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第二十八話

今日は定刻どおりの更新です。昨日からシコシコ書き起こしていたかいがありました。まとめて書き溜めないと中々毎日更新は厳しいので、ちょっとどっかで一念発起する必要がありますね。

そして追試前日の放課後、理緒と浩也は学校内の図書室で勉強をしていた。勉強の教材は前回のテストと教科書と浩也のノート。まずは復習を兼ねて前回のテストを再度解いてもらい、何故間違えたのかを理解させる為に、教科書と浩也のノートで説明をする。


「ほら、理緒。そこは公式に当てはめる数字が違う。この場合、この数字がここに当てはまる。違うところに入れたら、答えが出ないぞ」


理緒は基本的に公式は何とか覚えているのだが、その公式に当てはめる数字を間違える。ようは問題をよく読まずに、勘で数字を当てはめるようなところがあるのだ。まあその勘が当らないので、当然答えを間違える。


「えー、だってこの数字はここじゃないの?問題にもそう書いてるじゃん」


「あーだからそれは引っ掛け。大体それだと綺麗な数字にならないだろ。大体なんだその小数点以下6桁になる答えって。そんなヘンな答えあるかっ」


「いいじゃん、取り敢えず答え出たんだから」


「駄目、やり直し。間違っている答えは答えじゃねーっ」


そう言って浩也と理緒は言い合いながらも勉強を進める。問題の答えもあらかた理解したところで、時間も17時半となり、図書室終了の時間となる。


「ああ、もうここも終了の時間だ。理緒どうだ?自信の程は?」


「うん、なんかいつもより頭に入っているかも。それにポイントも浩也のノートどおりの場所が問題に出てるし、なんかそのノート凄いね」


そう言って理緒は感心した表情を見せる。浩也はそれに特段関心を示さず、淡々と言う。


「別に大した事はしてないぞ、教師の言うポイントを後で見返した時に解りやすく書いてるだけだ。ちゃんと授業を聞いてりゃ、誰でも書ける」


「でもねー、数学ってなんか集中力が途切れるのよね。それに答え考えているうちに、違う話になってたりするし」


そう言って理緒は不満気な顔をみせる。まあ得意・不得意、好き・嫌いは誰にでもある。浩也はなんとなくそう思って、話に区切りをつける。


「まあ、取り敢えず明日は大丈夫そうだな。念の為、ノート貸してやるから、ちゃんと復習しろよ」


「うん、ありがとう、浩也」


「ああ、じゃあ帰るか」


浩也はそう言って鞄を肩にかけ、図書室を出て行こうとすると。


「あっ、待って待ってっ、もう、さっさとと行かないでよっ」


理緒も慌てて荷物を鞄に詰めると小走りで、浩也の側に行く。そうして2人は並んで、玄関口まで歩いていく。


「ねえ浩也、今度の追試受かったら、またご褒美頂戴よ」


「はあ?今回俺、ご褒美あげる理由がないんだが」


「良いじゃん、良いじゃん、前みたくそんな無理なお願いはしないからさ。それに誕生日近いし」


「ん?理緒、誕生日いつなんだ?」


「7月7日の七夕です!もう忘れないでしょ?」


そういえば理緒とは5年近い付き合いになるが、誕生日を聞いたのは初めてのような気がする。確かに七夕なら、忘れないだろう。


「なら心よりお祝い申し上げる。おめでとう、理緒」


「いやそういう気持ちだけとか要らないから」


「で、ご褒美と?」


「そう、ご褒美!」


最早、誕生日プレゼントなのか、ご褒美なのかは良くわからんが、ん、両方か、まあセットで出来るならお得かと浩也は、打算的な納得の仕方をする。


「ちなみにお嬢様は何をご所望で?」


「えへへ、今度のバスケの試合に応援に来て欲しいんだよね。ほら、私、ギャラリーいると燃えるタイプだから」


理緒はそう言って、嬉しそうにはにかむ。浩也は思いのほか軽いご褒美に軽く安堵する。


「試合?ああ、夏の大会か。日程は、土日のどっちかだろう?予め予定をくれれば、別に良いぞ」


「本当?やったーっ、俄然、やる気出てきた。今のチーム、結構良いメンバーいるから、大会も楽しみなんだよね」


「はいはい、その前に追試を頑張ってくれ。そっちの方が重要だから」


「当然、人参のぶら下がった理緒様は、気合いが違うわよ!ああ浩也、これはご褒美だから、プレゼントは別腹よ」


「はああっ?今お前、ご褒美でプレゼントって」


「何言ってるの、大会にくるくらいじゃ、理緒様の誕生日プレゼントになる訳ないじゃん。試合の後、楽しみにしてるわっ」


浩也は完全に騙された気分で、思わず真っ赤なバラの花束でもバスケ部メンバーの前で渡してやって、羞恥に悶え苦しませてやろうかなどと後ろぐらい事を考えていたりしていた。


