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第七十一話

すいません、大分間が空きました。ここ最近、他のなろう作品でファンタジー系の作品を読んでいて、そちらのアイデアが頭に浮かび、中々、本作品カテゴリへのモチベーションが上がらず、作品に向き合えませんでした。次回はもう少し間を開けないで、投稿できればと思っております。ちなみに有里奈回の予定です。

浩也と飛鳥はカフェを出た後、商業施設内の店舗をウインドウショッピングで練り歩く。時折、お互いの興味のある店に入っては、それぞれに感想を言い合い、特に気に入ったものがあれば、商品を手に取って買い求めたり、ごくごく普通のデートの時間を過ごす。飛鳥は終始楽しげで、浩也もそんな飛鳥に釣られてか楽しい時間を過ごす。正直浩也としては、このデート自体、最初そんなに乗り気ではなかった。勿論、自分に好意を寄せてくれる飛鳥に対し、可愛らしく思う部分もあるのだが、これまでの接点が決して多くない飛鳥相手だと、やや気後れしてしまう部分もあったのだ。ただ飛鳥はそんな浩也の心持ちも理解した上で、それでも楽しげに一緒にいる事を喜んでいる。そんな飛鳥だからこそ、浩也もまた気後れしてた事も忘れて、一緒にいる事を楽しめていた。


「なあ飛鳥、お前って正直モテるだろ?」


「ふぇ、な、なんですか?突然」


浩也と飛鳥は商業施設をでて、今は海が見える見晴らしのいい公園をのんびりと歩いている。公園に入ってから会話らしい会話は無かったが、二人の間にのんびりとした空気が流れ、飛鳥はその空気を嬉しげに楽しんでいた最中に、浩也に突然そんな事を言われて、思わずびっくりする。


「ああ、いや、こうして店の中とかここでもそうだけど、手を繋いで歩いていると、なんかやたら視線を感じるんだよな。特に男子の目線を感じるというか」


「そうですか?あまりその視線とかはわからないですけど、まあ男子から告白とかなら、偶にされたりもしますよ」


飛鳥はそう言って、あっさりと肯定する。事実、高校に入ってから、既に3人の男子から告白された。そのうち1人は浩也も知っている男子で、中学時代サッカー部で浩也の後輩、自分とは同級生の男子だったりする。


「一学期で既に告白されているなんて、なんで彼氏作らないんだ?」


「むー、浩也先輩がそれを言います?理由はわかってますよね?」


「ああ、いや、すまん。そういうつもりじゃなくて、なんで俺なんだって話で。そもそも飛鳥とは部活で先輩、後輩っていうのはわかるが、それほど接点が多かったわけじゃないだろ?」


浩也は流石にデリカシーがなかったと思い、慌てて弁明する。実際に聞きたかった事はそういう事ではなく、なぜ自分なんだという事が聞きたかったのだ。幼馴染の有里奈はまあわかる、同級生の理緒や陽子も接点はそれなりに多い。そういう意味では、飛鳥は一番接点が少なく、憧れ程度だったら、他の男子に気が向いてもおかしくはないのではと思ったのだ。


「ああ、そう言う事ですか。まず浩也先輩は私の事を知らなすぎですね。うーん、そもそも私と浩也先輩が一番最初に会ったのって、いつだか知ってますか?」


「ん?中学に入ってからだろ?」


「ぶっぶー。違います。私が浩也先輩と初めて会ったのは私が小学4年生、浩也先輩が5年生の時です」


そう言って飛鳥は楽しげに浩也に対し、不正解を言い渡す。


「小学生の時?ん、飛鳥にあったっけ?」


対する浩也は、不正解を言い渡された後も首をかしげて、小学生の頃を思い起す。ただ正直、その時分は学校とサッカー以外、誰かと遊ぶといっても有里奈以外は男子しか思い浮かばず、女子の顔など一人も思い浮かばなかった。


「フフフッ、やっぱりわかりませんよね。ちなみに一緒に遊んだ事もあるんですよ。2回くらい」


「はっ?マジか?全然思い出せないんだけど」


浩也にしてみれば、それは結構衝撃的な事実で、さっぱり思い出せない自分の記憶力に思わず唖然とする。記憶力は別に悪い方ではないと自負してただけに尚更だ。ただそんな浩也を見て、飛鳥はやはり楽しげに、ドッキリが成功して喜んだ顔をする。


