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第七十六話

今別の連載にも手を掛けてまして、ファンタジーを書きたい熱でそっちにかかりきりとなっていました。

ちなみにタイトルは、

「たかが子爵嫡男に高貴な人たちがグイグイきて困る」

https://book1.adouzi.eu.org/n4269fv/1/


ラブコメ系の本作と違い、物語の進みが遅いのが、悩みどころですが、興味が有れば、見てやって下さい!

 夏休みが終わりに差し掛かろうかというとある日、浩也の家に理緒を招くべく、浩也は駅の改札にきていた。浩也が有里奈以外を家に招くのは稀で、朋樹も来たのは数回程度。理緒に至っては、来るのは初めてという事で、わざわざ駅まで迎えにきた格好だ。


 浩也が駅に着くと既に理緒は待機しており、やや緊張した面持ちの理緒に声を掛ける。


「理緒、待たせたか?」


 まあ待たせたと言っても、数分程度だと思ったが、そこは挨拶。理緒の方も浩也の顔を見た瞬間、笑みを見せて、近寄ってくる。


「ううん、私もさっき来たところ。それより今日は宜しくお願いします」


「まあ頑張るのは理緒だから、俺は手助けをするだけだ。取り敢えず行くか」


 そうして二人並んで、来た道を戻る。理緒は、やや緊張した面持ちに戻り、浩也に聞いてくる。


「今日って、浩也のお母さん、家にいるんだよね?」


「ああ、ばっちりご在宅だ。理緒が来る事も言ってあるから、楽しみにしてたぞ」


 そう言って浩也はニヤリとする。理緒は顔を強張らせ、渇いた声を漏らす。


「はは・・・・・・、なら粗相のない様にしないと」


「そんなに緊張する必要はないぞ。うちの母親は、普通のおばさんだ。ちょっと話好きだけどな」


「そんな事言っても、緊張はするのっ、あんたにも今度うちのお父さん合わせようか?」


「いや、それは難易度が違うだろ。謹んでお断り申し上げます」


 浩也にして見れば、当然だろう。男子高校生にとって、異性の父親など会いたくないランキングNO1だ。大体、彼女でもないのに、そんな難敵、勘弁してもらいたい。


「でも浩也、私がっていうか、私以外の女子でも、彼女にしたら、必然その両親に会う機会出てくるんだからねっ。大体浩也って、そう言うのキチンとしたい方でしょう?」


「グッ・・・・・・、なら彼女は有里奈一択だな。有里奈の両親なら最早息子同然。今更、気を使う必要が全くない」


「ちょっ、いくらなんでもそんな理由絶対認めないんだからねっ、ちゃんと相手を見て判断してよねっ」


 浩也が軽い冗談のつもりで言った事に、理緒が即切れする。浩也は、確かに冗談が過ぎたかと、理緒を宥めに掛かる。


「ははっ、まあ冗談だ。俺は大人受けはいい自信があるからな。別に、それが理由で誰かを選ぶことは無い。まあ、これまで相手を見てきて正直決められていない実情もあるんだけどな」


「フン、まあそこらへんはちゃんと信用しているから大丈夫よ。伊達に付き合い長い訳じゃないんだから」


 理緒はそう言って、少しだけ不服そうな顔を見せる。まあ思えば、理緒との付き合いも長い。お互いの性格も良く判っているってものだ。


「まあそうだな。それにしても理緒や有里奈は付き合い長い分、まだわかるんだが、陽子や飛鳥、あ、いや飛鳥は別か、あいつも古馴染みだし、そう考えると陽子だけが別か」


「何の話?」


「いや、理緒や有里奈、飛鳥は付き合いが長い分、そうなのかと思う部分もあるんだけど、陽子は実質今年、会ってから、好意を持ってくれたのかと思ってな」


 そこで理緒も何を思っているのかを理解して、感想を述べる。


「そうね、少なくても中学の時はそういう好意は無かったと思うし」


「だろ?正直陽子に何かしたわけでもないし、まあ、好感を持って接していたのは間違いないけど、好かれるとまでは、全く思っていなかったからな」


 浩也は、有里奈と理緒は長い時間接してきて好意を持たれていると思っている。飛鳥は一目惚れに近いんじゃないだろうか。ただ陽子は、一目惚れとかではなさそうだし、かといって、理緒たちのような長い期間で育んできた思いでもない。何が彼女をに好意を持たせたのか、さっぱりわからなかった。


