。


「……そうか、忘れてたよ。チグリは有言実行だってことを」

「まったくですね。わたくしも、思いついたとしても実行するかと言われると……」

「あの娘に、相手のやり方に合わせるなんて思考は存在しないんだな……」


 でも、確かに。

 誰かが死ぬような戦争をするよりは、マシかもしれない。

 この方法なら戦争にはならない。


 そのほうがいいと考える人もいるだろう。

 でも俺はチグリが自分でそうすると決めた以上、支持しよう。


「オーケーオーケー。フォローは俺らで何とかしよう」


 あとは、彼女の本番が無事に終わることを祈る。



 一方、ユーフラテ家にはサフォール伯が到着していた。

 優男風の若い貴族であるが、ドルガール候の懐刀として知られている男だ。

 

「聖鍵陛下、ご機嫌麗しゅうございます」

「うむ」

「突然の訪問だというのに、お取次ぎ頂けるとは思いませんでした」


 伯め、よくも言ったものだ。

 そうなるよう予め仕込んでいた癖に。


 応接間には、俺とサフォール伯以外にチグリとポタミア、さらに長女ミグルと長男ガルシアが同席した。

 ミグル自らが全員にお茶を淹れる。俺のカップだけ、特別豪華な仕様になっていた。


 俺はカップに手をつけない。

 俺が最初の一口を飲まない限り、ここにいる全員がお茶に手をつけることはない。


「急な話だったが、ポタミア殿の頼みでは聞かないわけにもいかなくてな」

「ははは、左様でございましたか」


 サフォール伯は笑っていたが、目は全く笑っていなかった。

 内心では、どこぞ異世界から召喚されたよそ者など、高貴な身分である自分が頭を下げるような相手ではないと考えているのだ。

 マインドリサーチ? そんなん使わなくても経験でわかる。

 

「さて、サフォール伯はどのような展望をこの会談に持ってこられたのか」

「それは……そうですね。以後は聖鍵王の導きのもと、我らグラーデンもよりよき未来へ歩きだせたらと思います」

「公国化に前向きになった、そう考えてもよろしいのかな?」

「ええ、そのように受け取ってもらって構いません」

「書面は?」

「こちらを」


 渡された公式書面に目を通す。

 サフォール伯の言葉をそのままドルガール候の言葉と受け取っていい、という程度の内容だ。

 このぐらいは用意してきていたというわけか。

 無駄な足掻きを。


「陛下……せっかくのお茶が冷めてしまいます」

「ああ、そうだな」


 ガルシアに言われて、俺はカップを手に取る。

 サフォール伯の目が、わずかに細められた。

 顔に出るとはまだまだだな、若造。


 こちとら別の世界で100年君臨した聖鍵王。

 貴様らの腹などお見通しだ。


 しかし、今回の脚本を書いたのはフェイティスだし、主演は俺ではない。ロートルは退場するとしよう。


 俺は淀みなく、カップに口をつけて茶を飲み干した。

 直後。


「うっ……ぐ!!」


 喉と胸に激痛が走り、呼吸ができなくなる。

 慌てふためく周囲の者たち。


 んっ、なんだ?