そしてそのあと理緒を家の近くまで送り、浩也は家の方へと進路を変える。途中、小腹が空いたのもあり、家の近くのコンビ二によると、浩也の胸の中で、スマホが震える。浩也は胸からスマホを取り出して、LINEを立ち上げると有里奈からLINEが届いていた。


『ヒロ、今何してるの』


『買い食い』


『いいなー、私もアイス食べたい』


有里奈からのテキストの後、犬が涎を垂らしたスタンプが届く。


『なら買っていってやろうか?』


『何処のコンビ二?』


『家の近くのファミマ』


『ならそこ行く、待ってて』


浩也はそれを見て、「わざわざくるまでも無いだろうに」と思わずこぼす。仕方がないので、浩也は雑誌コーナーで雑誌を立ち読みし始めると、程なくして有里奈が到着する。有里奈は完全に部屋着のままで、足元はサンダルだ。浩也はそれを見て、思わず顔を顰める。


「おい有里奈、その格好はないだろう。いくら近所だからって、もう少し、気を使え」


そう浩也が指摘する有里奈の格好は、頭にカチューシャをつけ、メガネ姿でタオル地のキュロットパンツにTシャツに薄手のパーカーという出で立ちで勿論生足だ。ちなみに有里奈は普段はコンタクトで家では眼鏡派だ。まあファンであれば、油断しきった格好の有里奈は垂涎ものだろうが、あまりにもな格好だった。


「えー、そう?良いじゃん、近所だし」


「はい、はい、じゃあ襲われても知らないからな」


「えっ、ヒロが襲うの?」


「襲うかっ、そんな色っぽい足を見せびらかしたら、例の副会長なら、興奮して土下座するぞって話だ」


浩也は、有里奈のボケっぷりに、思わずツッコミが激しくなる。


「いや、あはは、お見苦しいものを」


有里奈は有里奈で、色っぽい足と言われて急に羞恥心が湧く。色っぽいと言ったのが、浩也だったから、尚更だった。


「まあいい、ほら早くアイス買ってこいよ」


「ああうん、ちょっと待ってて」


そう言って有里奈はアイスを選び出す。有里奈は案の定、悩みに悩みまくった後、ようやくチョコの入った、バニラモナカにすると、レジへと急ぎ購入する。


「ヒロお待たせ、じゃあ帰ろう」


「ああ、で、結局何買ったんだ?」


「チョコの入ったバニラモナカ。歩きながら食べるのに丁度良いんだよね」


有里奈はそう言って、早速封を開けて、モナカを食べ出す。浩也はそんな有里奈を呆れ顔で見ながら、こうして買い食いして歩くのも、随分と久しぶりな感じがした。


「やっぱ、スマホ便利だな。こうやって買い食いして歩くのもなんか久しぶりだけど、連絡つかなきゃ、出来ないもんな」


「ふふふっ、そうね。流石に1人だとわざわざ出かける気にならないし。ヒロがいるなら出かけようかなってなるもんね」


浩也も何となく気持ちはわかるので、それに対して肯定的に相槌を打った後、ふと気になって質問する。


「結局、連絡先はどの程度広めたんだ?」


「男子はお父さんとヒロだけ。女子もまだしずと陽子ちゃんと他の友達3人だけ。でも女子の間でやり取りしているだけでも楽しいけど」


「まあ、最初はそんなもんだろ。受験生なんだから、程々にな」


「なんかヒロって、そういうとこ、お父さんみたいだよね」


「失礼な、なんで年上の娘なんか持たなきゃならん。しっかりしろよ、お姉ちゃん」


浩也は憤然とした表情見せた後、からかうようにあえて年上を強調する。するとそう言われた有里奈は、不満気な顔になる。


「もう、ヒロがお姉ちゃんとかって、バカにしているようにしか聞こえないからっ。そんな意地悪を言うような子には、アイスあげません」


「おっ、くれるのか?一口一口(ひとくちひとくち)


浩也はそう言って有里奈の手を取って、齧りかけの部分をパクッと食い付く。有里奈はそれが間接キスだと思い至って頬を赤らめるが、浩也の全く気にした素振りを見せない姿にガックシ、肩を落とす。


『まあヒロだから、しょうがないよね』


まあ正直、今更なのだ。有里奈と浩也は多分、それこそ数えきれないくらい、間接キスなどしている。それこそ幼少期にはチューしている写真がアルバムにあったりするのだ。勿論、中学に入ってからは、そういう機会も殆どなくなったが、それでも浩也は今更と気にしてないのだろう。ただ女子の有里奈は、意識して浩也の食べたところに口を運ぶ。


『ふふふっ、久しぶりの間接キス』


その時は何となく嬉しくて、ついそういう事を考えていたが、後になって、その自身の行動を省みて、明らかに変態じみていた事に気付いた有里奈は、夜な夜な悶絶するのだった。


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