「そうですね。その当時の私は今見たいに全然、女子っぽくなかったですし、浩也先輩が気付かないのもしょうがないと思いますよ。私、実は小学校の6年生までサッカーをやっていたんです。それこそ女子チームじゃなくて、男子の方のチームで」


「ん?俺と同じサッカーチームじゃないよな?俺が入っていたクラブは男女は別だったし」


「はい、違うチームです。私が入っていたチームは人数も少なくて、男女でわかれるほどの人数もいなかったので、混合チームだったんです。ただ地区の大会の時に浩也先輩のチームと対戦したこともありましたし、そのあと帰りの方向が一緒だったメンバーで公園で遊んだりしました。だから私と先輩の出会いは小学生まで遡るんですよ」


それならばなんとなくだが、合点がいく。確かに小学生位だと余り接点が多くなくても、なんとなくその場にいれば、一緒に遊んだりなんかは良くあった。特にサッカークラブでは小学校もまちまちでクラブも複数存在したので、違うクラブの小学校が同じメンバーと帰りがけにつるんで遊びに行った記憶はある。


「じゃあその帰り道の時に飛鳥もメンバーにいたって事か?うーん、全然気が付かなかったな」


「はい、多分浩也先輩、私の事を女子と認識してなかったんじゃないですかね。普通に苗字で呼ばれてましたし。それで中学に入って、女子マネになった時に気付かれるかと思ったんですけど、今度は女子の恰好だったって事で全く気が付かれませんでしたし」


飛鳥はそう言葉を返して、楽しそうにその当時を振り返る。浩也は少し申し訳ない気持ちになりつつも、話を続ける。


「そうだな、せめてユニホーム姿とかだったら、気が付いたかもしれないけど、小学生時分、女子と遊んだなんて記憶、あんま無いからな。そう言う意味じゃ、俺だと有里奈位か、女子と遊んだ記憶って」


「ふふふっ、でも実は私とも遊んだ事があるのです。私にとって小学生の頃の浩也先輩は憧れの選手だったんですよ。その当時から、サッカーすごく上手で、シュートもバンバン決めちゃうし。藤田先輩も有名選手でしたけど、浩也先輩も有名でしたからね」


「うっ、それを言われると少し申し訳ないな。高校に入って、すっぱり辞めちゃったからな、サッカー」


浩也はそう言って頭をかく。浩也自身、今でもサッカーは好きだし、草サッカーに誘われれば、喜んでついていく。朋樹にも誘われたし、高校に入ってからも続けようと思えば、続けられたのだがあえてしなかったのだ。


「そうそう、それも前から聞きたかったんですけど、なんでサッカー部に入らなかったんですか?勿論、プロ云々とかは無いのかもしれないですが、藤田先輩とのコンビなら、結構いいところまで行けると思ったんですけど。だから私も最初にサッカー部に見に行ったんですし」


「うーん、まあ正直サッカーは中学までかなって思っていたところがあったのと、その時間を他の事にも使いたいなと思っていたのと両方かな。今、放課後はバイトに勤しんでいるのも、その一つで、色んなものにチャレンジしてみたいって言うのが、正直なところだな」


浩也はそう言って、少し肩を竦める。確かにサッカーは好きだが、趣味で十分で、それで飯が食えるわけでもない。なら趣味に費やす時間をもっといろんな事に使ってもいいのではと考えたのだ。実際、バイトを始める前は、高校生活に慣れる部分や惰性もあり、中々いろんなものに手を出す機会はなかったが、今こうしてバイトを始め、海の家もそうだが、色々な機会に触れる事で、一層視野は広がった気がする。だから正直、由貴姉のところでのバイトも海の家も浩也にしてみれば、すごくありがたい事だった。


「そういうところが、浩也先輩の魅力的な所ですね。同級生の男子で、そんな事考えている人、あんまりいないと思います。どっちかって言うと、今が楽しければいい的な感じで。サッカーの時でも、普段の何気ないときでも、やっぱ、浩也先輩は自分をしっかり持っていて、そういうところに私は憧れちゃうんだと思います」


