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第六十三話

書き上がったので、あげちゃいます。土日は多分1話続きをあげるくらいになると思います。ライバルキャラ候補に頑張ってもらいたいのですが、そもそも2人が靡く気配を見せないので、話を盛り上げるのに苦戦中です。

一方、浩也達のんびり組ではない、体育会系組は、難度の高いアスレチックをこなして楽しんでいた。難度の高いアスレチックは、とにかく高度感があり、高さ10m以上の吊り橋途中で揺らされて、足がすくんで動けなくなるものや、同じく10m以上の高さのジップラインに一歩を踏み出せなくなる奴もいて、そのビビる姿に笑ったり、仕返しされてビビったりなど、可笑しくも和気藹々に盛り上がる。


「いや〜、安藤君、ビビりすぎ。いや〜、笑った」


そう言って笑い倒した理緒が、ようやくその笑いが収まった事で、笑顔を見せて話かける。話かけられた佳樹の方は、憮然とした表情で文句を言う。


「いや、流石に心の準備中に後ろから押すのは無しだろっ、死ぬかと思った」


「確かに佳樹、ビビりすぎ〜」


そして2人の会話を聞きつけ、理緒に同調する修二。そんな修二をジロリと睨みながら、佳樹は挑発をする。


「ほほう、ならお二人さん、そこの吊り橋中央で1分間声を上げずに耐えられたら、ジュースを奢ろうじゃないか。ああ、怖いって言うなら、全然、構わんぞ。ただビビっていると思うだけだからな」


そう言って、佳樹はニヤリと笑みをこぼす。勿論、明白な罠なのだが、修二はここぞとばかりにその挑発に乗ってくる。


「ふん、良いじゃないか、揺れるとわかっているのなら、声ぐらい耐えられる。井上、この挑発受けようぜ!」


修二の目論見は単純だ。吊り橋だけに吊り橋効果を狙って、慌てふためく理緒の側で、彼女を支える頼れる男を演出したかったのだ。ただそんな修二の思惑とは裏腹に理緒の回答はあっさりとしたものだった。


「は?イヤよ、そんなの。だいたい女子に何を求めてるの?普通に罠なのに、のるわけないじゃん」


「うっ、ですよねー」


するとその回答を予想していた佳樹は、慌てずターゲットを修二に絞る。


「まあ井上は女子だから、降りるとは思っていた。さて修二君、会場中央へ、あ、井上は反対側から揺らす作業をお願いするよ」


すると理緒はニコニコ顔で反対側に渡り、修二は顔を痙攣らせる。


「あれ、井上さん、いや井上様、これはどういう?」


「さあ、近藤君、男らしいところ、見せてもらいましょう!」


理緒が悪びれもせずにそう宣言すると、修二は渋々、吊り橋の中央へ。するとものの30秒も立たないうちに波打つつり橋の上で、修二の絶叫が響き渡る。側から見ていた朋樹達は、あいつら何やっているんだとばかりに、呆れた視線を送るのだった。


そして双方のグループが遊び疲れたタイミングで、再びメンバーは合流する。ちなみに遊び疲れたまいは、現在、お昼寝中。浩也はのんびりとロッジにあるカフェでアイスコーヒーを飲んでいる。ちなみに今は理緒が浩也の隣におり、他のメンバーはお土産コーナーでワイワイやっている。


