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こちら、駒桜高校将棋部Outsiders  作者: 稲葉孝太郎
第16局 香子ちゃん、K戸に降り立つ編(2014年8月25日月曜〜26日火曜)
163/686

151手目 中高生将棋指しの人狼(5日目昼〜6日目昼)

「占い理由を言うわよ。4日目に占い師を騙ってきた大場おおばさんは、葛城かつらぎくんが言う通り、狐か狼のはず。私視点では、もうグレーに狼がいない可能性もあるわ。だから、大場さんの占い先を追っかけるか、あるいは大場さん占い。一番内訳がはっきりする大場さん占いを選択して、結果は○。どうやら溶けたみたいね」

 私の発言を聞き終えた松平まつだいらは、髪の毛をくしゃくしゃにする。

「あかんあかん、そういうことしたら、男前が台無しや」

「どっちか●出ししてくると思ったんだが……」

 どうやら共有は、2死体を予想していなかったようだ。

「それに、吊り縄が減った。占いを決め打ちしないとマズい」

「決め打ちもなにも、ひとりしか残っとらんで?」

裏見うらみを残すかどうかの決め打ちだ」

「……せやけど、グレー整理したほうが、エエんとちゃう?」

 共有の意見が割れた。

 松平は、私に向き直る。

「裏見は、内訳と噛み先の説明をしてくれ。なんで2死体なんだ?」

「現状の内訳は、鳴門なるとくんが狼、大場さんが狐で確定。これまでの占い結果と霊能結果から考えて、ほかに吊れている狼はいないわ。桐野きりのさんが狂人で偽霊媒だったなんてレアケは、追わないから。ようするに、悪くて2w1k、良くて2w」

「裏見視点だと、3吊り3人外の可能性もあるのか……」

「真偽不明のまま私を吊るなんてことはしないでね。ちゃんと決め打ちして」

「あ、ちょっと待ってねぇ」

 葛城くんが前に出た。してやったりという顔をしている。

 私は、なんだかイヤな予感がした。

「ふたば、どうした?」

「裏見先輩は、破綻してるよぉ。狩人CO」


『ふたばの、男の娘狩人日記』

《初日夜》

 えへへぇ、狩人になっちゃった。がんばって護衛するよぉ。

 でも、初日はムリぃ。

 護衛先:なし

 死体:第一犠牲者


《2日目夜》

 1−1スタート……不穏だねぇ。護衛先は裏見先輩一択かなぁ。

 我孫子あびこくんは、やたらしゃべってるのが、生存意欲を感じるねぇ。

 なにか役を持ってそうだよぉ。

 護衛先:裏見先輩

 死体:エリーちゃん


《3日目夜》

 いきなりの●出しぃ……うーん、大場さんの動きが気になるよねぇ。

 もしかして、潜伏占いアピールかなぁ?

 でも、グレーを護衛するわけにはいかないし、裏見先輩を守るよぉ。

 護衛先:裏見先輩

 死体:お花先輩

 

《4日目夜》

 ふえぇ……お花先輩、ごめんなさぁい……霊能護衛しとけばよかったかも……。

 後悔先に立たないから、がんばって護衛継続するよぉ。正念場ぁ。

 大場さんが遊子ゆうこちゃんに占い予告……遊子ちゃん、狐っぽいんだよねぇ。

 それに、大場さんが潜伏占い師っていうのは、初日の動きから納得ぅ。

 ボクのなかでは、裏見先輩のほうがあやしくなってきたかなぁ。

 ここは遊子ちゃんを護衛して、呪殺なら確定させちゃおう。

 護衛先:遊子ちゃん

 死体:遊子ちゃん、大場さん

 

「というわけで、遊子ちゃんは貫通呪殺だよぉ。大場さんが真で確定ぃ」

 ちょ、ま。

「待つでやんす。狩人CCO」


『我孫子の、大喜利狩人日記』

《初日夜》

 あっしの役職と掛けまして、除草剤と解きます。

 その心は? よく枯(狩)れます。

 というわけで、狩人に就任したでやんす。希望は狂人だったでやんすが。

 初日はムリでやんす。

 護衛先:なし

 死体:第一犠牲者


《2日目夜》

 男の娘のスカートと掛けまして、スクラッチの当たりと解きます。

 その心は? めくってみてビックリです。

 1ー1でやんすか。潜伏占いを見てるひとが、何人かいるでやんすね。

 でもここは、占い護衛一択でやんす。

 大場姐さんは変な絡みしてたでやんすが、狂アピかなにかでやんすか?