 頭の中が真っ白になる感覚……。

 ビジョンに似ているがもっと懐かしい……。


 そうだ、前にもこんなことが……。


 俺は奇妙な既視感を覚えつつクローンとのリンクを打ち切り、本体オリジンへと意識を戻した。


「……さて、お手並み拝見だ。チグリ」


 エネルゲイアの要塞のひとつを艦隊戦で潰しながら、ユーフラテ屋敷の様子をスクリーンに映し出した。



「きゃああああああ!!」


 ミグルの絹を裂くような悲鳴が屋敷に響き渡った。


「陛下! どうされました、陛下!」

「医者を呼べ! 医者だ!」


 ポタミアが痙攣する俺のクローン体に呼びかけ、異常事態を察したガルシアがすぐに使用人を呼ぶ。


「……なんということだ」


 などとわざとらしく呟いているのはサフォール伯。


 そんな中、チグリは震えていた。

 クローンとはいえ、目の前で死にゆく俺を見て、ショックを受けているようだった。

 それでも彼女は俺のに従い、行動を起こした。


「全員! その場から動かないでくださいぃ!!」


 彼女の一喝は、全員の動きを止めた。

 ポタミアとサフォール伯が驚いて目を見開き、ミグルとガルシアが信じられないようなモノを見たという様子で固まった。


 チグリはゆっくりと俺だったモノの傍にしゃがみ込み、脈を取った。


「……聖鍵陛下は亡くなられました。これは、毒物による殺人です」

「殺人ですって!? じゃあ、これは……」


 ミグルの叫びにチグリは立ち上がり、頷いた。


「はい。聖鍵陛下は暗殺されたのです」

「……貴様か!!」


 ガルシアが、サフォール伯に掴みかかる。

 伯は両手を上げて、無抵抗を装った。


「おっと、待ってくれたまえ。私は陛下のカップには一切触れていないのだぞ。そもそも、茶を出したのはそちらではないか」

「なっ……! 我らの中に犯人がいるとでも言うつもりか!」

「そういうことになるのではないかね? いやぁ、まさか恭順派筆頭の君たちがこのような暴挙に出るとは予想外だ」

「貴様……!」


 ガルシアはサフォール伯の狙いに気づいたようだが、手を上げたりせず、サフォール伯を解放した。

 伯は悪びれもせず着崩れた衣装を整える。


 もちろん、俺の暗殺を企図したのはサフォール伯である。


 だが、彼自身が一切手を下していないのは事実だ。そもそも、彼もこんな浅い手で暗殺が成功するかどうかは半信半疑だったはずである。

 もともとサフォール伯がユーフラテ領にわざわざやってきたのは、現場に居合わせるためだった。


 彼らの目的は俺を殺すことではなく、ユーフラテ家に罪をなすりつけ、失墜させること。

 俺がすべてを知っているため茶番にしかなっていないが、黒幕のドルガール侯爵とてすべてうまく行くとは思っていまい。

 ユーフラテ側が聖鍵王を殺そうとしたという結果さえあれば、暗殺は未遂でも構わなかったわけだ。


「おっと、私を口封じのために殺そうなどとは思わないでくれたまえよ。私が死ねば、ドルガール候はもちろん、他の全貴族がお前たちを様々に攻撃するぞ?」

「くっ……」

「お兄さま! 伯は確かに、犯人ではありません。どうか落ち着いて下さい」


 チグリがガルシアを諌めると、ポタミアが兄をサフォール伯から離れさせた。

 ミグルは呆然とした様子で、俺の遺体を眺めていた。


「そうだ、私は犯人ではない。聖鍵陛下を殺害したのは、お前たちユーフラテ家だ」

「サフォール伯、それも違います」


 伯が眉をひそめ、不快そうにチグリを睨んだ。


「なんだと?」

「聖鍵陛下を殺害したのは……ドルガール候の暗殺者。そうですね、サフォール伯」


 チグリは一見臆していないように見えたが、尻尾が股の下に入っている。

 人間であるサフォール伯にはわからないかもしれないが、ウラフ族が怖がってる証拠だ。


 だが、チグリは退かない。


「ふ、はははっ! 何を言い出すかと思えば……」


 伯はさも馬鹿馬鹿しいという風に笑い、腹を抱えているが……マインドリサーチのデータは、彼の焦りをはっきりと捉えていた。


「まさか、そのような妄言をおっしゃる方だとは思いませんでした、チグリ・ルド・ピースフィア様。侯爵のことを悪しざまに言ったことについても、報告させていただくとしましょうか」

