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第十話

ジャンル別日間現実世界〔恋愛〕1位

総合日間5位


読んでくださり、感謝感謝です!


今回は新キャラも出て、字数多目ですが、お付き合いいただければと思います!

中間テスト明けの日曜日、浩也は西ヶ浜駅の駅前広場に来ていた。時間は12時10分前。朋樹に誘われた遊びの集合場所がここなのだ。


今回女子との遊びという事もあって、男子ならば服装にも気を使うものだが、浩也の服装は至ってシンプルだ。白地のダンガリーシャツに同じく白地のVネックのTシャツ、下はタイトな濃い紺地のジーンズに、白地のスニーカーだ。財布等の荷物は黒いナイロン地のウエストポーチに入れ、肩から背中に背負っている。


あまりお洒落に興味が無い浩也は、使い回しの利く服を好む。色も柄のあるものよりかは、無地の白や黒、青系の色のものをシンプルに着こなす。白地のダンガリーシャツなどは下を変えればそれなりに印象が変わるし、ジーンズも同様に上を変えれば、印象が変わる。


ただそういったシンプルな服装が浩也の外見の良さを際立たせるのを浩也は知らず、実は何人かすれ違った同年代の女子が、浩也を見てワーキャー言っているのには、気付いていない。


既に集合場所には朋樹がいたので、浩也は朋樹に声をかける。


「おう、朋樹。お疲れ。同じ電車かと思ったが、一本前だったか?やる気満々だな」


「ん、ああ浩也か。おはよう。メンバーは女子と孝太がこれからだな」


「ああ、もう一人は孝太にしたんだ」


「お前の無茶振りのおかげでな。まあ男の方は気心が知れていいだろ」


どうやら浩也がバイトに行った後、孝太のフォローで誘ったみたいだった。まあ浩也の思惑通りではあった。その方が人見知りな浩也としては、気兼ねが無くて良い。


「ところでその女子の面子って、誰なんだ?」


「んー、ちなみに海生高校絡みじゃないぞ、中学のときの面子だ。まあ、会えばわかるだろ。1人はそいつらの高校の友達って言っていたから、俺も会った事が無いけどな」


「西条中の奴らか?しかも俺の知ってる奴?」


浩也は、首を傾げて考え出すが、朋樹はサプライズのつもりか、それ以上話をする気をみせず、ニマニマしているだけである。するとそんな2人の前に3人の女子が近づいてくる。


「藤田君、お待たせー、あっ、高城君も久しぶりー」


「げっ、マネージャー、それに、いっ、委員長もっ!?」


浩也は驚きの余り、思わず声を上げる。


「ちょっと、高城君、そのリアクションは無いんじゃない?それに、マネージャーに委員長って」


そう言って眼鏡をかけた女子が浩也を睨む。彼女の名は、北見陽子。浩也が中学3年の時のクラスメートで、学級委員長だった女子だ。高校に入ってから会った事が無かったが、中学時代より大人びた雰囲気にはなっていた。気の強そうなところは相変わらずだったが。


「まあまあ、陽子ちゃん。高城君も久しぶりでびっくりしちゃったんでしょ」


そう言って睨む北見を宥め始めたのが、マネージャーこと川添春香だ。彼女も中学3年の時のクラスメートで、サッカー部のマネージャーだった女子だ。少しのんびりとしたところはあるが、家庭的でほんわかした雰囲気のある癒し系だ。確か卒業後、2人とも近くの女子高に入学したはずだった。気の強そうな美人系の北見と癒し系で可愛いタイプの川添、性格もタイプも正反対だが、なんとなく仲が良さ気で、馬が合っている気がした。そしてそこにもう1人、同じ女子高の友人が2人に割って入る。明るい髪に目鼻立ちのハッキリした目立つタイプの女子で、一言で言うと垢抜けた女子だ。


