151手目 中高生将棋指しの人狼(5日目昼〜6日目昼)
「占い理由を言うわよ。4日目に占い師を騙ってきた大場さんは、葛城くんが言う通り、狐か狼のはず。私視点では、もうグレーに狼がいない可能性もあるわ。だから、大場さんの占い先を追っかけるか、あるいは大場さん占い。一番内訳がはっきりする大場さん占いを選択して、結果は○。どうやら溶けたみたいね」
私の発言を聞き終えた松平は、髪の毛をくしゃくしゃにする。
「あかんあかん、そういうことしたら、男前が台無しや」
「どっちか●出ししてくると思ったんだが……」
どうやら共有は、2死体を予想していなかったようだ。
「それに、吊り縄が減った。占いを決め打ちしないとマズい」
「決め打ちもなにも、ひとりしか残っとらんで?」
「裏見を残すかどうかの決め打ちだ」
「……せやけど、グレー整理したほうが、エエんとちゃう?」
共有の意見が割れた。
松平は、私に向き直る。
「裏見は、内訳と噛み先の説明をしてくれ。なんで2死体なんだ?」
「現状の内訳は、鳴門くんが狼、大場さんが狐で確定。これまでの占い結果と霊能結果から考えて、ほかに吊れている狼はいないわ。桐野さんが狂人で偽霊媒だったなんてレアケは、追わないから。ようするに、悪くて2w1k、良くて2w」
「裏見視点だと、3吊り3人外の可能性もあるのか……」
「真偽不明のまま私を吊るなんてことはしないでね。ちゃんと決め打ちして」
「あ、ちょっと待ってねぇ」
葛城くんが前に出た。してやったりという顔をしている。
私は、なんだかイヤな予感がした。
「ふたば、どうした?」
「裏見先輩は、破綻してるよぉ。狩人CO」
『ふたばの、男の娘狩人日記』
《初日夜》
えへへぇ、狩人になっちゃった。がんばって護衛するよぉ。
でも、初日はムリぃ。
護衛先:なし
死体:第一犠牲者
《2日目夜》
1−1スタート……不穏だねぇ。護衛先は裏見先輩一択かなぁ。
我孫子くんは、やたらしゃべってるのが、生存意欲を感じるねぇ。
なにか役を持ってそうだよぉ。
護衛先:裏見先輩
死体:エリーちゃん
《3日目夜》
いきなりの●出しぃ……うーん、大場さんの動きが気になるよねぇ。
もしかして、潜伏占いアピールかなぁ?
でも、グレーを護衛するわけにはいかないし、裏見先輩を守るよぉ。
護衛先:裏見先輩
死体:お花先輩
《4日目夜》
ふえぇ……お花先輩、ごめんなさぁい……霊能護衛しとけばよかったかも……。
後悔先に立たないから、がんばって護衛継続するよぉ。正念場ぁ。
大場さんが遊子ちゃんに占い予告……遊子ちゃん、狐っぽいんだよねぇ。
それに、大場さんが潜伏占い師っていうのは、初日の動きから納得ぅ。
ボクのなかでは、裏見先輩のほうがあやしくなってきたかなぁ。
ここは遊子ちゃんを護衛して、呪殺なら確定させちゃおう。
護衛先:遊子ちゃん
死体:遊子ちゃん、大場さん
「というわけで、遊子ちゃんは貫通呪殺だよぉ。大場さんが真で確定ぃ」
ちょ、ま。
「待つでやんす。狩人CCO」
『我孫子の、大喜利狩人日記』
《初日夜》
あっしの役職と掛けまして、除草剤と解きます。
その心は? よく枯(狩)れます。
というわけで、狩人に就任したでやんす。希望は狂人だったでやんすが。
初日はムリでやんす。
護衛先:なし
死体:第一犠牲者
《2日目夜》
男の娘のスカートと掛けまして、スクラッチの当たりと解きます。
その心は? めくってみてビックリです。
1ー1でやんすか。潜伏占いを見てるひとが、何人かいるでやんすね。
でもここは、占い護衛一択でやんす。
大場姐さんは変な絡みしてたでやんすが、狂アピかなにかでやんすか?
