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G/SieMENS (ジーメンス) 極超短波少年と電波監視官の美女  作者: にのい・しち
インシデント・3 ゆずれない明日を守り続ける
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67 電波怪獣のあとしまつ

 朝は家族を送り出すのに忙しいお母さんの呼び声で起きた。

 昨晩の疲れが一気に来たせいか、なかなかベッドから起き上がれなかった。

 いっそ学校を休もうかと思ったが、昨日、起きた事件で世間から何かの反応があるか、知りたかったので、渋々、疲労で重くなった身体にムチを打って起こした。


 母親の小言を聞きながら二階の部屋から一階のリビングへ行くと、お父さんがテーブルで情報番組を見ながら朝食を取っていた。

 番組は昨夜起きたジャマーによる東京の被害を流している。


 気象庁が会見を開いて一連の災害について説明していた。

 停電、事故、交通の麻痺、通行人を襲った人体への異常。

 これらは太陽が活発化したことによる、太陽風(フレア)が引き起こしたことだと会見で話していた。

 察しはつくけど、おそらくジャマー退治の専門家集団こと監視ゼロ課(ジーメンス)がジャマー災害を世間から隠す為、上手い具合に辻褄を合わせたに違いない。

 番組の映像が切り替わり国土交通大臣が被害額を五千億円と発表し、規模の大きい台風と同等の被害だと報じる。

 大臣は想定外の被害が発生したと語る反面、すかさず東京の復旧には増税が必要だと回りくどい言い方をした。


 増税の話を聞いたお母さんが焼いたばかりのトーストの皿を、テーブルへ運びながら愚痴をこぼす。


「また増税? 税金払う余裕なんて、どこの家にもないわよ」


 僕はしれっとテーブルに座り、母が運んで来たトーストにかじりつくと、焼けた表面がザクりと音を立てた。


 未来から転生して中学生の身の上になった僕には、増税とか関係ない話かな?



 身支度も済んで学校へ向かう。

 学校に近づくにつれ登校中の生徒の流れに、いつの間にか入っていた。

 

 なんだか拍子抜けだ。

 昨日の夜は世界が終わるかもしれない大事件を目の当たりにして、しかも人々を守る為に東京の街を全力疾走したのに、誰にも褒められるどころか、その時の活躍すら知られない。


 正体を隠しながら悪役と戦う変身ヒーローの苦悩って、こんな感じなんだろうな?

 やるせないとはよく言うよ。


 うつむくと眼鏡が下がったのでかけ直した。


 普段の生活では眼鏡をかけることにした。

 電波が見えることが解った今となっては、視力が悪くて目に映るものが(かす)んだ世界に見えても、電磁波の反射で物事を見ることができた。


 ただ、電磁波の刺激は強すぎて眼にダメージを受ける。

 なので通学や日頃の生活は眼鏡をかけて、物質の世界を意図的に見ることで、電波の世界を遮断することにした。

 それにジャマーみたいな存在を日頃から目にしていたら落ち着かない。

 眼と精神を落ち着かせる為にも眼鏡は必要なアイテムだ。

 

 正門までたどり着くと、背後から邪悪な気配が背中を撫でた。

 

 間違いない、親友であり相棒でもある戸川だった。


「おカンチョぉぉおおーー!!」


 こいつは本当に成長しないヤツだ。

 性懲りもなく同じパターンで奇襲をかけてくる。

 でもコイツは、いつもの日常を思い出せてくれる。

 それがどれだけ尊いか…………いいよ。

 今日は全部受け止めてやる。


 僕は羽ばたく翼のように両手を広げ、天を仰ぎ目を閉じると、心の扉を開いて向かい入れる準備を終え、戸川の全身全霊を込めた指先を自身の肛門で受け止めた。


 ――――――――ズブリッ!!?

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