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第二十六話

もう少しドラマになるかと思いましたが、思いのほかほのぼのでした。やはり幼女は和みですね。

「えっ、陽子!?」


浩也は声のしたほうを向いてその人物を確認すると、陽子が小さな子供を抱きかかえて立っていることに驚く。陽子は陽子で浩也がなぜか()()()()()と一緒にスマホを選んでいる事にびっくりしている。そんな2人を尻目に有里奈は嬉しそうに陽子に話かける。


「あーっ、陽子ちゃん、久しぶりーっ。中学以来?うわぁー大人っぽくなってーっ」


「あっ、有里奈先輩、本当にお久しぶりです。先輩こそ凄く大人っぽくなって、美人に磨きがかかってますよ」


すると驚きを何とか押さえ込んだ陽子は、笑顔になって有里奈に答える。


「あれっ、陽子と有里奈は知り合いなのか?」


すると今度は浩也も何とか驚きを押さえ込んで、有里奈に質問する。


「うん、中学の時の図書委員で一緒だったんだ。結構、本の趣味とか一緒だったし、ほら、陽子ちゃんって余り物怖じしないでしょ。だから自然と委員の仕事の時は話すようになったんだよね」


「有里奈先輩、それだと私、無遠慮なキャラになっちゃいますが」


「あーでも判る。確かに陽子は、相手が誰であろうと、思った事はズケズケ言うもんな」


浩也はそう言って、からかうようにニヤリとする。するとそれに反応して、陽子が浩也に文句を言う。


「ちょっと浩也君、それはあなた達男子が、遊んでばっかりいるからでしょっ。あれっ、でも浩也君と有里奈先輩って、今有里奈って」


「あっ」


浩也に文句を言おうとした陽子は思い出したかのように、浩也が有里奈と名前呼びした事を口に出し、思わず浩也もしまったという顔をする。浩也はまあ陽子なら良いかと気持ちを切り替え、有里奈との関係を説明する。


「あーこれはちょっと内緒にして欲しいんだが、俺と有里奈は幼馴染なんだ」


「へっ?有里奈先輩と付き合っているとかじゃなく?」


「ああ、うちの母親と有里奈の母親が親友で、家も近所だから、子供の頃からの家族ぐるみの付き合いなんだ」


「へーっ、でも何で内緒なの?」


そう言って首をコテンッと倒して不思議そうな顔をする。するとそれには有里奈が苦笑いをしながら、答える。


「うーん、ヒロと私が幼馴染だっていう事で、ヒロに迷惑をかけちゃった事があるから、余り学校とかでは積極的に絡まないようにしてるの。ほら私とヒロだと学年も違うから、積極的に会おうとしなければ、そんなに接点もないしね」


「あー、そういう事ですか。有里奈先輩、相変わらずなんですねー」


陽子はそう言って、中学時代の有里奈のモテっぷりを思い出す。同じ図書委員の活動で、図書室の整理とかをしていた時に、有里奈は度々告白とかで、男子に呼び出されていた。しかも陽子はその現場に立ち会ったことさえある。そこに浩也が幼馴染だと広まれば、明らかに嫉妬や羨望の眼差しを一身に受ける事になるだろう。