 護衛先:裏見姐さん

 死体:ポーン姐さん

 

《3日目夜》

 ハンバーグと掛けまして、悲恋のカップルと解きます。

 その心は? あいびきがお似合いです。

 あいかわらず、対抗占い師は出てこないでやんす。

 占い護衛を継続するでやんす。

 護衛先:裏見姐さん

 死体:お花姐さん

 

《4日目夜》

 ドリームチームと掛けまして、クリスマスデートと解きます。

 その心は? どちらも金が掛かります。

 大場姐さん、やっぱり役持ちだったでやんすね。

 狂人がグレーの狼を囲いに来てると思うでやんす。

 こんなので護衛先をぶらされたりはしないでやんす。

 護衛先:裏見姐さん

 死体:来島姐さん、大場姐さん

 

「大場姐さんが狂人という読みは、外れてやんした。でも、裏見姐さんが真でやんす」

 危ない、危ない。葛城くんにハメられるところだった。

 私がホッとしたのとは対照的に、松平たちは混乱していた。

「か、狩人2COだと?」

「お、落ち着いてや。これで一気にグ……」

「ストップ。まだ終わりじゃないよ。狩人CCO」

 ふわッ!?


陶工とうこう少女の、かま焼き狩人日記』

《初日夜》

 ボクが狩人か。重要な役職になっちゃったな。村のために頑張る。

 だけど、初日は勘弁ね。

 護衛先:なし

 死体:第一犠牲者

 

《2日目夜》

 1ー1……初日欠けじゃなきゃいいけど。

 昼に生存意欲を感じたのは、我孫子と葛城さんかな。ここはなにか持ってそう。

 とりあえず、占い護衛。

 護衛先:裏見先輩

 死体:ポーンさん

 

《3日目夜》

 大場さんが怪しくなった。占いCOの準備にみえる。

 あと、我孫子は中身のない会話をしてるのが気になる。

 狐か狂人かもしれない。

 護衛先:裏見先輩

 死体:桐野先輩

 

《4日目夜》

 ああ、これは……護衛先に悩むな。

 どちらが真かと言われたら、ボクは大場さん推しかな。

 振り返ってみると、潜伏占い師の動きにみえる。

 裏見先輩は、昼間の発言がフラフラしていた。ここが狼だろう。

 だとすれば、今夜は大場さんを噛みにくるね。大場さん護衛。

 護衛先:大場さん

 死体:来島さん、大場さん

 

「以上、占いの真贋については間違ってたけど、ボクが真狩人だよ。大場さんが破綻」

 狩人3CO!? なによ、これッ!?

 さっきまで冷静だった難波なんばさんも、目を白黒させていた。

「な、なんやこれ……? 狼2露呈かいな?」

「いや、さすがにそれはないだろう。狂人混じりだ」

 と松平。これには難波さんが、

「狂人が狩人COして、どないするん?」

 と反論した。

「ボクが説明するよ。おそらく、葛城さんが狼で、我孫子が狂人。葛城さんの狩人COは、もちろん真占い師の裏見先輩を破綻させるためだね。ポーンさんで狩人が抜けたとみて、賭けに出たんだと思う」

「我孫子が狂人ってのは、どない推理なの?」

「簡単だよ。裏見先輩をご主人様だと思って、かばいに出たんだ。我孫子視点、葛城さんの狩人COは、いかにもホンモノに見えるからね。様子見の時間が十分じゃなかったから、こうしてボクのCCOを喰らっちゃったわけ」

 なんという説得力。

 これには、葛城くんが動揺した。

「ち、ちがうよぉ。ボクがホンモノの狩人だよぉ」

「じゃあ、葛城さん視点、内訳を言ってみてよ」

「えーとねぇ、我孫子くんが狂人で、萩尾はぎおくんが狼だよぉ」

「狼のボクが、3人目で出る理由は? なにもメリットないけど?」

「そ、それはねぇ……うーん……裏見先輩をかばうためだよぉ」

「裏見先輩をかばうのは、狂人の我孫子に任せればいいだろう? なんでかぶせるの?」

「に、二重にかばいたかったんだよぉ」

「ラスグレの狼を犠牲にしてまで? ボク、白かった自信があるよ?」

 そうそう、萩尾さんは白かった。議論も積極的だったし。

 そもそも、私を一番叩いてたのが、萩尾さんじゃない。

《残り30秒です》

「あ、あかん、どないする?」

「とりあえず狩人ランだッ!」

 共有は、狩人ランを選択した。

「あっしにも弁明させて欲しいでやんす。あっしの考えでは、葛城姐さんが狂人で、萩尾姐さんが狼でやんす。葛城姐さんは、ご主人様を読み間違えて、破綻させたでやんす」

 それは、萩尾さんが狼である理由を説明してないんだけど。

《それでは、投票してください》


 我孫子 → 葛城

 淡路  → 萩尾

 裏見  → 葛城

 葛城  → 萩尾

 捨神  → 我孫子

 難波  → 我孫子

 萩尾  → 葛城

 松平  → 葛城

 

