第19話 見つけた(5)
壁を抜けることができたエルトルーシオ、紫苑、サラセオール王子の3人は、意気揚々と進んで行くが、ここで分かれ道に。どちらに進むか思案のしどころだと、エルトルーシオは言う。
間違った道を選択すれば時間を無駄にしてしまう。しかしどちらが正解なのか解るはずもない。
かといって、二手に分かれるのもリスクがある。
「さっきと同じように、先に進むためのヒントがあるかも」
紫苑の言葉に他の2人はうなずく。
「さあ、どちらに進むか」
腕組みをするエルトルーシオに紫苑は「ヒントを探そう」と言う。
「そうだな。まずはそれからだな」
しばらく3人はあたりの壁や床を注意深く探した。
「こんなことばっかりしていると、なかなかたどり着けないな」
王子は小さくため息をつく。
エルトルーシオも紫苑も心の中ではそう思っていたが、考えても仕方がないと、目の前の最善を尽くそうとしていた。
しかしなかなか見つからないヒントを探すだけで、どんどん時間が経ってしまう。エルトルーシオに焦りの色が差しかけたとき、サラセオール王子がある提案をする。
「ここで時間を潰すのならば、取りあえずどちらかに進んでみて、そのまま行ければよし、行けなければ引き返してもう一方に進むっていうのはどうだろう?」
「そうだな……」
エルトルーシオは少し考えて答える。
「それもいいかもしれないな。だが全員で行くのは危険だ。1人はここでヒントを探す。2人がそれぞれ違う道を行く、というのがいいだろう」
サラセオール王子と紫苑がうなずき、エルトルーシオの提案に同意する。
「しかし」
エルトルーシオは続ける。
「途中、どんな仕掛けが待っているか解らない。危険な場合もある。道を行く者は、注意深く進み、くれぐれも油断しないように。そして無理をしないように」
「了解」
「解った」
紫苑と王子はそれぞれ答えた。
「では早速。私と王子はそれぞれの道を、シオンはここでヒントを探す」
「え、オレも道を行きたいよ」
「いや、シオンは先ほども仕掛けを見つけた。注意深く周りをよく見ているから、ここで探してくれ。頼りにしているぞ」
エルトルーシオに紫苑は「でも……」と言いかけて、言葉を飲み込んだ。頼りにしていると言われ、それに応えようと思ったからだ。
紫苑は、こういうとき梨里香ならきっと、小石を投げてどっちに進むか決めるんだろうなと、ふと思った。クスリと笑い、近くに落ちていた小石を拾い、真上に投げてみる。
真上に投げたのだから、当然真下に落ちてくる。その後転がった方に進もうと、梨里香ならそうするだろう。
しかしその小石は上まで上がり、落下をはじめるところで、いきなり右側の道へと飛んでいったのだ。
「え!?」
驚いた紫苑は他の小石を拾い、また投げてみる。
やはり同じように右側の道へ飛んでいく。
「これは……」
一体何が起こっているのか、紫苑は飛んでいった小石を目で追う。
「どうした」
問いかけたエルトルーシオに、紫苑は小石を拾い、投げてみせる。
何かに引き寄せられているかのごとく、不自然な動きで吸い寄せられて、まるで意思を持っているかのように空中で落下点を変える。
「これは一体……」
サラセオール王子は驚き、エルトルーシオと顔を見合わせた。
「よく気がついたな」
エルトルーシオは感心して紫苑に言う。
「いや、リリィだったら石でも投げて決めるかな、と思ってなんとなくやってみただけ」
「それでもよくやった」
褒められて満更でもない様子の紫苑は、照れくさそうに左手で頬をかきながら笑う。
「さて」
改まった面持ちでエルトルーシオが切り出した。
他の2人に緊張が走る。
「この小石の落下した方に進むか、それとも反対に進むか」
「あっ」と王子と紫苑は顔を見合わせ、ふうと息をつく。
「状況が意味するところが解らないからな」
サラセオール王子の言葉に、少しがっかりしたように肩を落として紫苑が問う。
「また振り出しに戻ったってこと?」
エルトルーシオが腕を組みながら「うーん」とうなる。
「そういえば……」
王子が何かを思い出したように話しはじめた。
「数ヶ月前、この辺りの土地で、不思議な現象がいくつも起こっていると報告を受けた。そのことと何か関係があるのだろうか」
「その不思議な現象とは?」
エルトルーシオの言葉に、サラセオール王子は少し眉を寄せ答える。
「それが……正確な場所は定かではないが、よく晴れているにもかかわらず、このあたりの上空に突然暗雲が立ちこめたり、稲光のような閃光が降り注いだりしていると。それは街の至る所から何度も目撃されているということだ」
「なんと! 原因も解らないのだな」
サラセオール王子はうなずく。
紫苑は話を聞いて、まるでゲームやアニメの世界で描かれる魔王の城のようだな、と思った。しかし現実離れしすぎていて、口に出すことはしなかった。
「それがこの辺りだということだな」
エルトルーシオは渋い表情を浮かべ、続ける。
「いや、おそらくその現象の発端はこの屋敷だろう。ここには何か秘密がありそうだ」
紫苑の背中がぞくりとした。
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