表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/82

第四十六話

今回は浩也君、一言も喋りません。女子トークのみ。何てったって女子会なので。

浩也が渋々ホールで仕事を始める傍ら、由貴を中心として女子会が始まる。参加者は由貴と有里奈、しずに陽子、そして飛鳥の5人だ。そして話の主導は女子会開催を宣言した由貴が始める。


「さて、有里奈にしても飛鳥ちゃんにしても聞きたい事はあると思うけど、まず第一前提として、ここに居る飛鳥ちゃんが、実質浩也に告白をしたことから話が始まるのだけど、陽子ちゃんとしずちゃんはそのことは知らないわよね」


「ええっと、正直ここで飛鳥が働いている事も知らなかったので、当然知らないのですが、飛鳥、あなた浩也君に告白したの?」


「はい、まあ直接好きとかの言葉は使っていませんが、好きという気持ちを伝えられたという意味ではその通りかと思います。ただ付き合って欲しいとかは言ってませんが」


そう言って陽子に平然と飛鳥は答える。質問した陽子はその返答で、妙に納得した表情をみせて再び飛鳥に聞く。


「もしかしてあなたが中学の時に好きな人がいるって言ってたの、もしかして浩也君?」


「ああ、そうですね。陽子さんにはそこまでは教えてましたもんね。その通りです。中学の時から高城先輩に憧れていて、高城先輩を追って海生高校に入って、サッカー部にいるかと思ってサッカー部のマネージャーになろうとしたら、入ってないって聞いて。あの時は正直焦りました。高城先輩と接点を作る機会がなくなっちゃったと思って。でもここのバイト募集の話を聞いて、むしろチャンスだと思って、バイトに応募したんです」


そういう飛鳥はニコッと笑って、嬉しそうにする。すると今度はしずが由貴に質問する。


「由貴さんはこのことを知ってて、彼女を採用したんですか?」


「うーん、そうね。志望動機でそういう事を説明されたので、知っていたわ。まあ浩也にはいい機会かなとも思ったしね。あの子、最近、やたらモテるようになってきたから、そろそろ自覚させる必要もあったしね」


そう言って、由貴は少しだけ考え込む素振りを見せる。実際、浩也の人気は結構なもので、店に来る女性客からの評判も非常にいい。浩也目当ての女性客も日に何人か来るくらいだった。浩也は表向き、客として愛想良く接しているので、尚更、客も勘違いし始めており、由貴はそろそろ自覚させるべきと考えていた。


「ああ、幼馴染君、自分がモテる自覚ないですもんね。普通にイケメンなのにモテないとか、どうしてああなっちゃったんだか。あ、ここに1名、勘違いさせた原因がいますけど」


「えー、しず酷いよ。ヒロがモテないって勘違いしているのは、1番は藤田君っていう親友のお陰よ。まあ私も積極的に勘違いを直そうとは思わなかったけど。だってライバル増えると困るし」


「ははっ、なら私の友人もその原因の1つですね。彼女はいわば、ボディガードですから。彼女が浩也君の側にいることで、結構な数の女子が諦めてますし、浩也君も積極的に誤解をとこうとはしてなかったですしね」


「井上先輩の事ですね。あの人、自分は告白しないくせに高城先輩を独り占めにしようとするから、私中学の時、文句いいに言ったことがあったんです。でも結局はその時言い負けちゃって。で、この前リベンジしようと、宣戦布告をしたんです。私は思いを先に伝えましたって」


すると有里奈が複雑な表情になる。その表情を見た由貴が今度は女子メンバー全員に話しかける。


「さて、この会の発端の経緯はこれでわかったかしら。私は基本、この件に関しては、浩也の身内として中立の立場でいようと思うの。とは言え、知らないところで、知らないうちに話が進むと困る人もいるでしょう。だから一度、情報共有をして、みんなの真意を知りたいの。具体的には、浩也に好意があるか無いかってところね。本当はあのショートカットの子も呼びたいところだけど、まああの子の好意はわかっているから、後はここのメンバーね、ここのメンバー以外は知らないから、そっちは勝手に頑張ってもらう事になるけど」


するとしずが、手をあげて、明確に自分の立場を宣言する。


「まあそう言った意味では私は、完全に部外者ですね。有里奈の友達なので、幼馴染君はかわいい後輩ではありますが、それ以上にはならないといいますか。あれ、由貴さん、こういう事でいいんですよね」


「ふふふっ、しずちゃん、察しが良くて助かるわ」


「なら私ももうお話を伝えてますので、立ち位置は明白ですね」


飛鳥もそう言って、自分の立場を明確にする。実際、ことの発端であり、由貴もそれに頷く。


「飛鳥ちゃんも勿論、それでいいわ。さて、問題は有里奈と陽子ちゃんね。まずは有里奈だけど」


そこで由貴は答えがわかっている有里奈を指名する。元はといえば、有里奈の存在を飛鳥に、飛鳥の存在を有里奈に説明する為の会みたいなものなのだ。だから有里奈も迷わず、はっきりと自分の立場を説明する。


「私は、ヒロの事が好きなので、ヒロとこの先もずっと一緒にいたいと思っています。だから、飛鳥ちゃんが現れたと聞いて、正直、良かったと思ってるの。私もようやく動けるなと思って」