 村民会議の結果 葛城ふたばくんが処刑されました。

 

 

 ワオーン

 

【6日目 昼 6/16名】


 難波なんば千昭ちあきさんが無惨な姿で発見されました。

 

「占いCO! 捨神すてがみくん●!」

「狩人CO、護衛先、松平先輩」

「狩人CO、護衛先、裏見姐さんでやんす」

 渾身の占い宣言。

「占い理由を説明するわ。まず、私を救済に来た我孫子くんは、非狼。だから、ここは真狩人か、あるいは私を狼と勘違いした狂人で決め打ち。大場さんの○で残ったのは、捨神くんだけ。最初からあやしんでたところだし、確認占い。結果は●」

 捨神くんは、おどおどするかと思いきや、妙に冷静だった。

「アハッ、裏見先輩、内訳が破綻しかけてませんか?」

「どこが? いちゃもんは拒否するわよ?」

「裏見先輩の内訳って、大場さんが狐、萩尾さん、我孫子くん、葛城くんのなかに狼と狂人がいて、残りの狼はボクと鳴門くんなんですよね? つまり、狼は全潜伏。狐がなぜか狼を囲いに出て、グレーの狼が狩人CO。どう考えてもおかしいですよ?」

「反論させてもらうわね。狼視点、初日の私が真なのか狂人なのかは、分からなかったはずよ。淡路さんは狼じゃないから。狼が全潜伏しても、なにも問題はナシ。3日目には大場さんも占いCOの気配を見せていて、人外が騙りに出ることは確定。ここで、大場さんが狐の可能性を考慮せずに、全潜伏を継続しちゃったんでしょ。大場さんが助っ人の狂人だと思ったわけね。最後に、葛城くんは私を破綻させに来た狼よ。グレーから出て来ても、不思議じゃないわ」

「裏見先輩、葛城くんを狼でみてるんですか?」

「そうよ……なにか不満でも?」

「葛城くんが狼ってことは、我孫子くんと萩尾さんは真狂ってことですよね? つまり、狂人が裏見先輩をかばいに来たか、あるいは狩人2COのあとで、狂人がCCOしたかのどちらかになると思うんですけど、これって説明できます?」

「狂人は、狼がだれか分からないでしょ。3人目の萩尾さんが狂人はおかしいから、我孫子くんが狂人なんじゃないかしら。我孫子くんは、私をご主人様だと勘違いして、葛城くんの狩人COにかぶせてきたのよ。残念ながら、私は狼じゃないんだけど」

「それは、『狂人が勘違いしうる』っていうだけで、具体的にどう勘違いしたのか、説明していませんよね?」

「我孫子くんは、初日から私にすり寄ってたわ。あれは、占い避けをしつつ、私の真贋を見極めてたんでしょう。読み間違えたみたいだけど」

「どうして狂人が占い避けするんですか? むしろ占われたいでしょう?」

「1ー1で占われたら、狼視点で噛み先候補になるからよ。狂人が最も避けたいのは、狼に噛まれること。サポートどころか、足を引っ張っちゃうもの」

「ちょっと待って欲しいでやんす」

 パシリと、扇子を閉じる音がした。私と捨神くんは、議論を中断する。

「あっしが狂人前提で議論をされちゃ、困るでやんす」

「なに? 自分が狼だって言いたいの?」

 おなじく狩人候補の萩尾さんは、我孫子くんを挑発した。

「ちがうでやんす。あっしが真狩人でやんすよ」

「ふぅん、じゃあ、ボクと葛城くんの内訳を言ってみてよ」

「葛城くんが狼で、萩尾さんが狂人でやんす」

「3人目で出てきたボクが狂人? かなり苦しい内訳だね」

「ちゃんとした理由があるでやんすねぇ。昨日、あっしがCOした時点で、完グレだったのは萩尾姐さんだけでやんす。あのまま狩人放置でグレー詰めになった場合、指定されるのは萩尾姐さんだったでやんすよ。だから、共有が動くまえに、狩人COしたでやんす」

 む……なかなか説得力がある。

「へぇ、よくそんな理由を思いつけるね。でもさ、あの時点で狐死亡は確定。仮にボクが狂人だとしたら、我孫子と葛城さんのどちらかがご主人様だよね。自分がCOして狩人ランになった場合、ご主人様が吊られちゃう可能性があるんだけど?」