「浩也はお土産見なくていいの?」


「まあ明日も見る機会があるだろうから、その時でいいかと思ってな。まあ、バイト先に置いてくるだけだから、最悪、駅で買ってもいいし」


すると理緒は怪訝な顔をして、質問を重ねる。


「あれ?有里奈さんとか、飛鳥とかには買わなくていいの?」


「有里奈と飛鳥?いや、別に買わなくてもいいだろう。どっちみち、個別に遊びに行くし」


ガスッ


「イテッ」


「浩也の女ったらし」


事実だけを並べれば、そうなるのだが、責められるいわれがないのも事実なのだがと思いつつ、一応、理緒に弁明を試みる。


「どっちも前からの約束だ。特に飛鳥は、一度くらい付き合ってやらないと、可哀想だろう」


「ふーんだ。人の気も知らないで。大体浩也は女子に甘すぎるのよ」


理緒は不満気な表情を隠さず、浩也に文句を言う。ちなみに浩也的に一番甘えられているのは、理緒だと思っているので、少し意地悪を言ってみる。


「なら、理緒には厳しくするか」


ガスッ


「イテッ」


再び浩也は理緒のローキックを食らう。どうやらその意地悪は不服だったらしい。


「駄目よ。贔屓は。そこはみんな平等よ。って言う事で、私とも遊びに行ってね。勿論、2人きりでね。」


「いや、理緒はうちに来るだろう。残念ながらもう夏休みは予定が空いてない」


その実、浩也の予定は、バイトを削れば空けられない事もないが、シフト調整やらが面倒くさいので、極力避けたかった。


「むっ、それはそれよ。大体それってデートじゃなくて、勉強じゃない。百歩譲って、夏休みは我慢してあげるけど、9月の週末でどっか空けてもらうから」


「はあ、はいはい。まあ9月ならいいよ。いや、これ本当に早く彼女を作らないと、身がもたないぞ」


浩也は仕方なしに、溜息を吐きつつ理緒に同意する。正直、このままだと、毎週末、どこかに出かけなければならなくなる。浩也は軽く戦慄を覚えつつ、隣の理緒を見る。


理緒の最大の魅力は、その明るさだ。浩也はその明るさに影が刺さないよう、これまで気を使ってた部分もあって、正直、悲しいとか辛いとかの表情をさせるのに弱かった。勿論、理緒が意図的にそういう表情をすることはないので、余計にこたえる。だから自分がもし理緒と付き合うとその明るさを守ることが出来るのかななどと思い、つい理緒を見入っていると、理緒がニコリと笑って浩也に言う。


「別に私が彼女で良いじゃん。私は浩也が彼氏なのがいいの。ちゃんと覚えておいてね」


「わかってるよ。まあそう簡単に答えが出れば、苦労はしない」


「シシシッ、知ってるーっ!」


憮然とした表情になる浩也を尻目に、理緒は無邪気に微笑んだ。理緒もわかってはいる。別に浩也を困らせたいわけでも、焦らせたいわけでもない。真面目な浩也が、適当に決める訳がないのだ。だからこそ、その答えが出た時は、次の機会は訪れない。良い結果ならその方が良い。でも悪い結果なら、この恋は終わりを告げる。だからついつい甘えてしまう。でもきっとこれで良いのだ。理緒が浩也に対して出来る1番のアピール方法だと思うから、だから理緒は無邪気に微笑むのだった。


そして夕方、時間も頃合いになったところで、夕食の準備に入る。男子は飯ごうでのご飯炊き、バーベキューの種作りを担当し、女子は、カレー作りとサラダなどの副菜を用意する。ちなみに今回唯一の大人である陽子の姉の京子は、準備には参加していない。あくまで高校生達だけで、やり遂げる事が目的なので、手伝いは遠慮してもらった格好で、今は料理場近くの椅子でビール片手にのんびりしている。


「なあ陽子、京子さんってお酒強いのか?」


酒乱にトラウマにある浩也は警戒心を滲ませながら、陽子に聞く。遠目で見ている限りでは、顔も赤くなく、さっきまでと変わった素ぶりを見せていない。


「お姉ちゃん?多分、お酒は強いわよ。たまにお父さんと晩酌してるけど、先に潰れるのは、いつもお父さんで、お姉ちゃんが介抱してるし」


「なら安心だな。酒乱とかだったら、大変だ。でも大人ってあんな不味いもん、よく飲めるよな」


そう言って浩也が安心した表情を見せると、朋樹が苦笑いをしながら、突っ込みを入れる。


「って言うか、浩也お前、酒飲んだ事あんの?」


「ん、ああ、毎年夏に有里奈のところの家族とうちで宴会をやるんだけど、その時にノリでな。まあコップ一杯のビールを飲んだだけだから、まあ時効だろう」


「いや、全然時効じゃないだろ、それ。とは言え、正月とかなんか飲まされそうになる機会はあるけどな」


一応、浩也の家族は比較的酒に強い家系らしく、浩也自身は酔っ払ったり、気持ち悪くなったりもしなかったのだが、勿論、高校生なので、薦められても断っている。ちなみに有里奈の家系は余り酒に強くなく、顔が直ぐに赤くなるというのはここだけの話である。


「私もお酒は一口だけ口につけたことあるけど、余り美味しいとは思わなかったな」


ちなみに陽子がお酒を口につけたのは、姉の結婚式の時であり、神前の為、お神酒を口につけただけだったが、その味は今でも余りいいものだとは思わない。


「まあ大学に入って、20歳になれば、いやでも飲む機会はあるだろうから、それまでは遠慮したいな」


浩也達はそんな事を話しながらも、手は動かしており、夕食の準備は程なくして完了し、そして晩餐が始まる。


「うおー、カレー超上手い、やばい、止まらない」


「バーベキューも美味しいよ」


「とうもろこしもーっ」


美波の作ったカレーは、雄二が作ったオムライス同様、どこか家庭の味のものとは違った。所謂、お店の味だった。聞けば、美波の家の店で使っているスパイスを利用しているらしく、辛さのほかにコクも感じさせる。間違いなく美味しいカレーだった。ちなみにまいには辛さのない甘いカレーと焼きとうもろこしやウインナーが用意されている。