「本当に、高校に入ってからも全然減ってくれないし、私なんてただの女子なんだけど」


「フフフッ、有里奈先輩がただの女子なわけないじゃないですか。ああ、性格はただの可愛らしい女子ですけどね。でもやっぱ男子は外見に惹かれるみたいですから」


「うーっ。それを言うなら、陽子ちゃんだって充分かわいいのに」


「あははっ、そんなこと言ってくれるのって、有里奈先輩くらいですよ。私、大抵の男子はコテンパンにしちゃうんで、どっちかっていうと敬遠されてるんじゃないですか」


「ん?そうか?陽子は可愛いと思うぞ、ほら、こういうと赤くなるところとか」


浩也がそう言うと、テレた陽子は顔を赤らめ文句を言う。


「もー、不意打ち禁止、浩也君はそうやって油断するとすぐそうやって素でそういう事言うんだからっ」


「うんうん、確かにヒロの言うとおりかも。陽子ちゃん可愛いっ」


「もー、有里奈先輩までっ、止めて下さいっ」


有里奈の追い討ちに陽子は更に顔を赤らめ、テレまくる。すると、陽子がずっと抱っこしていた女の子が、ペシペシと陽子の顔を叩く。


「ようこちゃん、おかおあつい?」


「ああ、ごめん、起きちゃった?麻衣、たっちする?」


「んーん、だっこでいい」


さっきまで陽子に抱かれて寝ていた子が、陽子達との会話で目を覚ましたのか、陽子の顔を触りつつ、周りをきょろきょろしだす。それを見て有里奈がその目を輝かせる。


「あーっ、可愛い、ほっぺぷにゅぷにゅー」


有里奈はそう言って幼女のほっぺを優しく突っつく。するとそれがくすぐったいのか、有里奈の指をぎゅっとその小さい手で握ると、有里奈を見て不思議そうな顔をする。


「おねーちゃん、だれー?」


「んー、おねーちゃんはようこちゃんのおともだち。ゆりなっていうの」


「ゆーなちゃん?」


「んーん、ゆーなじゃなくてゆりな、ちょっと難しいかなー」


「ゆりな・・・ちゃん?」


「そーう、よく出来ました。お名前はなんですか?」


「きたみまいです。3さいです」


「おおーまいちゃんかー、よろしくね、まいちゃん」


「うん、ゆりなちゃん」


浩也はそんな有里奈を見てただ微笑ましく感じていたが、その隙に陽子が浩也の腕をつつく。


「浩也君達って、今日はここに何しに来たの?」


「ああ、有里奈がスマホを買うっていうんで、その申込の付き合い。陽子は?」


「私は私のスマホの調子が悪いから、それを見てもらいに。それと今日、お姉ちゃんがいないから、麻衣のお守りも兼ねてね」


「ああ、やっぱお姉さんの子供か。お姉さんはどこ行ったの?」


「今日は久しぶりに高校の時の友人に会うんだって。まあここ最近ずっと育児に家事にだったから、たまには息抜きもして貰わないとね」


そう言って陽子はさばさばした表情になる。するとそんな陽子との会話が聞こえたのか、まいが浩也をじっと見ている。浩也は優しげな笑顔で、麻衣の頭を撫でて、挨拶をする。


「こんにちわ、まいちゃん。お兄ちゃんはヒロっていうんだ」


「ヒーロー?」


「そう、ヒロ。よろしくね」


「うんっ」


麻衣はそう言って元気良く返事をしてニッコリと笑顔を見せる。浩也は少し感心した表情を見せ、今度は麻衣のあごをコショコショとしてあげる。すると、麻衣は更にご機嫌となり、キャッキャッとはしゃぎ出す。陽子ははしゃぐ麻衣を何とか抱っこしていたが、少し体勢を崩した時に、麻衣を落としそうになる。


「キャッ」


浩也はそれを陽子ごと抱きしめるように支え、ついでに麻衣を抱き上げる。


「あ、おい、陽子、大丈夫か?」


浩也は陽子を抱き支えながら、麻衣を抱っこする手を「よいしょっ」と掛け声と共にバランスを良くする。麻衣は特段怪我も、驚いたところも見せず、今度は浩也の顔を楽しそうにペシペシとしだす。むしろ陽子は浩也に抱き支えられている事実に漸く頭が回ったのか、顔を真っ赤にして慌てだす。


「あっ、いや、その、あの、あっありがとう」


「いや、俺の方こそすまん。あそこまで喜ぶとは思わなかった」


浩也はそう言って、陽子から離れ、笑顔になって麻衣をあやすようにその手を握る。麻衣は麻衣で楽しそうに笑っていて、陽子はそんな浩也の一面を見て少し胸がどきどきとしだす。一方、そんな出来事をハラハラとした表情で見ていた有里奈は、顔を赤くして、テレたように浩也を見ている陽子に抱きしめてもらって羨ましいという感情と、浩也にあやされる麻衣を見て、私もそのぷにぷにをさわってみたいという欲求とでオロオロとしていた。


