箸休め十八品目
「うわあああああぁああん!! いっチャッタヨー!!」
「グスっ…………ヒック、ヒュ……」
「ふええぇ……」
シシリー郊外に数十人もの人が集まり、何人もの人が泣き伏している。
「探査魔法はどうした!? 見つからないのか!?」
そんな中灰色のローブを着た男性に、紫のローブを着た上司と見られる男性が苛立ちをぶつける。
「そ、それが……あまりにも遠くへ行ったようでして…………」
「くっ!!」
紫のローブの男は顔に悔しさを滲ませた。
グゴゴゴオォン!!
その時大地が激しく揺れ動き、風が吹きすさぶ。
「な、何だ!?」
「見ろ!! 空が……」
「これは……馬鹿な…………」
空が朱い光に分断されている。
「あ……あの時と同じだ…………」
アレシアを入学試験で連れ添った女性が思い出したのは、二年前の死亡偽造の時の大爆発。
記憶が重なる。
またいなくなる? 今度は帰って来るの?
「い……いやあぁあああああぁ!!!」
一方、共和国首都ロミリアでもこの現象は観察されていた。
むしろ現象発生地点の海域にほど近い分、地震、突風被害もより酷く建築物は倒壊し、朱い閃光もより鮮明に観測された。
人々は社会不安の中、この不吉とも取れる現象を目の当たりにする。
守護しか持ち得ない、名前すら主神を除きほとんどない旧来の多神教の宗教は頼りないと人々の心から離れ、束縛の代償に幸せが得られると謡う一神教が人々の新たな人々の依り処となり始める。
後に社会不安の一因となる魔族が投下したレギオルと呼ばれる魔物は、強力な感染症の如く広がっていく。
社会は荒廃を始める。
しかし、魔族も思わしい状況ではない事に変わりはない。
時はレギオルがシシリーを襲撃した時までさかのぼる。
レギオル襲来から原因不明の大爆発までのレ国空軍の通信記録。
『第一区から三区までのレギオル、全滅』
『本当か!?』
『どうしますか、指令。殺害対象を見つけているのに仕留められないとなったら……』
『分かっている。こうなったら周辺区域の全兵力を投入する』
『よろしいのですか? 過剰戦力では?』
『構わん』
『了解。西部方面に位置する全艦に次ぐ。西部方面に位置する全艦に次ぐ。通信連絡艦ACTB488−5−18の元へ集結せよ。通信連絡艦ACTB488−5−18の元へ集結せよ』
『ふ……これだけの戦力だ。塵も残るまい』
『……! 指令。殺害対象と制御レギオルが交戦している模様』
『それは……まあいいだろう。あの魔力だからな、制御レギオルのいい餌になるだろう』
『はあ……』
『指令。西部方面の全兵力、及び東部方面より出向中の第五、七艦隊が集結完了。戦艦五、空母十、巡洋艦十、駆逐艦二十、フリゲイト三十を含める百三十二隻ですが……よろしいですね?』
『出撃』
『了解……全艦に、!? 指令!! 全艦との通信が途絶えました!!』
『何だと!?』
『衝撃波が来ます!! 伏せて下さい!!』
『うわあああああ!!』
その後、有人指令艦AD123−1−03沈没。
原因は制御レギオル、西部、東部艦隊を巻き込んだ半径五キロにも及ぶ謎の大爆発の二次被害を受けた模様。
この被害により、我が軍の主力艦は壊滅。
大規模な作戦行動が可能になるには、数年単位の時間が必要です。
また、この大爆発と殺害対象であったアレシア‐J‐バルカとの関連は調査中であります。
以上、情報部からの報告でした。