「やっぱ、美波は料理上手だな。嫁にしたら間違いなく喜ばれるぞ」


「うん、俺も美波と結婚したい」


浩也が素直に美波を褒めれば、佳樹がドサクサにまぎれて求婚をする。それに美波にはあしらい慣れているようで、あっさりとかわす。


「賞賛してくれるのは、嬉しいから、ありがとう。でも求婚はいらない。私はむしろ彼氏が欲しい」


「じゃあ、俺と付き合ってくれ」


すかさずへこたれない佳樹が告白を繰り出す。がしかしそれもバッサリときる。美波にしてみれば、店に来るおっちゃん達レベルの会話なので、最早どうでも良かった。


「ごめんなさい、タイプじゃないので。っていうかカレー食べながら告白とかって最低じゃない?」


「はい、すいません。調子に乗りました。ただカレーは美味しいです。ご馳走様です」


佳樹は秒速で謝罪をし、再びカレーを絶賛する。結局そこまでの寸劇を見たところで、浩也が質問する。


「で、美波の好みとしては、このメンバーだったら誰なんだ?やっぱ朋樹か?」


「ふぇ、い、いや突然そんな話振られても困るんだけど。ね、ねえ、理緒」


浩也の突っ込みに思わずたじろぐ、美波が、隣に座る理緒に助けを求める。


「えー、私は別に困らないけど。ねー浩也」


「おーい、まいちゃん、こっちのウインナーも食べるか」


したり顔で浩也に目を向ける理緒の視線を完全に無視し、浩也はまいに話しを振ってやり過ごそうとする。しかしそれに食いつきを見せたのが、修二。修二は、理緒に対して、声をかける。


「い、井上はこのメンバーだったら、誰が好みなんだ?」


「えー、私?私だったらー」


理緒はそう言うと、男子メンバー全員の顔を眺めながら、最後に浩也のほうへと目を向ける。ちなみに陽子、朋樹、春香は結果を知っているので、思わず苦笑いだ。ちなみに他のメンバー、特に男子陣は心なしか、緊張した面持ちになる。


「浩也一択ね。っていうか聞くまでもないでしょ」


修二は妬ましそうな目線を浩也に送るが、心の中でやっぱりかと思う自分もおり、複雑な表情になる。ちなみに美波や優花は納得顔だ。ただそこで修二が閃く。ならば、その浩也が誰が好みなのかをはっきりさせれば、自分にもチャンスの目が出てくるかもしれないと。


「へー、っていうかやっぱりそうくるか。さてここで指名された高城浩也君、君ならここのメンバーの中で誰が好みなのかな、ああ、ちなみに拒否権はないよ。これは、全員に後で答えてもらうから」


すると今度は浩也が苦々しい表情を見せる。ちなみに理緒も陽子も表向き関心無さそうな表情をしているが、その目は浩也を追っている。春香は1人苦笑しているが、何気に美波も優花も興味深々である。


「うーん、そうだなー。このメンバーで一番の好みかー」


「おうおう、さー誰が好みだ」


「ならまいちゃんだな。ぶっちゃけ可愛らしさなら、ナンバーワンだ」


「なっ、お前それ、ずりぃっ」


「いいや、このメンバーという事なら、問題ないだろう。それとも何か、修二はまいちゃんが可愛くないと?」


「くっ」


浩也の言い分に思わず修二が、悔しげな表情を見せる。理緒と陽子はどこかホッとした表情を見せ、優花と美波は複雑な表情を見せる。突っ込みを入れるべきか、後の事を考えて、それに乗るかを考えているんだろう。ちなみに朋樹と春香は大爆笑だ。浩也はそんな2人を見て、後で必ずシメると心の中で誓いつつも、今度はニヤリとして、修二を見やる。


「さーて、修二君、これはみんな答えてくれるって話だよな。ああ、まいちゃんを選んだ俺をずるいと言ってたお前だ。まさかまいちゃんを選ぶことはないと思うが、一体、誰が好みなのかな~」


「いや、浩也君、そう言うことは、心に秘めた方が」


「却下だな、なあ理緒」


「そうね、却下ね」


既に答えた2人はそこで息を合わせて、修二を問い詰める。結局修二は平身低頭で謝ることで、何とか名前を挙げる事を許してもらうのだった。


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