「はぁ、やっぱ榎本先輩もですかー。ここにきた時からそうだとは思ってましたが、直接言われるとグッときます。しかも幼馴染とかって、最強じゃないですか」


「でもヒロからは、身内扱いで中々女子としてみて貰えなくて。それに幼馴染って内緒にしてもらってたから、自分から積極的に動くわけにもいかなくてね」


ライバルの強力さに、思わずがっくりと肩を落とす飛鳥を見て、有里奈は思わず苦笑いをしながら、フォローを入れる。するとしずが呆れ半分で有里奈に突っ込みを入れる。


「ほらほら有里奈、敵に塩を送ってどうすんのよ。それに飛鳥ちゃんも、それで諦めるわけじゃないんでしょ。」


「勿論です。ライバルが強力なのは、経験済みです。あー、そうか。井上先輩が言ってたのは、この事かー」


しずの言葉に気合を入れなおした飛鳥が、理緒に言われた事を思い出し、思わず声を上げる。すると陽子が友人の名前を気にして、飛鳥に尋ねる。


「理緒の言った事?」


「ああ、はい。この前宣戦布告をした時に、敵は私だけじゃない的な事を言ってたんですよ。井上先輩、きっと榎本先輩の事を知っていたんですよ。だから時期を待ってたのかも」


有里奈はそれを聞いて、飛鳥の言うとおりだと直感する。多分彼女は自分とヒロが幼馴染で、有里奈がヒロに好意を持っていたことを知っていたのだ。だから、自分の気持ちを浩也に伝える事をせずに、浩也との関係をより親密にすることを選んでいたのだ。浩也の事だから、知らない相手と付き合うような事は絶対にしないと確信を持っているのだろう。


「はいはい、また話がそれちゃったわね。有里奈のことはそう言うことね。では最後、陽子ちゃん」


「は、はいっ」


陽子は理緒の事を考えている最中に、由貴に声をかけられ、びっくりした声で返事をする。


「陽子ちゃんは浩也の事をどう思っているのかしら」


「はあ、浩也君のことですか?んー、好きか嫌いかで言えば好きです。仮に浩也君に告白とかされたら付き合ってもいいと思えるくらいには、好意があると思います。ただ自分から積極的にどうこうすると考えるとまだ、自分自身、男子と付き合うとかピンと来なくて。なので良く判りません」


陽子はそう答えて、我ながら要領の得ない話だと思わず苦笑する。大体、異性に対してそこまで強い思い入れを抱いた事がないのだ。勿論彼氏がいたこともない。それでどうして好きという感情に確証が持てるのか、正直理解できなかった。


「フフフッ、それはそれで素直な答えで好感持てるわ。案外陽子ちゃんみたいな子が、あっさり浩也と付き合ったりするのかもね。有里奈も飛鳥ちゃんもうかうかできないかも。ああそれと理緒ちゃんだったかしら、彼女もこれからどうするのか楽しみね。そういえば、有里奈、浩也と幼馴染だというのを公言するんでしょ」


「うん、もうヒロにもOK貰ったし、さっきは予備校の前でハグもされたから、噂は直ぐ広まると思う」


「なら尚更、舞台は整ったと思っていいのかしら。後はこの中で、聞きたい事ってあるかしら?」


「そうですね、何で榎本先輩は幼馴染って内緒にしてたんですか?」


そこで飛鳥が1番気になっていた事を聞いてみる。それにはしずも同調する。


「そうそう、私もてっきり幼馴染君が内緒にしたがってると思ってた」


「ヒロは最初からどっちでもいいって言ってたの。ただ私がヒロに内緒にしてもらったの。ヒロに迷惑がかかるから」


「迷惑ですか?」


少しだけ困った表情を見せた有里奈に、飛鳥が不思議そうな顔を見せる。


「うん、前に私を好きって言う先輩がいて、ヒロに嫌がらせをした事があって、ヒロは自分で解決しちゃったんだけど、またそういう事があると怖くて。でもやっぱり、内緒にしたままだと、ずるしている気分にもなるから、思い切ってやめる事にしたの。またヒロに迷惑をかけちゃうかもだけど」


「そうですか、榎本先輩もなり振り構わないって事ですね。井上先輩もいますし、陽子さんももしかしたらですし、本当、高城先輩ってモテ過ぎますね」


飛鳥は自分が好きな相手ながら、よりにもよって、海生高校の学年別ナンバーワンを虜にする浩也に、呆れた声をだす。すると外野気分のしずが、1番気楽に確信をつく。


「まあ、結局は彼、あんまり女子と付き合うとか考えていないのが、1番問題なんだけどね。こんだけ周りに可愛い女子がいるのに、その気にならないんだもの」


「フフフッ、そうね。逆を言うとその気にさせた人が、ゴールに1番近いかも。ああ、でも色仕掛けとかはダメよ。あくまで高校生らしく勝負しなさい。そう言うのは、大人になったらいくらでも出来るから」


そんなしずに同じく外野の由貴が3人を煽る。そしてそう話を振られた3人は、思わず仏頂面でバイトをする浩也を眺めて、苦笑いをし合うのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