「ふーん、そう?私はやっぱりなって思ったけど」


「へっ?そうか?全く意味わからん」


「まあ、浩也はそうかもね。兎も角鈍いし。天然タラシだし。それでいて女子の扱い上手いし。正に女の敵ねっ」


「おい、こら、それただ言いたいだけじゃないのか?」


 思わず理緒から飛び出した罵倒に、浩也はジト目でツッコミを入れる。理緒はそんな浩也の目線を気にも止めず、フッと柔らかい笑みを零し、説明を始める。


「まず第一に、浩也って、人に対して壁を作る様なところがあるでしょう?人見知りっていうか。大抵の異性は、その人見知りの壁で敬遠しちゃうんだけど、陽子ってその壁を気にしないでしょ?壁の中の素の浩也を最初から見抜いていて、それが出てくるまで気にせず話かけるっていうか。私でさえ素の浩也を出すのに、結構苦労したのに、陽子ってば、中学時代から壁を気にせず、素の浩也を引き出していたのよね。で、その時は凄いとは思っていたけど、高校も違うし、陽子もそんな素振りが無かったから、安心していたんだけど、今年になって、接点が増えたでしょ?素の浩也と触れ合う機会が増えたんだもん、そりゃ、好きにもなるわよ」


「ん?なんで素の俺だと好きになるんだ?そんなの普段と変わらないだろ?」


「ブブーッ、浩也0点。バイトを始めたあたりからマシになったけど、浩也のベースは仏頂面よ。あんま笑わないし、愛想も悪いから。まあ、興味があっても引くわね」


 まあ愛想は無いのは、確かだから納得はする。まあ人見知りなのだ。そこは甘んじて受け入れよう。じゃあ、素の自分とはというと、さっぱりわからない。それが惚れられる要素になる意味が分からない。


「まあ、結論陽子は、変わっているって事だな。うん、そうしよう」


「浩也、あんた考える事、放棄したでしょ。まあその方がいいけどね」


 理緒は後半部分、あえて小声で、聞こえないようにする。浩也は無自覚でいいのだ。無自覚ならライバルが早々増える事はないし、浩也を狙う相手も、増えない。まあここは他のメンバーも同意だろう。


 だから、理緒はそれ以上に踏み込まず、別の話題を提供して、浩也の家までの道のり、別の話題で話の花をさかすのだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 そして浩也の自宅に到着。理緒は浩也の母への挨拶をそこそこに、浩也の部屋へと通される。


 理緒には、弟がいるのだが、その空間は弟の部屋とは少し違い、キチンと整理されている。確かに男子の部屋っぽい、物の少ない質素な部屋なのだが、逆に男の子の部屋なのだと意識させられ、ドキドキする。