護衛先:裏見姐さん
死体:ポーン姐さん
《3日目夜》
ハンバーグと掛けまして、悲恋のカップルと解きます。
その心は? あいびきがお似合いです。
あいかわらず、対抗占い師は出てこないでやんす。
占い護衛を継続するでやんす。
護衛先:裏見姐さん
死体:お花姐さん
《4日目夜》
ドリームチームと掛けまして、クリスマスデートと解きます。
その心は? どちらも金が掛かります。
大場姐さん、やっぱり役持ちだったでやんすね。
狂人がグレーの狼を囲いに来てると思うでやんす。
こんなので護衛先をぶらされたりはしないでやんす。
護衛先:裏見姐さん
死体:来島姐さん、大場姐さん
「大場姐さんが狂人という読みは、外れてやんした。でも、裏見姐さんが真でやんす」
危ない、危ない。葛城くんにハメられるところだった。
私がホッとしたのとは対照的に、松平たちは混乱していた。
「か、狩人2COだと?」
「お、落ち着いてや。これで一気にグ……」
「ストップ。まだ終わりじゃないよ。狩人CCO」
ふわッ!?
『陶工少女の、窯焼き狩人日記』
《初日夜》
ボクが狩人か。重要な役職になっちゃったな。村のために頑張る。
だけど、初日は勘弁ね。
護衛先:なし
死体:第一犠牲者
《2日目夜》
1ー1……初日欠けじゃなきゃいいけど。
昼に生存意欲を感じたのは、我孫子と葛城さんかな。ここはなにか持ってそう。
とりあえず、占い護衛。
護衛先:裏見先輩
死体:ポーンさん
《3日目夜》
大場さんが怪しくなった。占いCOの準備にみえる。
あと、我孫子は中身のない会話をしてるのが気になる。
狐か狂人かもしれない。
護衛先:裏見先輩
死体:桐野先輩
《4日目夜》
ああ、これは……護衛先に悩むな。
どちらが真かと言われたら、ボクは大場さん推しかな。
振り返ってみると、潜伏占い師の動きにみえる。
裏見先輩は、昼間の発言がフラフラしていた。ここが狼だろう。
だとすれば、今夜は大場さんを噛みにくるね。大場さん護衛。
護衛先:大場さん
死体:来島さん、大場さん
「以上、占いの真贋については間違ってたけど、ボクが真狩人だよ。大場さんが破綻」
狩人3CO!? なによ、これッ!?
さっきまで冷静だった難波さんも、目を白黒させていた。
「な、なんやこれ……? 狼2露呈かいな?」
「いや、さすがにそれはないだろう。狂人混じりだ」
と松平。これには難波さんが、
「狂人が狩人COして、どないするん?」
と反論した。
「ボクが説明するよ。おそらく、葛城さんが狼で、我孫子が狂人。葛城さんの狩人COは、もちろん真占い師の裏見先輩を破綻させるためだね。ポーンさんで狩人が抜けたとみて、賭けに出たんだと思う」
「我孫子が狂人ってのは、どない推理なの?」
「簡単だよ。裏見先輩をご主人様だと思って、かばいに出たんだ。我孫子視点、葛城さんの狩人COは、いかにもホンモノに見えるからね。様子見の時間が十分じゃなかったから、こうしてボクのCCOを喰らっちゃったわけ」
なんという説得力。
これには、葛城くんが動揺した。
「ち、ちがうよぉ。ボクがホンモノの狩人だよぉ」
「じゃあ、葛城さん視点、内訳を言ってみてよ」
「えーとねぇ、我孫子くんが狂人で、萩尾くんが狼だよぉ」
「狼のボクが、3人目で出る理由は? なにもメリットないけど?」
「そ、それはねぇ……うーん……裏見先輩をかばうためだよぉ」
「裏見先輩をかばうのは、狂人の我孫子に任せればいいだろう? なんでかぶせるの?」
「に、二重にかばいたかったんだよぉ」
「ラスグレの狼を犠牲にしてまで? ボク、白かった自信があるよ?」
そうそう、萩尾さんは白かった。議論も積極的だったし。
そもそも、私を一番叩いてたのが、萩尾さんじゃない。
《残り30秒です》
「あ、あかん、どないする?」
「とりあえず狩人ランだッ!」
共有は、狩人ランを選択した。
「あっしにも弁明させて欲しいでやんす。あっしの考えでは、葛城姐さんが狂人で、萩尾姐さんが狼でやんす。葛城姐さんは、ご主人様を読み間違えて、破綻させたでやんす」
