01「プロローグ」
3章「悪魔編」スタートです!!!!
書籍版1巻もよろしくお願いいたします!!
続刊決定済みです!
不思議な夢だった。
身体が自由に動かない。しかし気分は悪くなく、寧ろ穏やかで、ふわふわと宙に浮いているような感覚だった。
森の中。馬車に揺られながら、俺たちはどこかに帰ろうとしていた。
しかし、その途中――何かがあった。
『――ケイル君!』
『ケイル!』
二人の少女が俺の名を呼ぶ。
背中に黒い羽を生やした少女と、頭に獣耳をはやした少女だった。
どうして彼女たちがそんなに焦っているのか、俺には全く分からない。
ただ何故か、とても懐かしい気持ちになった。
それは俺にとって、大切な――。
「……イル様」
耳元で誰かの呼ぶ声がする。
温かい。心地いい。眠気に抗えず、俺は開こうとした瞼を再び閉じた。
「……ル様……ケイル様っ!」
「うおっ」
ばさり、と布団を捲られる。
同時に窓から差し込んだ陽光が目元を照らした。眩しさのあまり驚きの声を漏らす。
仕方なく上半身を起こすと、ベッドの脇にはメイド服の小柄な少女が佇んでいた。
ツーサイドアップに纏められた少女の黒髪がふわりと風になびき、背丈に相応しくない豊かな胸部が静かに揺れる。その側頭部からは、二本の黒い角が生えていた。
「……まだ、眠い」
「寝ちゃ駄目ですよ~。まったく、こーんなに可愛いメイドさんに起こされているんですから、普通だったら泣きながら感謝するとこなんですけどね~」
「朝から面倒臭いギャグだな……」
頭が重たくなった気がした。
「まあ、それはともかく。これ以上のんびりしていると本当に遅刻してしまいますよ」
「遅刻……?」
今日は何か予定を入れていたっけか。
そんな風に考え、すぐに答えに辿り着いた。
「ああ、そうか。今日は……」
「ほらほら、早く着替えてください。着替えないなら私が脱がしますよ~?」
手際よく俺の着替えを用意したメイドが、ニヤリと嫌な笑みを浮かべていた。
ベッドから下りた俺はすぐに着替えを済まし、食堂の方へ向かう。
キッチンの方からいい香りがした。
既に朝食ができているらしい。キッチンから聞こえるメイドの鼻歌に耳を傾けながら、椅子に座る。
朝は起こされ、食事を用意され、いつの間にか家は掃除され、そして気がつけばスケジュールの管理までされている。このままでは堕落してしまうと危機感を抱く一方で、とても居心地が良いと感じる自分もいた。
このような、いたれりつくせりな生活を始めて半月が経過した。
いや――本当はもっと前から、俺たちはこんな生き方をしていたのかもしれない。
「エレミー、いつもありがとう」
この家で働くメイドの少女、エレミーに俺は感謝を伝えた。
「ど、どうしたんですか、急に?」
「いや……なんとなく、言いたかったから」
「べ、べつにおだてたって、何も出ませんよ! はい朝食ですっ!」
いつも以上に豪華な朝食が、目の前に配膳される。
今日は俺にとってもエレミーにとっても節目となる一日だ。そのため、気合が入ったのかもしれない。
朝食を全て平らげ、荷物を持った俺は、エレミーと共に家を出た。
「さあ、それでは参りましょうか!」
赤黒い空に禍々しい太陽が浮かぶ。
エレミーはまだ眠そうな俺の隣で、元気よく声を発した。
「――悪魔学校の入学式へ!!」




