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第五十八話

のんびりモード継続。次回は夏祭り!

その後浩也達は色々な店を見てまわり、気付くと日も翳って夕焼け空になっていた。浩也達はそのままショッピングモールをでて、近くの公園まで行き、途中売店で買ったアイスクリームをベンチで頬張っている。


「ああ、結構一杯歩いたね。なんだかお店って見てるだけで楽しいけど、終わった後、疲れがどっと来るのよね」


「陽子、なんか発言がおばさん臭いぞ。もう少し若者らしく溌剌としろ」


「ええーっ、いいじゃん。疲れたものは疲れたの。そんなところで見栄張ったって別にいい事ないもの」


陽子はそう言って、疲れた足をぶらぶらとさせながら、不満気な表情を見せる。浩也はというと、そんな陽子を可愛らしく感じながら、そろそろいいかなと話を切り出す。


「なあ陽子、今回の海の家のバイト、陽子がいてくれてほんと助かったよ」


「ふぇ、なっなに、いきなり」


「いや、普通に感謝しているだけなんだが。そんなびっくりする事ないだろう」


すると今度は浩也が不満気な表情を見せる。すると陽子はそれに苦笑いで返し、首を横に振る。


「別に感謝なんて必要ないわよ。私だって浩也君には一杯助けてもらったし、初バイトでいろいろ一杯一杯になるところをフォローもして貰ってるし。だからね、おあいこだと思うの」


「まあそれでもだ。誘ったのは俺だし、フォローをするのも当たり前だ。それ以上に陽子は頑張ってたし、俺は助けても貰った。まあ彼女にもさせてしまったしな。だから、そのお礼がしたいんだ」


「お礼?」


陽子は首を傾げてそう言葉を返す。すると浩也は自分のウエストポーチの中から可愛く梱包された小さな包みを取り出し、陽子の前に差し出す。


「そうお礼、今日はそのお礼を買おうと思って、付き合わせたわけだ。だから受け取ってくれ」


浩也はそう言って包みを陽子の手に渡すと、ニヤリと笑みを零す。びっくりする陽子を見て、サプライズが成功したのを喜んでいるのだ。陽子は手のひらにある包みを見ながら、浩也に聞く。


「これ、開けてもいい?」


「勿論」


そうして開けた中身を見て、陽子が顔を綻ばせる。


「あっ、これって最初の店で見た髪留め。あれ、これっていつ買ったの?」


「陽子が服見てる時に、一度トイレで離れたろ。あの時実はこれを買いに行ったんだ。まいちゃんに選んだものと似ているから、お揃いにもなるし、いいかなと思ってな」


「ふふふ、確かにお揃いって、嬉しいかも。まいも喜びそうだし」


そう言って嬉しそうにする陽子を見て、浩也も顔を綻ばせる。それこそ選んだかいがあったてもんだ。


「でも悪いなぁ。私ばっか、良くして貰っちゃって。私もなんかお礼がしたいわ」


「礼はいらんからな。俺がお礼であげてるのに、お礼を貰ってどうする」


「むー、それでもお礼をあげたいもんなの。そういう所が浩也君のダメなところよね。本当に女心がわかってない」


「お、おうっ」


そう言って剥れる陽子に浩也は思わず口ごもる。浩也自身はそれって女心の問題か?などと思っていたが、陽子が二の句をつがせない。


「そうやってお互いが選んだものを交換し合えるなんて、嬉しいんだからね。今度は私の番だから、覚えておいてね」


「はいはい、それで陽子が満足なら、異存ありません」


「ようし、言質とったからね。じゃあまた買い物に来ようね」


陽子は嬉しそうにそう言って、髪留めを眺める。勿論、プレゼントも嬉しいし、お返しがしたい気持ちも当然あるが、1番はまた浩也と約束が出来た事が嬉しかった。どうせ女心なんて、わかってないでしょうけどね、と思い浩也を見ると、やはり陽子の思惑など気付いていないように、やれやれといった表情を見せてるのであった。


それからもバイトは楽しく、忙しく続いていき、いよいよ最後日を迎える。この日は源治が夕方にきて、バイトの給料が支払われる事になっていて、同じタイミングで、バイトのない有里奈とめぐみもやってくる事になっていた。


「ああ、ようやく怒涛のバイト生活から解放だな。3週間程度だけど、非常に中身が濃かったな」


「本当に、怒涛で濃密な時間だったよね。私、将来接客業ならやっていく自信が出来たわ」


浩也に話しかけられた陽子は、そう言って苦笑混じりに同意する。実際にこの夏の海の家の売上は、前年比で3倍以上になっており、特に有里奈とめぐみを揃えた土日は、4倍近い実績を誇っていた。当然、源治も羽振りが良く、貢献したメンバーには特別ボーナスが約束されている。その中でも特に浩也と陽子は平日の分もあるので、並みのサラリーマンの月給程度の金額が予め伝えられていた。


「確かにな。俺は土日は鉄板焼きマシーンだったから、まだマシだけど、陽子は老若男女いろんな人に声をかけられてたもんな。正直、陽子の凄さをまざまざと見せつけられたよ」


「やーね、由貴さんだって、あれくらい出来たでしょ。慣れれば、あれくらい誰でも出来るわよ」


確かに由貴姉は、傍若無人のコミュニケーションモンスターだが、陽子も勝るとも劣らない能力を発揮していた。むしろ傍若無人でないだけに、浩也としての評価はMAXだったりする。