それは、萩尾さんが狼である理由を説明してないんだけど。
《それでは、投票してください》
我孫子 → 葛城
淡路 → 萩尾
裏見 → 葛城
葛城 → 萩尾
捨神 → 我孫子
難波 → 我孫子
萩尾 → 葛城
松平 → 葛城
村民会議の結果 葛城ふたばくんが処刑されました。
ワオーン
【6日目 昼 6/16名】
難波千昭さんが無惨な姿で発見されました。
「占いCO! 捨神くん●!」
「狩人CO、護衛先、松平先輩」
「狩人CO、護衛先、裏見姐さんでやんす」
渾身の占い宣言。
「占い理由を説明するわ。まず、私を救済に来た我孫子くんは、非狼。だから、ここは真狩人か、あるいは私を狼と勘違いした狂人で決め打ち。大場さんの○で残ったのは、捨神くんだけ。最初からあやしんでたところだし、確認占い。結果は●」
捨神くんは、おどおどするかと思いきや、妙に冷静だった。
「アハッ、裏見先輩、内訳が破綻しかけてませんか?」
「どこが? いちゃもんは拒否するわよ?」
「裏見先輩の内訳って、大場さんが狐、萩尾さん、我孫子くん、葛城くんのなかに狼と狂人がいて、残りの狼はボクと鳴門くんなんですよね? つまり、狼は全潜伏。狐がなぜか狼を囲いに出て、グレーの狼が狩人CO。どう考えてもおかしいですよ?」
「反論させてもらうわね。狼視点、初日の私が真なのか狂人なのかは、分からなかったはずよ。淡路さんは狼じゃないから。狼が全潜伏しても、なにも問題はナシ。3日目には大場さんも占いCOの気配を見せていて、人外が騙りに出ることは確定。ここで、大場さんが狐の可能性を考慮せずに、全潜伏を継続しちゃったんでしょ。大場さんが助っ人の狂人だと思ったわけね。最後に、葛城くんは私を破綻させに来た狼よ。グレーから出て来ても、不思議じゃないわ」
「裏見先輩、葛城くんを狼でみてるんですか?」
「そうよ……なにか不満でも?」
「葛城くんが狼ってことは、我孫子くんと萩尾さんは真狂ってことですよね? つまり、狂人が裏見先輩をかばいに来たか、あるいは狩人2COのあとで、狂人がCCOしたかのどちらかになると思うんですけど、これって説明できます?」
「狂人は、狼がだれか分からないでしょ。3人目の萩尾さんが狂人はおかしいから、我孫子くんが狂人なんじゃないかしら。我孫子くんは、私をご主人様だと勘違いして、葛城くんの狩人COにかぶせてきたのよ。残念ながら、私は狼じゃないんだけど」
「それは、『狂人が勘違いしうる』っていうだけで、具体的にどう勘違いしたのか、説明していませんよね?」
「我孫子くんは、初日から私にすり寄ってたわ。あれは、占い避けをしつつ、私の真贋を見極めてたんでしょう。読み間違えたみたいだけど」
「どうして狂人が占い避けするんですか? むしろ占われたいでしょう?」
「1ー1で占われたら、狼視点で噛み先候補になるからよ。狂人が最も避けたいのは、狼に噛まれること。サポートどころか、足を引っ張っちゃうもの」
「ちょっと待って欲しいでやんす」
パシリと、扇子を閉じる音がした。私と捨神くんは、議論を中断する。
「あっしが狂人前提で議論をされちゃ、困るでやんす」
「なに? 自分が狼だって言いたいの?」
おなじく狩人候補の萩尾さんは、我孫子くんを挑発した。
「ちがうでやんす。あっしが真狩人でやんすよ」
「ふぅん、じゃあ、ボクと葛城くんの内訳を言ってみてよ」
「葛城くんが狼で、萩尾さんが狂人でやんす」
「3人目で出てきたボクが狂人? かなり苦しい内訳だね」
「ちゃんとした理由があるでやんすねぇ。昨日、あっしがCOした時点で、完グレだったのは萩尾姐さんだけでやんす。あのまま狩人放置でグレー詰めになった場合、指定されるのは萩尾姐さんだったでやんすよ。だから、共有が動くまえに、狩人COしたでやんす」
む……なかなか説得力がある。
「へぇ、よくそんな理由を思いつけるね。でもさ、あの時点で狐死亡は確定。仮にボクが狂人だとしたら、我孫子と葛城さんのどちらかがご主人様だよね。自分がCOして狩人ランになった場合、ご主人様が吊られちゃう可能性があるんだけど?」