「ちょっとちょっと、2人だけ盛り上がらないで、私も紹介してよ~」


その女子はちょっとだけテレながらも、朋樹と浩也に笑顔を振りまく。川添と北見も浩也と朋樹のほうに向くと、その女子の紹介を始める。


「あー、ごめんごめん。高城君の失礼なリアクションで、思わずカッとなっちゃった。藤田君、高城君、彼女は藤女の友達で、椎名めぐみ。高校に入ってから仲良くなったんだ」


「あっ、初めまして、椎名めぐみです。いつも陽子ちゃんとはるはるがお世話になってましてって、これちょっと違う?まあいっか、よろしくね」


椎名はそう言って、屈託無い笑顔を見せる。浩也は一瞬、どこに突っこむべきかを考えるが、初対面なので自重し、取り合えず自己紹介を優先する。


「ああ、俺達は海生高校の2年で、高城浩也、こっちは藤田朋樹。2人ともえーと、北見と川添の中学時代の同級生だ。もう1人、高校の同級生の奴が……」


浩也がそう言って、まだ来ていない孝太の事も説明しようとしたところで、「おーい、朋樹、浩也ーっ」とタイミング良く孝太が大声を上げて、走ってくる。


「やーすまん、少し遅れた」


少し息を切らしながら、孝太は謝罪と共に近くに来たところで、浩也は紹介を続ける。


「そして、最後の1人、このガタイの良い奴が海生高校野球部、不動のレギュラーで、サードでクリーンナップを担う中川孝太だ」


「ええっ、何?いきなりっ」


しかしその説明に椎名が首を傾げる。


「くりーんなっぷ?サランラップ的な?」


おっと、今時の女子的な椎名さんには、野球の専門用語はハードルが高かったかと浩也は反省する。


「クリーンナップは簡単に言うと、ホームランをかっ飛ばす人だな。ホームランなら判るでしょ?」


「ふぇー、凄いね。中川君、ホームラン打つ人なんだー」


そう言って素直に喜ぶ椎名を見て、見た目の割に素直な子だななどと、浩也は失礼な事を思っている。孝太はと言うと、何やら浩也に弄られているのは理解しているが、どうリアクションして良いか判らず、「おおう」などと言っている。そんな状況を纏めるように、朋樹が集まりの説明をする。


「まあ、こっちのメンバーは全員海生高校の2年で、藤田朋樹、高城浩也、中川孝太の3人だ。女子は全員藤女のメンバーで川添春香、北見陽子と、椎名めぐみさんだな。ちなみに俺と浩也、川添と北見は中学の同級生だ。さて、今日のメンバーはこれで全員になるんだけど、今日は何をする?一応、カラオケとかって考えていたんだけど」


浩也は特段反対する要素も無いので、同意を示すように頷くと、他のメンバーも同様に頷いていく。


「なら問題ないな。取り合えずカラオケで親睦を深めつつ、その後の事はその時考えよう」


朋樹はそう纏めると、先頭に立って店へと足を向ける。その隣に川添が並んで歩み寄り、浩也は同じタイミングで歩き出した北見と並んで歩き出し、最後尾は孝太と椎名が並んでついてくる。今回気になる女子がいると朋樹は言っていたが、恐らくは川添だろう。思い返すと、部活の時も何やら楽しげにしゃべっていたので、隣を歩く北見よりかは確率が高い気がした。そんな事を浩也がぼんやり考えていると、北見が浩也に話かけてくる。


「高城君、本当に久しぶりだよね。卒業以来だから1年ちょい振りくらい?」


「おー、そうだな。去年のクラス会に出てないから、その位になるか」


浩也も知っている顔なので、猫かぶりモードを出さずに素のままで返事をする。今日いる2人は中学時代に理緒以外で素で会話をする数少ないクラスメートの女子だった。北見は委員長という立場から何事にも仕切りたがりで、クラス活動に積極的でなかった浩也に対し、ワーワーと世話を焼きに来る奴で、浩也も自然と会話をするようになっていた。川添はサッカー部マネージャーとして、部員だった浩也と朋樹と一緒にいる機会が多く、話す機会は少なくなかった。


「そうよ、クラス会こないんだもん。久しぶりに会えると思ったから、楽しみにしてたのに」


そう言って北見は少し頬を膨らませる。浩也は少しだけ申し訳無さそうに弁明する。


「それは悪かったな。去年の12月だっけ?丁度その時期、従姉のお店のオープンの話で、引っ張りまわされていたんだ。だから行きたくても行けなかったんだよ。とは言え、行っても朋樹とつるんで話してるくらいで、高校と変わり映え無かったかも知れないけどな」


実際にその時期は店のオープン準備で慌しかった。浩也は完全に雑用係だったが、休みはほぼそれで潰されたといって良い。ただその時期に由貴の旦那である店長の雄二と親しくなれたので、浩也としては不満では無かった。


「ふふふっ、でも理緒も高城君がいなくて、つまんなそうだったよ。他の男子が話しかけても素っ気無いんだもん。男子達ががっかりしてたわよ。高校でも仲良くしているんでしょ?」


「うへぇ、委員長までそれ言うの?仲が良い悪いで言えば、仲は良いけど、別に委員長とかと変わらないぞ」


浩也の感覚では、理緒も委員長もそれ程変わらない。強いてあげれば、理緒の方が付き合いが長い分、親しく感じる程度だった。


「もう、その委員長っての止めてよ。私には北見陽子って名前があるのよ。この間のクラス会でもみんな委員長って言ってきて、もうっ」


「はははっ、委員長が似合うんだからしょうがないだろ。それに今更、北見さんって言うのもなぁ」


「むーっ、なら理緒みたいに陽子って名前で呼んで貰うのもって、なんだかそれも恥ずかしいわね」


北見は自分で言っておいて、ちょっと顔を赤らめる。浩也はそれを見て、良いからかいネタが出来たと煽りだす。


「俺は別に、浩也って呼ばれても、陽子って呼んでも構わないぞ。ある意味、理緒で慣れているからな。折角だし陽子で統一しようか」


「ちょっ、ちょっと待って、男子と名前呼びってハードル高すぎっ。もう理緒、何で名前呼びなんてしてるのっ」


普段の冷静沈着なイメージとはうって変わってあたふたしながら、ここに居ない理緒に八つ当たりしている北見を見て、浩也は笑い声を上げる。すると、後ろから椎名と孝太が口を挟んでくる。


