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正体がバレてからの学園生活①

たくさんの方に読んでいただいて嬉しかったので、番外編を投稿しました! オーウェンが正体を明かしてから、卒業までの間の時間軸です……!

楽しんでいただけますと幸いです!

 

 騒動から一週間経ち、ジェシカはこれまでとは違って穏やかな学園生活を送れていた。

 もちろん皆で和気あいあい、というわけにはいかない。

 気まずそうに目を逸らされることもあるし、何か連絡事があっても態度がよそよそしい者がほとんどだ。

 けれど、それは致し方ないことだ。

 騙されていたとはいえ、誰かを傷付けていた側の人たちと、傷付けられた側がすんなり仲良くなる、なんてことは稀中の稀だとジェシカは思う。


 けれど、ジェシカを見る皆の目には悪意がない。勉強に、オーウェンやメイとの時間も邪魔されない。大切な二人が悪意に晒されない。

 ジェシカには、それだけで十分だった。


 一つ、懸念があるとすれば──。 



「悪口も言われないし、嫌がらせもされない。すれ違い様に睨まれたり、呼び出されたりもしない……。なんって平和なの!?」

「ジェシカ様……基本的にはそれが普通なのですよ……」

「そうかもしれないけど、私にとっては奇跡みたいだしさ。オーウェンとメイと出会えて本当に良かった!」

「ジェシカ様! それは私のセリフです……!」


 昼休み、いつものガゼボで昼食をとりながら、メイとそんなことを話す。

 もう食堂で食事をとっても何か言ってくる人はいないだろうが、すっかりこの場所に慣れてしまったのだ。寒いのがたまにきずだけれど。


「そういえば、今日はオーウェン様はどうされたんですか? いつもジェシカ様の側を離れませんのに」

「少し用事があるから後から来るって言ってたよ」

「ジェシカ様との食事よりも大事な用なんてこの世にありませんのに! まっ、私はジェシカ様と二人きりでとっても嬉しいですけれど〜〜!」

「メイったら」


 好意をこれでもかと伝えてくれるメイに対してジェシカが笑みを浮かべると、女子生徒がこちらに向かって来るのが見えた。

 どうやらメイが提出物を忘れていることを連絡しに来てくれたらしく、メイは「直ぐに戻ってきますから!」と言って、急いで席を立ち、校舎へと走っていった。


「……ハァ」


 ジェシカは笑顔でメイを見送ったあと、一人きりになったガゼボで溜め息を漏らす。

 一人になって孤独を感じているわけではない。

 ただ、一人になると余計なことを考えてしまうのだ。


「オーウェン、もしかしたら今頃……」


 騒動の後、ジェシカの生活に変化が訪れたのと同様に、オーウェンにも大きな変化があった。

 ハーベリー帝国の第二皇子という身分と、端正な顔立ちを露にしたことによって、多くの女子生徒がオーウェンに好意を向ける様になったのだ。


(そりゃあ、そうよね。皇子様で、あの見た目だもん。女の子たちに対しては急に態度を変えて何なの、とは思わなくもないけど、まあ、仕方がないよね)


 令嬢たちからすれば、見目麗しい帝国の皇子とお近付きになれるなんてまたとないチャンスなのだろう。平民のジェシカでもそれくらいは分かる。


 それに、彼女たちに対するオーウェンの態度だって、至極まともなものだ。

 デレデレもしないし、期待させるようなことも言わないし、触れられたらサッと身を引くし、皇子としての礼節を持って最低限の対応をしている、というのが見て分かる。


(それでも、なんだかもやもやしちゃうんだよ〜〜! いや、オーウェンが嫌われるのに比べたら人気があるのは良いことなんだけど! オーウェンの恋人は、私なのに……)


 と、内心で不満をぼやいたものの、自分たちの関係性を親しくない人たちにわざわざ言わないでほしいと頼んだのはジェシカだった。


 現在、ジェシカとオーウェンは婚約の手続き中で、卒業後は帝国に行くことが決まっている。

 あと少しすれば、この学園はおろか、この国からもいなくなるのだ。


 それならば、わざわざオーウェンとの関係を明らかにしないでもよいのでは? とジェシカは考えた。

 せっかく穏やかな日常が訪れたのだ。帝国に行っても慌ただしい日々を送ることになるだろうから、残りの学園生活くらいは静かに過ごしかったである。


「あー! うじうじ悩むなんて私らしくない! よし! 切り替えよう! うん!」


 自らにそう言い聞かせたジェシカだったが、次の瞬間、校舎の方から聞こえた渦中の人物の名前に、素早く目を瞬かせた。


「オーウェン様……! どうしてですか……!?」


(え? な、何事?)


 オーウェンの名前を呼んだのは、間違いなく女性だ。それもかなり切羽詰まっている様子の。


(オーウェン、まさか何かを事件に巻き込まれてる!?)


 それなら助けに行かなければ!

 ジェシカは急いで立ち上がり、声が聞こえた校舎側へと足を急がせた。そして、曲がり角を曲がればオーウェンたちのもとに到着するというころだった。


「どうして私では駄目なのですか!? 私はこんなにも、貴方様のことを愛していますのに……!」

「!?」


 オーウェンに対する熱烈な告白を耳にしたジェシカは、驚きからピタリと足を止めたのだった。

お読みいただきありがとうございます(*^^*)

番外編は3話を予定しています!

ブクマや、↓の☆☆☆☆☆を押して(最大★5)評価をいただけると嬉しいです!

熱中症にはお気をつけください(*´ω`*)

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