「いいえ、貴方は侯爵と会うことはありません。二度と」


 チグリがスマートフォンを操作すると、部屋にドロイドトルーパー4機とメタルノイドが突入してきた。

 うち2機はサフォール伯を捕縛し、もう2機は……ある人物の背後に。

 メタルノイドはチグリを守るよう、傍らに立った。


「血迷ったのか!? ここで私に何かあれば……!」

「ドルガール候は陛下が斃れた直後に捕縛しました。外の護衛の方と魔術師の方も」

「馬鹿な……!」

「先に手を出したのは、あなた方です。陛下を殺害し、私達に罪を着せることでユーフラテ家を失墜させようとする計画……既に明らかになっています」


 チグリは、家族の1人を指差した。


「私の家族に変身してユーフラテ家に潜伏し、サフォール伯を屋敷に呼び込み、陛下のカップに毒を盛り、兄上から伯を守るためにフォローした……貴方ですね」


 チグリの指し示す先に立ち、ドロイドトルーパー2機に手を挙げるように命令されている人物は……ポタミアだった。


「お父様が……!?」

「チグリ、これはいったいどういうことだ」


 驚いたのはミグルとガルシアである。

 指摘を受けたポタミアも同様だった。


「チ、チグリ。何を馬鹿なことを。一体これはどういう……すぐにやめなさい」

「普段から畑仕事を手伝いに行く父の立場なら、外で伯と連絡を取り合ったり、カップに毒を仕込むのは簡単です」

「ははは、冗談はおよしなさい」

「陛下との会話も随分気を遣っていましたね。わざわざ、わたしの教育を後悔しているような振る舞いをして……。

 もう演技をする必要はありません。本物のお父様は、既に保護しています」

「…………」


 ポタミアが黙りこむ。

 チグリは無言で魔法習得オプションを使い、《ディスペルマジック》を発動させる。

 対象はもちろん……。


「……くっ」


 《シェイプチェンジ》の魔法が解けたのだろう。ポタミアの姿が剥がれ落ち、黒ずくめの男に姿を変えた。


「もう言い逃れはできませんし、させません。……連れて行きなさい!」

「フン……っ!」


 黒ずくめにブラスターを構えていたドロイドトルーパーの頭が2機同時に爆発した。


「あっ……!」


 チグリ、油断したな。


 今の暗殺者の攻撃……無詠唱、動作のみのアレンジを入れた《ダイレクトボム》か?

 呪言魔法を使いこなすアサシンなのか。


「……依頼された仕事はこなした。契約満了ってことで、引き上げさせてもらう」

「貴様、逃げられると思っているのか!」

「ああ、逃げさせてもらうね」


 帯剣を許されていたガルシアが、剣を抜き放つ。

 黒ずくめは短剣を抜いて即応しつつ、懐から拳大の玊を取り出して、地面に叩きつけた。

 一瞬にして周囲は煙幕に包まれる。


 一同が煙を吸い込んで、ゴホゴホと咳き込んだ。

 そんな中、行きがけの駄賃にとでも考えたのだろう。暗殺者の短剣がチグリの首筋に走った。


 これが黒ずくめの暗殺者にとっての、致命的なミスだった。


 視界が完全に塞がれる中、動いたのはチグリの脇に控えていたメタルノイド。

 事象センサーを搭載したメタルノイドに対して、煙幕はなんの効果も持たない。


「ッ!?」


 火花とともに金属音が響く。

 短剣がメタルノイドのクロームの腕に弾かれ、真っ二つに折れたのだ。

 無造作に突き出された腕が、黒ずくめの首を掴み、万力のように締め上げる。

 不殺モード設定でなければ、この時点でメタルノイドのパンチが黒ずくめの頭を跡形もなく吹き飛ばしていただろう。


 煙が晴れ、一同が目撃したのは、メタルノイドに片手で持ち上げられている黒ずくめの暗殺者だった。


「……チ」


 苦しげに呻いていた暗殺者だったが、ニヤリと笑う。

 その瞬間、サフォール伯の顔が恐怖に歪んだ。


 俺もドローン越しに暗殺者の熱源異常を感知。

 自爆か?


 同様に危機を察知したメタルノイドは、部屋の壁に体当たりして突き破り外へ出ると……暗殺者の体を遠投する。


 その直後、男の体が爆発し……屋敷を振動で揺るがした。

 幸い、自爆の規模はそれほど大きくはなかったため大事はなかったようだが……部屋で爆発された場合、被害が大きくなっていただろう。

 もっとも、この周辺を吹き飛ばすような熱源が感知されたようなら、俺がドローンを使って暗殺者を宇宙へ転移させただろうが。 


 しかし、今の自爆方法は魔法ではない……暗殺者特有のスキルか何かか?