結局3人(と1人の幼女)は、それぞれの用事を済ませた後、その店を出る。麻衣はすっかり浩也や有里奈とも仲良くなり、店で手続きをしている間は、手の空いている人が交代で遊び相手をしてくれた事ですっかりご満悦となり、今は浩也に抱っこされてぐっすり眠っていた。


「ああー、今日は楽しかった。麻衣ちゃん本当にかわいいね」


有里奈は浩也の肩に顔をのせ、すっかり眠ってしまった麻衣を見てニコニコ顔を見せる。浩也も同意して笑顔を見せる。


「ああ、小さい子って可愛いよな。でも麻衣ちゃんって人懐っこいよな。このぐらいの子ってもっと大人を警戒したりするんじゃね?」


「ああでも、多分有里奈先輩と浩也君だからかも。もっと大人の人だと警戒するところあるもの。私の友達で楽しそうに話てたから、安心したんじゃないかしら」


「ふーん、そんなもんなのか?まあでもヘンに泣かれたりするより、よっぽど良いけど」


「うん、それに今日は本当に助かっちゃった。こうして抱っこして家の近くまで送ってくれるんだもん。子供って寝ちゃうと抱っこって本当に重いんだよね」


「ははっ、まあそこは男子だからな。抱っこされて嫌がられていないんだから、これぐらいは大したことはないよ。それに有里奈おねーさんは、麻衣ちゃんにメロメロだったしな」


麻衣を抱っこしてもらって、少し申し訳無さそうにする陽子に対し、浩也は特段気にしている風もなく、笑顔をでそう答える。


「フフフッ、それは否定できない。確かにメロメロ。陽子ちゃん、本当にまた一緒に遊びましょうね。勿論、麻衣ちゃんが一緒でも全然、構わないからっ」


「はい、さっき早速、連絡先交換してもらったので、夏休み前に必ず連絡しますね。その時は浩也君もよろしくね」


「はいはい、まあ嫌われないうちは頑張りますよ」


「うん、連絡楽しみにしてる」


そんな会話をはさみつつ、浩也達は、西条公園の陽子の家近くまで着いたところで、麻衣を陽子へと引き渡し、2人で公園経由で家路に着く。なんだかんだ時間も夕方近くなり、少しのんびりした空気が2人の間に流れだす。


「でも陽子ちゃんとヒロが友達とは知らなかったな。仲良いよね」


「ああ、元々中3の時の同級生で、最近遊ぶ機会があってな」


「ふーん、2人で遊んだの?」


「いや、朋樹と高校のクラスメートと陽子の友達の三対三でな。朋樹がその内の1人が好きで、ああ、陽子じゃないぞ、今度付き合う事になったんだけど、そのキューピット役だな」


有里奈はそれとなく、探るつもりで浩也に質問をしてもいたが、浩也のほうは特に隠し立てするつもりがないのか、あっけらかんとして答える。


内心そんな浩也の態度にほっとした後、いつもとは違い少しだけ有里奈は積極的になって浩也の手を握る。これまで大抵手を握るのは浩也のほうからだ。暗がり、混雑、相手を気遣っての行動である。有里奈はそんな優しさに触れる度に嬉しくなるのだが、たまには良いだろう。今は暗がりでも混雑でも、道が悪いわけでもないので浩也から手を繋ぐ理由がないのだ。ならたまには自分から繋ぎに行っても良いだろう。


「ん?どうしたんだ」


浩也は珍しく有里奈から手を握られたことで、足でも挫いたのかと思い心配する。すると有里奈は珍しくいたずらっ子っぽい笑顔で浩也に言うのだった。


「幼馴染の手がそこにあるんだから、握ったって別に良いでしょ!」


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