19「序列3位決定戦②」
「ちょ――ちょっと、待てッ!!」
四方八方から襲い掛かる悪魔たちの猛攻を、俺はどうにか避けながらリリを睨んだ。
こちらの視線に気づいたリリが「ひっ!?」と悲鳴を零す。しかし、彼女にそんな態度を取る資格はないような気がした。
「これは、アリなのか? 序列戦なのに、俺たちとは関係のない悪魔を巻き込んで……」
「あ、あれ? し、知らないの……? 能力の効果が、第三者を必要とするものである場合、協力者を呼んでもいいのよ……?」
初めて聞いた。
横合いから迫る悪魔の拳を避けながら、俺は驚愕する。
「《魅了》は、シトリー一族の正統な能力だし……あ、悪魔学校は、序列戦に関してはかなり寛容だから……こういうことも、許されるのよ」
そう言われると、反論も難しい。
リリは自分の能力を使って戦っているだけだ。そこに悪意はない。
彼女の能力《魅了》が如何に危険なものなのか、俺は今更思い知った。この力を使えば、相手にとって大切な誰かを人質に取ること容易だろう。序列戦という形式を守ってくれただけでも、まだマシである。
「リリ様の、敵を倒せぇ……」
「倒せぇ……」
悪魔たちが正気を失った様子でこちらに近づく。
俺とリリの間に、あっという間に悪魔たちの壁ができてしまった。
「く、そっ!?」
予想していなかった数で押される展開に、俺は一度リリから距離を取った。
見たところ、リリは俺に近づこうとしない。どうやら本人はそこまで強くないようだ。つまり、彼女に近づくことさえできれば活路も開く筈だが……とにかく敵の数が多い。既に何人か倒しているが、教室の方から次々と新たな悪魔がやって来る。
――《疾風槍》は使えない。
あの技は殺傷力が高すぎる。リリの能力によって洗脳され、判断力が欠けている悪魔たちにこの技を使うと、重傷を負わせてしまう可能性が高い。
となれば……今の俺にできることは一つしかなかった。
「吹き飛べ!!」
ヴィネ一族の力である《狂飆》を、掌にから放つ。
周囲にいる悪魔たちが一斉に仰け反った。しかし、その背後にいる他の悪魔たちに背中を支えられ、再び俺に向かってくる。
一時的に吹き飛ばしても、これではリリに近づけない。
廊下の狭さも俺にとっては不利だ。逃げ場がないため、落ち着く余裕もない。
「こ……降参するなら、早めにお願い……」
どこからかリリの声が聞こえた。
焦燥感が増す俺と違って、随分と余裕綽々だ。思わず歯軋りする。
「どうすれば……」
どうすれば、この状況から抜け出せる――?
今の俺には《狂飆》と《疾風槍》の二つしか手札が存在しない。
何か新しい手が必要だ。
そもそも、ヴィネ一族の力である《狂飆》って……何だ?
いつの間にか馴染んでいる自分の力について、改めて考える。この能力には未だ底知れぬ何かがあるような気がしてならない。
そのまま暴風として放つこともできれば、槍として放つこともできる。
ヴィネ一族の《狂飆》は、想像力次第ではもっと色んなことができる力なのかもしれない。
「……想像力」
考えを口に出す。
頭の中で、《狂飆》の新たな使い方のイメージを組み立てた。
そのイメージの中に――幾つか鮮明なものがある。
それらの技は、まるでかつての俺が使っていたかのように、驚くほど鮮明にイメージできた。技の効果、威力、速度などが、瞬時に思い浮かぶ。
俺はかつて、その力をどのように使っていたのか。
イメージの中にいる自分は、何かを唱えていた。
「……『血舞踏』」
無意識に、そんな言葉を唱える。
頭は覚えていないが、身体が覚えていた。多分これは、かつて俺が使っていた力だ。
掌に集めた《狂飆》を、刃の形にして――。
「――《血閃鎌》」
三日月状の斬撃が、放たれた。
pixiv小説で百合文芸コンテストなるものをやっていますので、参加してきました。
短編ですので、よろしければお気軽にお楽しみいただければ幸いです。
終末世界で"映え"を探す ~少女たちの、世界が滅んだ理由を探す旅~
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14422536
●あらすじ
ぼっちな少女の伏久那夕美は、明るくて人懐っこい少女の羽張灯里と共に、終末世界を旅することになった。
環境省のとある役人によると、この世界は何故か二百年後に滅んでいるらしい。そこで、タイムマシンの使用に適性があると判断された夕美と灯里は、バディを組んで二百年後にタイムトラベルし、世界が滅んだ理由を調査することになった。
調査の方法は至って単純。終末世界に存在する珍しいものを撮影し、それを現代に送信するだけだ。
更に送信された画像は、インスタなど有名なSNSにも投稿されることになり――。
「それって要するに、終末世界で"映え"を探すってこと!?」
有名インスタグラマーを目指していた灯里は、調査にやる気を出す。
そんな彼女に、内気な夕美も少しずつ引っ張られていく。
これは、世界の滅びを避けるために、二人の少女が終末世界で"映え"を探す物語。
《宣伝》
12/28に、最弱無能が玉座へ至る2巻が発売しました!
2巻もバリバリ加筆していますので、是非お手にとっていただければ幸いです!




