18「序列3位決定戦①」
午後二時二十分。
後十分でリリとの序列戦が始まる。俺は戦いの舞台である本校舎の二階へ向かった。今は休み時間であるため、教室から出た生徒たちで廊下がごった返している。すれ違う悪魔たちを一瞥しながら廊下を歩くと、リリの姿を見つけた。
「悪い、待たせたな」
「う、ううん……私も、今来たところだから」
デートの待ち合わせみたいなやり取りだが、これから行われるのは戦いである。
「その……け、今朝、一緒にいたメイドは、一緒じゃないのかしら?」
「ああ。他言無用の条件だったし、一人で来た」
「そ、そう。……よかった」
リリは安堵に胸を撫で下ろした。
「それより、本当にここで序列戦を始めるのか? 周りに部外者が沢山いるが……」
「だ、大丈夫。……それじゃあ早速、じょ、序列戦を始めるわよ」
「始めるって……」
場所を変えないと、大勢の生徒を巻き込んでしまいそうだ。
しかし、困惑する俺を他所に、リリは真っ直ぐ俺を見据える。
「あ、あの……ケイルは、私の能力を知っているの……?」
リリは今朝会った時と変わらず、おどおどした様子で訊いた。
「《魅了》、だよな。一時的に、誰かを操れるものだと聞いているが……」
「え、ええ。……ところで、その、この廊下……凄く人が多いと思わない?」
「ああ。それはさっきから、思って――」
そこで俺は、ふと気づいた。
リリの声量は小さい。周囲に他の悪魔たちがいると、耳を澄まさなければ聞こえないほどだ。しかし先程から、何故かリリの声が明瞭に聞こえていた。
いつの間にか――廊下にいる全ての生徒たちが、雑談を止めている。
痛いほどの沈黙の中、声を発しているのは俺とリリの二人だけだった。このような状況を作り出す方法があるとすれば――。
「――まさか」
冷や汗を垂らすと同時、周囲にいた悪魔たちが一斉に俺の方を向く。
油断した。ここにいる悪魔たちは、最初からリリに操られていたのだ。
「も、もう一度、言うわ。……じょ、序列戦を、始めるわね。……ふへへっ」
遠慮気味にリリが笑った直後。
辺りにいた悪魔たちが、一斉に俺へと襲い掛かった。