「あれれ、陽子ちゃんがそんなに動揺するなんて、珍しいねー。2人で何話してるの?」


「浩也が女子とノリノリで会話してるだとっ。そんな姿、井上さん以外に見た事ないっ」


すると浩也が椎名の声だけを拾って、返事をする。


「いや、委員長が委員長って呼ぶなと言ったから、名前で呼び合う事にしたんだ。なあ陽子」


「いやーっ、やめてーっ、意識し出すと顔が赤くなるのが止まなくなるからーっ」


北見はそう言って、赤らむ顔を両手で覆って恥ずかしがる。すると孝太が合点のいった顔で解説を始める。


「成程、井上さんにはない新鮮なリアクション。浩也のS心が止まらない感じか」


「陽子ちゃん、責められ慣れてないから、凄く可愛くなってる。でもいいなぁ。私も名前呼びがいいーっ」


浩也は流石孝太、良く判っているなと満足げな目線を送った後、椎名に聞き返す。


「椎名さんも名前呼びがいいのか?えーと、めぐみだっけ?」


「そう、平仮名でめぐみ。私は浩也くんでいい?」


「ああ、いいよ。じゃあ、改めてよろしくな、めぐみ」


「うん、よろしくね。浩也君」


その2人のやり取りを聞いた北見と孝太は愕然とする。北見は今まで恥ずかしがっていた自分って一体、と落ち込みはじめ、孝太は浩也の脅威的な女子との距離の詰め方に恐れ慄く。


「浩也、お前テレとかないのか……」


そう零す孝太に浩也は首を傾げる。


「んー、でもなんかめぐみもテレが無いし、呼ばれ慣れている感じがするしな。俺も呼ばれ慣れているって言えば、呼ばれ慣れているし」


正直、浩也には、名前呼びに免疫がある。従姉の由貴を含めるかはアレだが、有里奈に理緒と海生高校のトップクラスの人気を誇る女子を名前呼びしているのだ。今更、テレる要素がない。それにめぐみという女子の自然さも一助にあると思う。今日初めて会ったのに、気負いが無いので、浩也も構えなくて良いのだ。距離の詰め方で言うなら、彼女こそ抜群なのだろう。


「うふふ、私はお兄ちゃん達が2人とも名前で呼ぶから男子にそう呼ばれても平気なのかも。女子もめぐかめぐみって呼ぶし」


「はぁ~、確かにめぐは距離の詰め方が凄く上手いのよ。他意もないし、いつの間にか仲良くなっちゃうみたいな」


無邪気に話すめぐみとそのめぐみに毒気を抜かれた陽子は、仲良さげに微笑み合う。するとそこに鼻息荒く、孝太が口を出す。


「なっ、なら俺もめぐみちゃんって呼んでいいか?俺も孝太でいいからっ」


「んー、いいよ。なら私は孝太君って呼ぶね」


「おおーっ、女子に名前呼び……。浩也、俺、今日来て良かったよ」


「いや、まだ何もしてないんだが。まあいいか。それと委員長は陽子で決まりな」


「うっ……うん、浩也……君」


陽子はまだ吹っ切れないのか、顔を赤らめながら浩也を名前呼びする。すると前を歩いていた朋樹と川添が浩也達に近づいてくる。


「おーい、お前ら何やってんだ。早く行こうぜ」


「ああ、悪い悪い。委員長が委員長と呼ばれるのを嫌がったから、陽子って呼ぶ事にした。陽子は俺の事を浩也君って呼ぶ事になったから。ちなみに椎名さんは、めぐみ、孝太は孝太君って呼ばれる。朋樹は朋樹で良いとして、マネージャーはどうするか」


「お前、普通に苗字で呼べば良いのに、何だっていきなり名前呼びなんだか」


朋樹は浩也が悪ノリしているのに気付き、軽く溜息をつく。見ると北見は顔を赤らめ、陽子と呼ばれるたびにプルプルしている。普段には見せない北見の姿に、確かにこれは可愛いし、からかいがいがあるなとも思う。するとめぐみが川添の呼び名に提案をする。


「はるはるの呼び名ははるはるが良いよー」


「ええーっ、ちょっと待って。男子にそのあだ名で呼ばれたら、恥ずかしくて死んじゃうよーっ。それだけは勘弁してっ」


川添は突然の爆弾発言に両手を振って、拒否をする。それを見て浩也は思わず、ニヤリとする。


「ほほう、ならマネージャーははるはるで決定だな。俺は浩也でもひろひろでも構わん、好きに呼べ」


「浩也、ひろひろって……」


悪ノリ継続の浩也に、呆れ口調で孝太が突っ込む。


「いやーっ、それなら春香、春香って呼んでっ。私は浩也君にするからっ」


顔を赤らめ、半泣きで慌てふためく春香と悪ノリで楽しんでいる浩也を眺めながら、朋樹はどのタイミングで春香と名前呼びするかを考えていた。


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