「デメリットがあれば、メリットもあるでやんす。狩人ランで真狩人から吊れば、今日の時点で2w1k、つまり、半PPでやんす。とはいえ、あっしが真狩りでやんすから、その点は御愁傷様と言うしかないでやんす」

「なるほど、そういうメリットはあるね。でもさ、仮に真から吊れたとして、自分が偽狩人だってことを、どうやって狼にアピールするの? ボクに狂アピ要素あった?」

「萩尾姐さんは、裏見姐さんにやたら突っかかってたでやんす。あれは、裏見姐さんからの占われ回避だったと思うでやんす。真占い師に占われたら、噛まれるでやんすからね」

「そんなの、狂アピのうちに入らないよね?」

 ここで、淡路さんが松平に話しかけた。

「そろそろ、仮指定してください」

 松平は、あごに手をあてて、じっくりと考え込む。

 将棋のとき並に真剣だ。

「……萩尾だ。萩尾を吊る」

「!?」

 萩尾さんは、一瞬だけ驚いたあと、くちびるを結んだ。

「拒否します。どうして真狩り要素の一番強いボクなんですか?」

「昨日の夜、難波と相談した結果だ」

「理由を教えてください」

「まず、狩人に2wなんて内訳はみない。真狂狼で固定する。ふたばが真の場合は、裏見が破綻して、大場の真が確定。萩尾が真の場合は、大場が破綻して、裏見の真が確定。我孫子が真の場合は、裏見と大場のどちらが真か分からない。ここまでは、いいな?」

「ええ、いいですよ」

「まず、葛城が真の場合を考える。破綻した裏見は、もちろん狼だ。大場が見つけた狼は米子だけだが、我孫子に○を打っているから、我孫子の狂人も確定。つまり、裏見−米子−萩尾で3wになる。次に、萩尾が真の場合は、大場の狐が確定して、狼は鳴門−捨神−我孫子or葛城だ。最後に、我孫子が真の場合は、裏見が真占い師なら鳴門−捨神−萩尾or葛城で、大場が真占い師なら裏見−米子−萩尾で確定。なにか異論はあるか?」

「ないです」

「じゃあ、おまえと我孫子、どっちの名前の頻度が高い?」

 萩尾さんは、軽くタメ息をつく。

「なるほど……確率的に、ボクは真狼目、我孫子は真狂目。現時点で2wなら、ボクを吊らないと村の敗北が確定ってことですか」

「そういうことだ。悪いが、吊られてくれ」

 萩尾さんは、そのクールな顔を左に向け、強気な態度をとる。

「拒否します」

「それは、狼COととっていいのか?」

「いいえ、違います。ボクが真狼目、我孫子が真狂目なのは認めましょう。でも、今日ボクをケアで吊ったら、明日は4人で1w1k残りになります。村勝ちはありません。つまり、今日が実質的な最終日なんです。勝ちに行くなら、今日決め打ちしてください」

 松平は、ふたたび髪の毛をくしゃくしゃにする。

「プレイスタイルの問題になってきたな……」

「プレイスタイルの問題だけじゃありません。我孫子は狂人だと思ってますけど、葛城さんのほうが狂人で、我孫子が狼なら、ボクを吊ってもそのまま負けです」

「我孫子狼はみない。我孫子狼なら、裏見が真だ。葛城が裏見を破綻させに来た時点で、葛城狂人は透ける。つまり、我孫子狼の葛城狂人は、組み合わせとしてありえない」

 萩尾さんは、論負けを認めた。

「分かりました。もう村勝ちはありませんが、引き分けもいいでしょう」

《残り30秒です》

 見計らったように、アナウンスが入る。

 松平は、淡路さんに向き直った。

「淡路は、なにか意見あるか?」

「そうですね……明日、私か松平さんが残されることになります。判定役になったとき、裏見さんと捨神くんのどちらに投票するか、今晩考えておきます」

 なんか、最後の最後までステルス目だったわね。

「頼んだぞ。裏見と捨神も、殴り合いの準備をしておいてくれ。おたがいの視点で、我孫子の真はまだあるからな。勝ちを捨てる必要はない」

「了解」

「アハッ、がんばります」

《それでは、投票してください》


 我孫子 → 萩尾

 淡路  → 萩尾

 裏見  → 萩尾

 捨神  → 萩尾

 萩尾  → 捨神

 松平  → 萩尾


 村民会議の結果 萩尾はぎおもえさんが処刑されました。

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