「うーん、それって、ただ我儘だったり、マイペースだったりって事じゃないのか?まあ俺B型だしな」


「ふふふっ、浩也先輩って、本当にB型気質ですよね。だから私や陽子さんや、井上先輩や有里奈先輩も振り回されちゃうんです」


そう言って飛鳥は楽しげに笑う。結局、浩也は自分の中で腑に落ちるまで、納得しないのだ。だから、私たちは積極的に好意を示すだけで、最終的に浩也が誰を好きになるかは、浩也次第といった形になる。


「まて、それは少し人聞きが悪いぞ。俺は別に振り回しているつもりはないからな。一応、全員一度は振った事になっているんだし」


「でも、誰も諦めてないんですよね。むしろ井上先輩とか有里奈先輩とかは、なんか積極的になっているっぽいですし。陽子さんは、浩也先輩と同じで、マイペースっぽいですけど」


「ははは、確かに陽子はあんまりブレないな。そういう意味では、陽子が一番俺に似てるかもしれない。飛鳥はどっちかっていうと有里奈よりかな。有里奈は少し抜けているところがあるけど、飛鳥はその分しっかりしている感じで。まあ理緒と張り合う位だし、芯は強そうな感じはあるけど」


浩也はそう言って、それぞれの感想をまるで他人事のように言う。飛鳥はそれに少しだけ、むっとして浩也の当時者意識を煽る。もっと自分事にしてもらわないと、いつまでたっても答えがでない。急かす気はないが、もっと夢中にはなってもらいたい。乙女心は複雑なのだ。


「浩也先輩、客観的な感想も大事ですが、そもそも浩也先輩の女子の好みってどういう人が好みなんですか?ほら、年上がいいとか、年下がいいとか、性格とか外見とか、あとスタイルとか?」


「うーん、それって考えても意味がないって言うのが、ここ最近の至った結論だな。かわいいでも美人でも、スレンダーでもふくよかでも、年上、年下、結局、それって好きになる要素であっても、好きになる理由じゃないだろ?飛鳥でいえば、可愛いし、スタイルもいいし、性格だってしっかりしてるし、要素としては付き合うのに十分だけど、それをいうなら他の3人も同じ位の違った魅力があるしな。だから俺は困るんだ。俺の傍に3人がいなくて、飛鳥だけ俺に告白してきたら、多分俺は飛鳥と付き合ってたと思うぞ。断る理由がないからな。ただ今は断る理由がある。まあ俺が優柔不断なだけかもしれないけど、誰とずっと一緒にいたいかは、まだ結論が出ないな」


浩也はそうしゃべった後、少し長々話すぎたかと思い、飛鳥の顔を見ると何やら飛鳥は顔を赤くして、少しモジモジした様子を見せる。浩也がちゃんと自分も見てくれて、本心で可愛いといわれると、流石にテレるのだ。


「浩也先輩、ふ、不意打ちは卑怯です。そんなつ、付き合ってもいいなんて言われたら、て、嬉しくなっちゃうじゃないですかっ」


「ははっ、まあそれは俺の本心だからな。飛鳥は可愛いし、魅力的な女子だと思う。本当、俺なんかには勿体ない位だと思うしな」


浩也はそう言って、テレる飛鳥を宥めるように、頭を優しくなでる。飛鳥は顔を一層赤くして、それでもそうしてもらう事が嬉しすぎて、思わず憎まれ口を叩く。


「浩也先輩の女たらし。そんな風にされたら、もっと好きになっちゃうじゃないですか」


「ああ、女子の頭を気安く撫でるのは、ダメなんだっけ?なんか有里奈がそんな事を言ってたな」


「それって有里奈先輩、私は良いけどとか言ってませんでした?」


「ん?良くわかるな、私は幼馴染だからいいけどとか言ってたな」


「くっ、流石は有里奈先輩、自分の立場を最大限有効活用している」


飛鳥はそう言って、幸せそうに撫でられながらも、内心でライバルが強敵過ぎるので、もっと頑張らねばなどと静かに闘志を燃やすのだった。


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