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03「入学式」

 赤く、禍々しい空を仰ぎ見る。

 魔界の空は磁場などの影響で青色ではない。太陽の光も鈍く、朝日を直視することができる。


 ――魔王、か。


 未だに実感は湧かないが、俺はヴィネ一族の跡取りだ。

 一族を救うためにも、魔王になれるなら……勿論、なりたいと思う。


「おっ、モチベーション高くなってますねぇ~。その調子ですよ、ケイル様」


「なんで分かるんだよ……」


「ぬっふっふ、これでも長い間、ケイル様に仕えていたメイドですからねぇ~。……大丈夫ですよ、ケイル様なら魔王になれますからっ!」


 からかうような笑みを浮かべて言うエレミー。

 しかし俺は、その言葉を聞いてチクリと胸に痛みを感じた。エレミーは今までもずっと、俺の身の回りの世話をしてくれていたらしい。けれど俺の頭にその記憶は残っていない。自分が酷く不誠実に思えた。


「エレミー。魔王になるための条件は、悪魔学校を主席で卒業することなんだよな?」


「はい!」


「どうやったら悪魔学校で主席になれるんだ?」


「それは、序列一位になることです!」


 エレミーは説明する。


「悪魔学校には、生徒の強さを表すための指標として序列という制度があります。序列一位とは即ち、学内最強の称号です。そして、序列一位の状態で卒業できれば、主席卒業とみなされます」


 主席卒業という条件は思ったよりもシンプルな仕組みらしい。

 しかし、純粋な強さを競い合うといった学校の制度は、いかにも悪魔族らしいと思った。悪魔たちにはそれぞれ強い個性と能力がある。それらを束ねる存在である魔王には、相応の強さが求められるのだろう。


「なお、序列は序列戦によって変動します。序列戦とは一対一の決闘……早い話が、序列を賭けたタイマンです。序列が上の方は、下の方からの挑戦および提示された条件を拒むことができないというルールがあります。日時だけは要相談となりますが」


「……つまり、自分より上の序列を持っている悪魔に序列戦を申し込み続ければいいわけか」


「その通りでございます!」


 エレミーが頷く。


「でも、卒業しなくちゃいけないってことは、最低でも三年は待たなくちゃいけないんだよな」


「そうですね。ただ、序列に学年は関係ありませんから、早いうちに上の序列を取得した方がいいと思いますよ。……どうせ魔王になるような悪魔は、他の追随を許さない圧倒的な実力を持っています。現在の魔王様も、二年生の一学期で序列一位になり、それから一度も序列を奪われることなく卒業したみたいです」


「ということは……およそ二年間も序列を守り通したのか」


「他人事じゃないですよ~? これからケイル様にも、そうしてもらわないと困るんですからねっ!」


 感心する俺に、エレミーは忠告する。


「というわけで――不肖このエレミー、ケイル様が魔王になるために、全力でサポートさせていただきますっ!!」


 どうやらエレミーは本気で俺を魔王にしたいらしい。

 気持ちは嬉しいが、話を聞く限りどうしても及び腰になってしまう。ただでさえ記憶を失っているせいで魔界の常識に疎いのだ。エレミーがいなかったら、俺は今頃右も左も分からず路頭に迷っていただろう。


「入学式は、こちらの校庭で行われるようですね」


 エレミーと一緒に校庭まで向かう。

 校庭に行くと、新入生である悪魔たちが大勢いた。


 談笑する彼らの姿を一瞥する。悪魔は他の種族と違って、見た目に多様性がある。角が生えている悪魔もいれば、羽や尾が生えている悪魔もいるし、目が三つ以上ある悪魔や、腕が四つもある悪魔もいた。


「見た目も色々だが……年齢も、色々だな」


「悪魔学校には年齢制限がありませんからね。各々、好きな時期に学校へ通っているんですよ。……まーそれは私たちも似たようなものですね」


 その通り。俺とエレミーも本来なら学校とは無縁の日々を送る筈だったが、必要が生じたため今日から通うことになったのだ。


 学校には俺だけでなくエレミーも通う。本人曰く「ケイル様だけだと何かと不安ですからね~」とのことだ。言い方が癪だったので認めたくはなかったが、正直、ありがたい。一人だと心細かっただろう。


『ただ今より、第62回悪魔学校入学式を行います』


 壇上に立つ教師が、入学式の開始を告げた。

 学校長、教頭の挨拶が行われ、生徒たちは無言でそれらを聞いていた。


『続いて、在校生挨拶』


 その一言と共に、壇上に男が現れる。

 次の瞬間、校庭に黄色い歓声が響いた。


 端正な顔立ちをした悪魔だった。獅子の如き金髪に、品がある銀色の角が特徴的だ。確かにあの見た目なら多くの女性を虜にできるだろう。しかし、耳を澄ませば女性だけでなく男性も雄叫びのようなものを上げていることに気づく。


「あれは……?」


「……あの方についても、忘れていらっしゃるんですね」


 顔を出すだけで多くの新入生を興奮させたあの悪魔について、俺はエレミーに訊いた。


「あの方は、現在の序列一位であるライガット=バアル様です」


 序列一位。

 つまり、あの男こそが現時点で学内最強の悪魔らしい。

 戦慄する俺の隣で、エレミーは続けて言った。


「ライガット様は――王の素質(・・・・)を持つと言われています」


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