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07「記憶を失う前は何を」


 序列戦が終わった後、俺はエレミーと共に演習場を去った。


「ケイル様! 序列五位、おめでとうございますっ!!」


 序列戦に勝利できたからか、エレミーはとても機嫌がいい。

 しかし俺は、全身に込み上がる違和感に複雑な気持ちだった。


「エレミー」


「はいっ! なんでしょうか!?」


 明るい表情でこちらの質問を待つエレミー。

 そんな彼女に、俺は訥々と尋ねた。


「もしかして……記憶を失う前の俺は、かなり強かったのか?」


 先程の、フランキス=パイモンとの序列戦を思い出す。

 あの男は決して弱くなかった。なにせ序列五位だ。あの男とライガットの間にある差は四人分しかない。


 そんな相手に俺は勝ってしまった。しかも結果だけ見れば、俺は無傷。圧勝と言っても過言ではない。


 もしかすると俺は、記憶を失う前まで、凄腕の傭兵か何かだったのかもしれない。それならあのフランキス=パイモンに圧勝したのも自然だ。そんな風に思ったが――。


「……うひっ」


 エレミーの口から変な声が漏れた


「うひっ、ひひひっ……! す、すみません! ケイル様が、物凄くキリッとした表情で訊くもんですから、ちょ、ちょっとツボに入りました……! うひひひひひっ!」


 随分と不気味な笑い声だ。

 笑いを堪えきれず目尻に涙を浮かべるエレミーに、俺は額に青筋を立てた。


「もういい。お前に訊いた俺が馬鹿だった」


「い、いえいえ、そんなことはないですよっ! というか、私以外にこんな質問したら……め、めっちゃ笑われますよ……っ!」


 まだ笑いが止まらないらしい。

 前々から思っていたが……このメイド、俺のことを馬鹿にしすぎではないだろうか。


「ええっと、ですね……記憶を失う前のケイル様は、確かに強かったと思います。私が知る限り、最低でも二回ほど街を救ってますね」


「街を!?」


 漸く笑いがおさまったかと思いきや、とんでもない爆弾発言をされた。


「街……というか、正確には領地ですかね」


「いや、どのみち凄いな……」


 記憶がないため実感できないが、街や領地を救うなんて簡単にできることではない。過去の俺は一体何者だったのだろうか。


「まあ、そんなわけですから、ケイル様はもうちょっと自信を持ってもいいんですよ?」


「そうか。……じゃあエレミーは、俺の実力を理解した上で、序列五位に挑戦させたんだな」


「あ、いえ。ぶっちゃけ普通に負けると思ってました。なので私、めっちゃ驚いています」


「……じゃあなんで挑戦させたんだよ」


「てへっ!」


 何が「てへっ!」だ。

 記憶はないが、ひとつだけ確かなことがある。多分、俺は以前からこのメイドに苦しめられていたのだろう。


「ま~要するに……ケイル様が、私の予想以上に強かったということですよ」


 そう呟くエレミーは、ほんの少しだけ深刻な表情をしているように見えた。

 だがすぐにその表情は、いつも通りの明るくて、ちょっとだけ意地悪な笑みに戻る。


「さあ、それではケイル様、そろそろ授業に出ましょう」


「……ああ」


 悪魔学校には学年という制度こそあるが、クラスという制度はない。生徒が学びたい科目を自ら選択し、好きなタイミングで受講しているらしい。但し授業の中には必修科目もあり、こちらは必ず受講して、試験で合格点を取らなくてはならない。取れなかった場合は留年だ。


 クラスが存在しないということは、担任の教師も存在しないということだ。そのため、生徒の出席日数について細かく管理している教師もいない。入学早々、いきなり午前中の授業を全てサボった俺たちだが、それを咎める者はいなかった。


 五限目と六限目の授業を適当に選んで受講した後、俺とエレミーは学校を去り、ヴィネ一族の屋敷へと帰った。


「本当は祝勝会といきたいところですが、明日も学校ですからね~。今日は早めにお休みすることをオススメいたします」


 夕食後、エレミーが言う。

 言われなくてもそうするつもりだ。


 別に楽しい学生生活を期待していたわけではないが、お世辞にも幸先が良いとは言えない。


 いや……逆か? 初日でいきなり序列五位になったのだから、かなり幸先が良いのかもしれない。俺にとっては完全に予想外の流れだが、ヴィネ一族の跡取りとして魔王を目指すという目的を考えると、最高のスタートを切れたと言える。


「でも……少しくらい、のんびりと過ごしたいな」


 ベッドに横たわりながら、そんなことを呟く。


 問題は俺の身体が今後も保つかという話だ。

 できれば無茶はしたくない。明日からは平穏に過ごそうと思い……俺は眠りについた。




 そして、その日の夜。

 俺は、夢を見た――――。


11/6

新作、始めました~~!!


迷宮殺しの後日譚 ~ダンジョンを攻略しすぎてギルドを追放された最強の探索者、引退してダンジョン教習所の教官になったら生徒たちから崇拝される。ダンジョン活性化につき戻ってこいと懇願されても今更遅い~


https://book1.adouzi.eu.org/n1579gp/


あらすじ

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 


「迷宮殺し。申し訳ないが、君が持つ探索者の資格を剥奪させてもらう」


 かつてダンジョンは、モンスターの巣として人々に恐れられていた。

 しかし近年、そこに眠る資源が重視され、人々はダンジョンと共存共栄を図ることになる。


 その結果、これまで無数のダンジョンを『完全攻略』によって破壊してきた、最強の探索者――《迷宮殺し》のレクトは、ダンジョン運営によって利益を得る貴族たちに切り捨てられ、探索者協会を追放されてしまった。


 現役を引退したレクトは、知人の紹介でダンジョン教習所の教官を務めることになる。

 腐っても仕方ないと思ったレクトは、これを機に正体を隠し、第二の人生を楽しむことにしたが……。


「なんで教習所の先生がこんなに強いんだ!?」


 生徒たちは最初こそ、若くして引退したレクトを見下していたが、いつの間にか崇拝するようになったり、


「アンタが引退したせいでダンジョンが活性化してるんですけど!?」

「ダンジョンと共存共栄とか無理に決まってんだろ!! 国の上層部は分かってない!!」


 現場をよく知る探索者たちからは、現役復帰を懇願されたりと、まだまだ平和には過ごせそうにない。


 探索者協会からの追放。

 それは最強の力を持つレクトを、かえって自由にしてしまった。


 貴族の陰謀。変化するダンジョン。

 自由となったレクトは、気まぐれに顔を出し、それらに影響を与えていく。


 これは、自分の役目はもう終えたと思い込んで平穏な日々を求める英雄が、無自覚のうちに世界へ大きな影響を与え続ける、なんちゃって後日譚。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 



本ページの下部にある紹介テキストがリンクになっていますので、

そちらからも作品へ移動できます!!

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