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23「第二位の噂」


 リリとの序列戦を行った翌日。

 いつも通り悪魔学校に登校すると、校門の前でリリと遭遇した。


「あ……っ! ケ、ケイル様! お、おはようございます!」


 俺の存在に気づいたリリは深々とお辞儀した。

 紫色の長髪がふわりと揺れる。女子生徒にしては背の高いリリが腰を折ったことで、生徒たちの視線が集まった。


「おはよう、リリ。……なんでここに?」


「そ、それは勿論、ケイル様とご一緒に登校したくて……!」


「一緒に登校って……もう学校に着いているが」


「きょ、教室まででもいいので! ゆ、ゆっくり、歩いていただければ、嬉しいです。……ふへへ」


 ご満悦そうに、リリはふにゃりと柔らかい笑みを浮かべた。

 反応に困る。……複雑な顔をしていると、隣に佇むエレミーが唇を尖らせた。


「気色悪い女ですね~」


 エレミーが小さな声で呟いた。


「ケ、ケイル様は……もっと、上を目指すんですか?」


 リリが訊く。

 問いの意味が分からず首を傾げると、リリは補足するように告げた。


「じょ、序列……もっと、上げたいのかなぁ、と、思いまして」


「……ああ」


 納得の「ああ」であり、肯定の「ああ」でもあった。

 勿論、序列は上げるつもりだ。今の俺は、リリを倒したことで序列三位となっている。


「次は二位か。……いよいよ、大詰めという感じだな」


「ですね~」


 呟くと、エレミーが相槌を打った。


「リリ様。序列二位のウォレン=ベリアル様について、教えていただいてもよろしいですか~?」


 エレミーが訊く。

 するとリリは眉間に皺を寄せ、


「じゅ、従者が、気安く話しかけないで……」


「あぁん?」


「ひっ!?」


 エレミーが凄むと、リリは怯えた様子で俺の背中に隠れた。


「ケ、ケイル様! こ、この従者、絶対変えた方がいい……! こんなの、メイドじゃなくてただの不良……!」


「……いや、今のはリリが悪いと思うけど」


 恐ろしいなら余計なちょっかいを出さなければいいのに……。

 リリは中々、難儀な性格をしている。


 しかし……エレミーの、俺以外に対する態度はちょっと新鮮だった。今まで俺とエレミーは二人きりで会話することが多かったため、あまり考えたこともなかったが、エレミーの普段の言葉使いはもっと厳しいものかもしれない。


「リリ、俺からも頼む。序列二位について教えてくれないか?」


「ケ、ケイル様の頼みなら……従い、ます」


 リリが素直に頷くと、エレミーが「けっ!」と不機嫌そうな顔をした。


「じょ、序列二位の名前は、ウォレン=ベリアル。一位のライガット=バアルと同じ、三年生で…………彼は今、学校に来ていない」


「学校に来ていない?」


 ウォレン=ベリアルについては、序列四位との場外戦に勝利した後、エレミーの口から説明を受けている。

 しかし、学校に来ていないというのはどういった意味だろうか。


「い、いわゆる不登校で……私も、一度しか見たことがない」


「えぇ……」


 序列戦とは関係のないところで驚きだ。

 俺はまだあまり実感していないが、序列上位は悪魔学校において魅力的なステータスである。その地位を持っているだけで、随分と居心地がよくなるだろう。


 ウォレン=ベリアルは、ライガット=バアルに続く実力者であるにも拘らず、その地位によるメリットを一切享受していないようだ。……いや、もしかすると二位だからこそ不登校が罷り通っているのかもしれない。


「リリは、そのウォレン=ベリアルと戦ったことがあるのか?」


「な、ないです。どう見ても、勝ち目がないので……」


 小さな声で、リリは続ける。


「ウォ、ウォレン=ベリアルは、一年ほど前に序列戦を受けたことがあります。その結果……対戦相手は、酷い重傷を負って、退学してしまいました」


「退学って……そこまでしたのか」


「は、はい。それはもう、熾烈で……恐ろしい戦いでした。に、二年生以上の生徒はその戦いを知っていますので……以来、誰もウォレン=ベリアルに序列戦を申し込んでいません。……こ、この一年間、一位と二位は不動です」


 怯えた様子で語るリリに、俺も緊張した。


「……ウォレン=ベリアルも、バアルと同じく別格(・・)ということだな」


「そ、そういうことに、なります。さ、三位と二位の間には、大きな差があると、よく言われてますね……」


 リリは視線を下げながら言った。

 よほど恐ろしい悪魔なのだろう。話題にすること自体、抵抗があるようだ。


 ――だが、挑まなければならない。


 俺はなんとしても、序列一位にならなくてはならないのだ。

 魔王になるため? ……否。

 記憶を、取り戻すために。


「ウォレンに、序列戦を申し込もうと思う」


「さ、流石、ケイル様……っ!」


「流石ですね、ケイル様~!」


 持ち上げてくるなぁ、この二人……。

 どちらも純粋な応援かもしれないが、少々居心地が悪い。


「ただ、相手が学校に来ていない場合、序列戦はどうやって申し込めばいいんだ?」


「ふ、普通に申し込んでも問題ないです。ただ、その場合だと返事が遅くなるかもしれないので……確実なのは、ちょ、直接やり取りをすることだと、思います」


 序列戦を始めるには、どのみち悪魔学校の承認が必要だ。

 つまり、申込書を直接手渡しして、ウォレンの記入を確認してから俺が学校に提出すればいいということか。


「ウォレンは何処にいるんだ?」


「あ……そ、それは、私も知りません」


 その質問は想定外だったと言わんばかりに、リリは沈黙した。


「けっ、肝心なところで使えない奴ですね~」


「……じゅ、従者なのに、口が悪いって、致命的だと思う」


「貴女に対してだけですけど~~~?」


「ひぃっ!?」


 エレミーが鋭く睨むと、リリが怯える。

 なんだかんだ二人は仲がいいのかもしれない。


「ケイル様~、ご提案があります~」


 エレミーが俺の顔を見つめながら言った。


「案内人を用意しては如何でしょうか~?」


「用意って言われても……誰に頼めばいいんだ?」


「うってつけの方がいるじゃないですか~。ほら、ケイル様もよく知っている筈ですよ~?」


 エレミーはそう言うが、心当たりはない。

 暫く悩んでいると、エレミーが得意気な笑みを浮かべながら答えを教えてくれた。


「ベリアル一族の、放蕩息子ですよ~」




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[一言] 気色悪い女です。
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