表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/13

守護騎士の出生の秘密

たくさんのお話の中から、こちらを見に来てくださってありがとうございます。


  ✳︎ ✳︎ ✳︎


「其方は結局、なぜ何かするたびそんなに目立ってしまうのだ。」


 こめかみを抑えて、大神官イザークがため息をついた。ミサキの周りには、クルクルと夜光草の精霊が2人浮かんで楽しそうにミサキにじゃれついている。


 あまりに可愛いから、夜会のあとにルルとララなんて名前を付けてみたら、帰らなくなってしまったのだ。精霊に名前を付けるのは、主従契約だと脱力したイザークがあとから教えてくれた。


(もう少し早く教えてほしかった。)


「…そんなに目立ってました?」

「目立たないわけがないだろう?あんなに花びらをまき散らして…。精霊まで召喚して。今、王都ではお前たちを題材に王室を舞台にした恋愛小説が重版に重版を重ねているらしいぞ?もちろん版権の一部は、其方につけているからな?」

「うひゃー。」


 だれが、そんなものを書いているのだろうか。アレを見ていた貴婦人か、それともうわさを聞いたハーフリングか…?どちらにしても由々しき問題だ。


「それに、ヴィルヘルムのこともある…。」

「え?」

「ヴィルヘルムは、公爵家の六男だと前に話したな?」

「ええ…。」


 その後、イザークが話し出したのはミサキにとって青天の霹靂だった。


「え?ヴィルヘルムさまって、王位継承権あるんです?しかも、継承権第2位です?は…何言ってるんですか?」

「…ヴィルヘルムの母親は、隣国の王女だ。ハーマン公爵家は、長男とヴィルヘルムだけが正妻の子。長男は公爵家を継ぐ故、王位継承権はないからな。」

「え?でも、この前の夜会で第3王子さまと踊りましたよ?」

「…其方が踊った王太子。つまり第3王子以外は陛下の愛妾の子どもだ。ファフニール王家には、継承権がある男子は一人しか生まれなかった。」


 重い沈黙がミサキとイザークの間を流れる。


「ヴィルヘルムは、王位争いに加わらせないために、ワシの手元に置いていた。幼いころから何回も命を狙われ、戦争でもいつも最前線に送り出されていたからな。」

「……。」

「そなたの守護騎士にしたのも、裏を言えば王位争いを抜けいずれ神殿に入ることを印象付けるためだ。だが、其方はワシの娘になり大聖女候補に挙がってしまった。そして、婚約者と踊るラストダンスをヴィルヘルムと踊った。」

「…私は、どうしたらいいのですか。」


 長い溜息と沈黙の後に、イザークは優しく微笑んだ。


「其方の思うとおりに。…ワシは最高神官になることにしたからな。」

「大神官…さま?」

「ワシの権力も、生まれも、養女になったこともうまく利用するがよい。まぁ、すべてを捨てて旅をするのもよい。其方の思うとおりに生きろ。」

「大神官さまは、もしかして私のせいで…。」


 大神官は、微笑んでミサキの頭を優しく撫でた。


「ワシは其方にほだされてしまったようだ。…可愛い娘にな。以後2人きりのときはお父様と呼ぶように?」


 イザークが目線を向けた先には、ヴィルヘルムの姿があった。思いつめた瞳だったが、今は下を向くことなくまっすぐミサキを見つめている。


「ワシはヴィルヘルムがどうしたいのかも聞いていない。まあ、あいつが王になったらそれはそれで退屈しないが?」


 ヴィルヘルムのもとへ、まっすぐかけていくミサキ。


「答えは結局のところ、その姿にあるな。」


 少しだけ寂しそうに、イザークが呟いた。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


「ミサキ殿、俺のこと伯父上から聞いたんですね。」

「うん。聞いた。目立たないようにしていたのに、私のせいで…。」

「ミサキ殿のせいではないです。…ただ、過去にとらわれ続けていた俺に意気地がなかっただけです。」


 その時、ミサキの周りを漂っていた夜光草の精霊が強い光を発した。


―――ミサキ、ダイセイレイサマ、ヨンデル

―――シカタナイカラ、ヴィルモ、ツレテッテアゲル


「え?」

「くっ。またか?」


 ミサキはヴィルヘルムに抱きしめられていた。足元の床が溶けてしまったような浮遊感。でも、ヴィルヘルムがそばにいるおかげで以前のような怖さは感じなかった。



最後までご覧いただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

新作連載応援お願いします
悪役令嬢の中の人ですが「断罪に間に合わなかったのに続きがあるんですか?」



連載応援お願いします
破滅フラグが嫌なので引きこもり聖女になります~呪いを肩代わりしたので逃れられていませんが~



【完結】トラック事故で引き裂かれた幼なじみ2人のやり直し異世界ラブストーリー
トラック事故で消えた幼なじみが騎士団長になっていた


他にも異世界恋愛短編いろいろ書いてます
短編小説
― 新着の感想 ―
[良い点] まっすぐかけていくミサキと、イザーク様の少し寂しそうなお姿が心に残りました〜 [気になる点] ヴィルヘルム様は六男だから、結婚へのハードルはそんなに高くないのかなーなんて思っていました、…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