「デメリットがあれば、メリットもあるでやんす。狩人ランで真狩人から吊れば、今日の時点で2w1k、つまり、半PPでやんす。とはいえ、あっしが真狩りでやんすから、その点は御愁傷様と言うしかないでやんす」
「なるほど、そういうメリットはあるね。でもさ、仮に真から吊れたとして、自分が偽狩人だってことを、どうやって狼にアピールするの? ボクに狂アピ要素あった?」
「萩尾姐さんは、裏見姐さんにやたら突っかかってたでやんす。あれは、裏見姐さんからの占われ回避だったと思うでやんす。真占い師に占われたら、噛まれるでやんすからね」
「そんなの、狂アピのうちに入らないよね?」
ここで、淡路さんが松平に話しかけた。
「そろそろ、仮指定してください」
松平は、あごに手をあてて、じっくりと考え込む。
将棋のとき並に真剣だ。
「……萩尾だ。萩尾を吊る」
「!?」
萩尾さんは、一瞬だけ驚いたあと、くちびるを結んだ。
「拒否します。どうして真狩り要素の一番強いボクなんですか?」
「昨日の夜、難波と相談した結果だ」
「理由を教えてください」
「まず、狩人に2wなんて内訳はみない。真狂狼で固定する。ふたばが真の場合は、裏見が破綻して、大場の真が確定。萩尾が真の場合は、大場が破綻して、裏見の真が確定。我孫子が真の場合は、裏見と大場のどちらが真か分からない。ここまでは、いいな?」
「ええ、いいですよ」
「まず、葛城が真の場合を考える。破綻した裏見は、もちろん狼だ。大場が見つけた狼は米子だけだが、我孫子に○を打っているから、我孫子の狂人も確定。つまり、裏見−米子−萩尾で3wになる。次に、萩尾が真の場合は、大場の狐が確定して、狼は鳴門−捨神−我孫子or葛城だ。最後に、我孫子が真の場合は、裏見が真占い師なら鳴門−捨神−萩尾or葛城で、大場が真占い師なら裏見−米子−萩尾で確定。なにか異論はあるか?」
「ないです」
「じゃあ、おまえと我孫子、どっちの名前の頻度が高い?」
萩尾さんは、軽くタメ息をつく。
「なるほど……確率的に、ボクは真狼目、我孫子は真狂目。現時点で2wなら、ボクを吊らないと村の敗北が確定ってことですか」
「そういうことだ。悪いが、吊られてくれ」
萩尾さんは、そのクールな顔を左に向け、強気な態度をとる。
「拒否します」
「それは、狼COととっていいのか?」
「いいえ、違います。ボクが真狼目、我孫子が真狂目なのは認めましょう。でも、今日ボクをケアで吊ったら、明日は4人で1w1k残りになります。村勝ちはありません。つまり、今日が実質的な最終日なんです。勝ちに行くなら、今日決め打ちしてください」
松平は、ふたたび髪の毛をくしゃくしゃにする。
「プレイスタイルの問題になってきたな……」
「プレイスタイルの問題だけじゃありません。我孫子は狂人だと思ってますけど、葛城さんのほうが狂人で、我孫子が狼なら、ボクを吊ってもそのまま負けです」
「我孫子狼はみない。我孫子狼なら、裏見が真だ。葛城が裏見を破綻させに来た時点で、葛城狂人は透ける。つまり、我孫子狼の葛城狂人は、組み合わせとしてありえない」
萩尾さんは、論負けを認めた。
「分かりました。もう村勝ちはありませんが、引き分けもいいでしょう」
《残り30秒です》
見計らったように、アナウンスが入る。
松平は、淡路さんに向き直った。
「淡路は、なにか意見あるか?」
「そうですね……明日、私か松平さんが残されることになります。判定役になったとき、裏見さんと捨神くんのどちらに投票するか、今晩考えておきます」
なんか、最後の最後までステルス目だったわね。
「頼んだぞ。裏見と捨神も、殴り合いの準備をしておいてくれ。おたがいの視点で、我孫子の真はまだあるからな。勝ちを捨てる必要はない」
「了解」
「アハッ、がんばります」
《それでは、投票してください》
我孫子 → 萩尾
淡路 → 萩尾
裏見 → 萩尾
捨神 → 萩尾
萩尾 → 捨神
松平 → 萩尾
村民会議の結果 萩尾萌さんが処刑されました。