 疑問を感じた次の瞬間には検索結果が頭の中に入ってくる。確かに自爆する暗殺者もいるようだが、その場合に膨れ上がるのは魔力のはずだ。

 あの暗殺者はそうではなかった……後で調べさせる必要がある。

 サフォール伯は暗殺者の自爆を察した様子だったから、彼を聴取するか……いや、おそらく何も出てこないな。アースフィアの暗殺者に自爆能力があるなら、伯もそのように考えていた可能性が高い。


「ケホケホ……みんな、大丈夫ですかぁ!?」

「ああ、何とかな」

「チグリ、貴女無茶をして……!」


 ミグルがチグリに駆け寄って抱きしめた。

 その様子をガルシアが見守っている。


「あ……お姉さまぁ……」

「昔っからあなたは、もう……危なっかしいんだから」


 姉に頭を撫でられるチグリは、なんとも言えない不思議そうな顔をしていた。


「ははは……一体何なのだ、この茶番は! どうせ、そこで死んでいる聖鍵王は影武者か何かだろう。わざわざ我々に殺させて、どういうつもりなのだ!?」


 無粋な茶々入れをしてくるサフォール伯。さすがに俺が本物とは思っていなかったらしい。

 エネルゲイアの宇宙要塞も破壊したし、そろそろ種明かしのために俺が出向くか。


「……お姉さま、もう大丈夫です」


 チグリはミグルに声をかけて、伯に向き直った。

 自分でやるのか、チグリ……なら、俺は様子を見よう。

 

「サフォール伯。今回の一件は、グラーデン王国のピースフィアに対する明確な敵対行為と受け取らせていただきます。よって、只今を持ちましてピースフィアはグラーデンに宣戦を布告します」

「なっ……!?」


 伯だけではなく、ミグルとガルシアも絶句する。


「グラーデンの貴族はただちに武装解除し、その地位を捨て去ることを承諾してもらいます」

「お前は……狂っているのか? そんなこと、できるはずがない」

「してもらいます。というより、することは決まっているんです」


 チグリは袖口から、小さな針のようなものを取り出した。


「これは、私が開発した兵器……ピース・スティンガーです。これを打ち込まれた者はルナベースのスレイ・システムに同期され、並列化され、ピースフィアに服従を誓います。人格を変更することなく、ただ私達の言うことを聞くようになるというモノです。一度頭の中に入り込んでしまえば同化してしまうので、摘出は不可能です」


 チグリは淡々と、自分が作ったという非人道的なアイテムについて解説した。


「既にここ数日の間に、グラーデン貴族全員にこの針を打ち込みました。うちの家族を除けばサフォール伯、貴方で最後なんです」


 伯はもちろん、ミグルとガルシアもドン引きである。

 すたすたと軽い調子で近づいてくるチグリに、サフォール伯は顔を青ざめさせて暴れた。

 だが、ドロイドトルーパーに両腕をがっちりとホールドされて、逃げることができない。


「や、やめろ。お前たち、それでも平和を謳う国家の一員か!? 我々の意思を奪い、支配しようというのか!」

「これまで貴族が平民にしてきたことと同じじゃないですか。それに……それでも死ぬより、殺しちゃうより、いいと思うんです」


 チグリは心からニッコリと微笑み、


「やめろぉぉぉぉっっ!!?」

「聖鍵陛下のご命令はぁ、絶対なんですぅ……♪」


 サフォール伯のこめかみに針を打ち込んだ。



 一部始終を見届けた王宮担当の俺とフェイティスは、しばし無言であった。


「……フェイティス、思うんだけどさ」

「はい、なんでしょう?」

「あの針を使うんだったら、普通に貴族とクラップ王に使って、公国化を迫れば終わりだったんじゃね? 聖鍵王の俺、死ぬ必要なかったよね?」

「……申し訳ございません。チグリ様が、わたくしの想像のななめ上を行っておりました」

「ああ、そうだな……」


 全グラーデン貴族の並列化。

 これなら確かに戦争は起こらない。

 貴族たちは全面降伏し、ピースフィアの言いなりになって貴族という地位を捨て去るだろう。


 思うところがないでもない。

 人の心を失っていく俺ですら躊躇していた境界線を、チグリはあっさり超えてしまった。

 チグリの成長を促すどころか、新たな領域に足を踏み込ませてしまったような気がする。


 過去のループでも、あんな兵器を造ったチグリはいなかったはずだ。

 海戦を経験させたのも今回が初だったから、あれがなんかのフラグを立ててしまった可能性が高い。


 何はともあれ、グラーデン王国はその日のうちにピースフィアの占領下に置かれた。

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