 浩也は飲み物を取りに下に行ってしまった。今この部屋には、理緒一人。ここは定番の家捜しでもするべきかと思い悩んでいるところで、浩也が飲み物片手に戻ってくる。


「なあ理緒、その泳いだ手は何だ?」


「ふぇ、いや、ちょっと浩也の趣味を探ろうかと?」


「ああちなみに俺の趣味が仮に人妻熟女とかだったらどうする?」


「ひっ浩也!?駄目よ、そんな不倫なんてっ!?」


「そんなわけあるかっ」


 思わずノリ突っ込みをかます浩也。自分で言っておいてあれだが、流石に人妻熟女はない。そんな浩也に渇いた声を理緒が漏らす。


「はは、ですよね、って言うか言ったの浩也じゃん!私悪くないじゃんっ!」


「ハハハッ、そこに気付くの遅かったな。って言うか、そんな事より、宿題出せ、宿題」


「むむっ、なんか納得いかないけど」


 そう言いつつも、理緒は素直に宿題をテーブルの上に並べる。理数系以外は独力で終わらせているので、今日持ってきているのは、その理数系の宿題。


「おっ、思ったより頑張ってるじゃん。これなら、思ったより早く終わるかな」


「本当!なら終わったら、浩也のアルバム見せてね、約束ね!」


「アルバム?まあ終わったなら、それぐらいいいが。別に面白いもんじゃ無いぞ?」


「フフ〜ン、面白いかどうかは、私が決めます。よーし、頑張るぞー!」


 どうやら今日は思ったより安いご褒美だ。浩也は、まあそれでやる気を出すなら、良いかと理緒への先生役に没頭するのであった。


そして時間は夕暮れ時、宿題も一段落を迎える。


「よし、まあこんなもんだろう。後は復習をしっかりすれば、次の中間はもう少しまともな点を取れるんじゃねえか」


「フフフッ、浩也、ありがとう。私もそんな気がしてきた」


 理緒も勉強に手応えがあったのか、柔らかい笑みを見せる。そしてそんな表情を今度は無邪気なものに変えて、おねだりを始める。


「ではでは、浩也くん、例のものを出してくれるかな?」


「チッ、覚えていたか。あー、アルバムな、アルバムっと」


 浩也はそう言って、自分の本棚を探し始める。


「うーんと、これが子供の頃の写真、これが小学校の卒業アルバム、こっちが中学の時のって、これはいいか?」


「中学のアルバムは私も持ってるけど、それも見ようよ。なんか懐かしいし」


 理緒はそう言って、嬉しそうな笑みを浮かべる。確かに中学のアルバムなんて、卒業してから、一度も開いた事がない。なら良いかとばかりに、それもテーブルの上に並べる。すると理緒は早速とばかりに、幼少の頃のアルバムから開き始める。


「うわっ、浩也、ちっさい。わー可愛い。って、これ有里奈さん!?何このお人形さんみたいな子。ヤバ、これ絶対攫われちゃう子だよ!?」


 ややテンション高めの理緒に軽く引きつつ、理緒に相槌を打つ。


「ああ、有里奈な。まあ小さい頃からあんなだな。あっ、こら勝手に写真抜くなっ」


「ええ、良いじゃん、1枚くらい。リトル浩也、我が家の家宝にするよ。あーっ、浩也、これどう言う事!?チュー、チューしてるんですけどっ!?」


 勝手に写真を撮ろうとした次のページに、有里奈と浩也のチュー写真が現れる。あっ、すっかり忘れてた。そう言えばそんな写真があったと後悔するまもなく、理緒の追及が止まらない。


「ちょっ、浩也、ファーストキス、ファーストキスなの?て言うか、もしかして四六時中チュッチュしてるんじゃないでしょうねっ、どうなの、ねえ、どうなのよっ」


「だー、待て待て、それは親たちに無理矢理やらされただけだっ。大体なんだ四六時中って、子供の頃のキスが無効なら、ファーストキスなんてした事ねーっ」


 浩也は何自分のキス体験を赤裸々に語んなきゃいけないんだと思いつつも、弁明を優先する。厳密には、小六の時に、酔っ払らったロケットおっぱいに、強引にキスされたが、うん、あれも一応子供だ。無効、無効としらを切る。


「むー、それ本当?信じて良い?」


「当たりまえだ。まあ子供のキスが有効なら、ファーストキスは有里奈か、母親か、由貴姉の誰かだけどな。まあそんなの大抵が身内だろ」


 まあかく云う理緒も子供の頃に弟にチューした写真はあったりする。いわゆる黒歴史だ。親の手前、燃やす事も出来ない恥である。そう考えると、やはり子供の頃は無効という結論に至るだろう。


「じゃあ、無効で。世間にもファーストキスはまだという事で」


「お前はホント、何と競っているんだ」


 呆れる浩也を他所に、これは女子にとって重要な事なの!と内心思う理緒であった。




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