「由貴姉はありゃ化け物だ。なんてったって、あの雄二さんを口説き落としたんだからな。雄二さんも言ってたよ。気が付いたら、隣にいて、付き合ってたって」


「いや、むしろ浩也君の雄二さんの評価が気になるところだけど。まあいいわ、それより浩也君、バイト代ってどうするの?ちょっと額が大きいから、困っちゃって」


「ん、ああ、基本ほとんど貯金するぞ。別にすぐ買いたいものもないからな。将来溜まったら、海外とか行ってみたいし」


浩也はそう言って、自分の使い道を教えてやる。


浩也はどちらかというと倹約家だ。本など欲しいものは、簡単に手を出すが、そもそもそんなに欲しいものがない。しかも今回に限らず、店のバイト代もあまり使っていない為、高校生にしては結構な金額を持っていた。


「まあそうなるわよね。私もまいになんか買ってあげて、後は貯金しようかしら。まあ、大学に行ったら、なんだかんだお金かかりそうだしね」


とまあ、取らぬ狸の皮算用とばかりに手に入るお金の相談をしあう高校生2人を見て、大学生の英吉は一生にこぼす。


「なあ、あの2人って、本当に高校生か?なんかこうもっと浮かれる感じがないのかな」


すると一生は興味なさそうに一瞥し、きっぱりという。


「あれがリア充ってやつだ。充足している奴が、無駄な事する訳ないだろう。お前みたいな充足してない奴は、無理をして、自滅する。世の(ことわり)だな」


「グフッ」


一生の的確な言葉に英吉は膝から崩れ落ちる。そんな2人に気付かず、浩也と陽子は仲良さげに会話を楽しむのであった。


そして夕方には給料を受け取って、浩也達は家路にへとつく。ちなみに有里奈とめぐみも合流済みであり、4人連れ立っての帰宅だった。


「いやー、なんか凄く給料貰っちゃったねー。ファミレスのバイトと合わせたら、ちょっとした小金持ちだよ」


そう言ってめぐみはホクホク顔で陽子に話しかける。すると陽子は、なんだか周囲を警戒するように見ながら、めぐみに注意する。


「めぐみ、ちょっと声が大きいっ。私なんて、人生で1番お金持ってるんだから、あんま大きい声、出さないで!」


「陽子、人生で1番って、大袈裟な。ああ、でも俺も過去最高記録かもな。修学旅行の金渡した時が最高金額かも。今はその数倍は持ってるからな」


「確かに。私もヒロ達程じゃないけど、こんなに貰えるとは思わなかったもん。ねえ、ヒロ、今度どっか遊びに行こうね」


有里奈はそう言って、ご満悦そうに浩也を誘う。浩也も特段、気負う事なく、普通に言葉を返す。


「あー、遊びかー。行くなら早目にしないと、有里奈受験だしなぁ。どっか行きたいところとかあるのか?」


「んー、ああ、大学巡りをしてみたい。一応、志望校いくつかあるから、見比べてみたいかも」


「それなら、学校が始まってからの方がいいか?学生のいないところに行っても意味ないだろ」


浩也がそうもっともな事を言う。確かにその目的なら、学生のいるうちがいいだろうと思って、有里奈が首肯する。


「うん、それで良いよ。人のいないキャンパス見ても、雰囲気わかんないしね。じゃあその時は、ボディガードよろしくね」


「はいはい、って、めぐみも陽子も何、ヘンな顔しているんだ?」


浩也と有里奈のやり取りを聞いていためぐみと陽子は2人のあまりに自然なやり取りに思わず絶句していた。どちらもコンテストで告白まがいの事までしているのに、恥ずかしがる素振りさえ無い。だからか、思わず質問に質問を返してしまう。


「2人って、本当に仲が良いよね、なんで付き合わないの?」


「はあ?そうか?普通だろ?これくらい」


「うーん、普通と言われれば普通なんだろうけど、ねえ」


「いや、めぐそこで私に振られても。でもめぐの言いたい事もわかる。阿吽の呼吸というか、しっくりくるというか」


そう話を振られた陽子が何とか言語化を試みる。しかし浩也も腑に落ちず、思わず突っ込みを入れてしまう。


「いや、さっぱりわからん。ただ付き合いが長いだけだろう、それって」


「むっ、そこは彼女って事で良いんじゃないかな、ね、陽子ちゃん」


「いや、それも私に振られても、言いたい事もわかりますが」


そう言って陽子は苦笑いする。浩也は辟易として、有里奈に注意する。


「だからこの前、きっぱり、さっぱり、振っただろう。彼女とか付き合うとか、今考え中だ。待てないなら、他をあたってくれ」


「ふん、他の男子なんて、興味ないの知ってるくせに。ヒロのバカ」


そう言って拗ねる有里奈。やはり痴話喧嘩の如く仲睦まじい2人に陽子が言う。


「はいはい、2人とも、夫婦喧嘩はその辺にして下さい。それより今日の夜、本当にまいも連れて行って良いの?きっと喜ぶから、私的には嬉しいんだけど」


「ああ、問題ないぞ。なあ、有里奈」


「ふぇ、え、ええ、問題ないよ。私もまいちゃんに会いたいし」


有里奈は夫婦喧嘩という単語に過敏に反応して、少し焦った回答になるが、2人とも全然、気にしていないようだった。


「あれ、今日の夜って、なんかあるの?」


「ああ、地元の夏祭り。規模は大きくないけど出店も出るし、地元の人間には定番だな。俺と有里奈は毎年行ってるし。今日は陽子とまいちゃんも誘ってみんなで見ようって話をしててな。めぐみも来るか?」


「ごめん、今日は予定があるの、ああでもいいなぁ、お祭り。私も行きたかったなぁ」


「まあ毎年あるから、また来年かな。じゃあ陽子、一度家に帰って、陽子ん家経由で行くから、待ってくれ」


「うん、わかった。まいと一緒に待ってるね」


そう言ってその後の予定を確認しあい、夏祭りを楽しみに家路へとつくのであった。


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