新章55「知」の試練
NO.71「知」の試練
「本当に壊れてるよな?」
王花によって叩き潰された的……正確には、数秒前まで的だったものを突いてみるが、特に動く気配はない。
よかったー。ちゃんと壊れてる。さっきまでのしぶとさを考えると、この状態でもまだ動くんじゃねぇかと思ったけど、流石にここまで木っ端微塵にされたら動けないみたいだな。
「にしても、そんなでかいもんどこに隠してたんだ? ……ってか、王花って他にも色々と謎が多いよな」
「ふふっ、大人は秘密が多い方が魅力的なんですよ。ちなみに、これに関しては、魔法で認識を阻害してるだけでずっと背負ってましたよ」
くすくすとイタズラっぽく笑いながら、王花は唇に人差し指を当てる。
これだけで絵になるんだから、美形はずるいよなぁ。
「そういえば、俺らこの任務が終わった後、どうやって帰るんだ? ヒルデガルドを倒したところで、即鎖国解除とはならねぇだろ」
「あれ? 真宗くん知らないの? 行きに乗ってきた列車なら、国境を跨げるんだよ」
「えっ、なにそれ知らなかったんだけど」
ってか、ギルマスから何にも説明されてないのおかしくない?
これ、セリカが知らなかったらどうするつもりだったんだよ。
でも、これで何の障害もなく東共に来れた理由がわかったな。てっきり、ギルマスが裏道的なのを手配してくれてたのかと思ってたけど、単純に正規の手順で来ただけだったみたいだ。
そんなことだろうと思ってたけど。
「さて、こんなとこに長居しても仕方ないし、さっさと次の試練に行くか!」
「おー!」
そう言って、拳を振り上げると、何故かやたらとやる気満々なセリカはノってくれるが、流石に王花はノってくれないみたいだ。
「……あっ。お、おー」
いや、ノってくれるんかい。
「別に、無理して合わせてくれなくてよかったんだぞ?」
一瞬間が空いたせいで、冷静になってちょっと恥ずかしいし……
「んじゃまぁ、すっごい気まずくなったけど、気を取り直して次行くか!」
♦︎♦︎♦︎
ってなわけで、第二の試練、『知』の試練の間に来たわけだけど……あれだな。1個前の試練の時とほとんど変わんないな。
ひとつだけ違う部分を上げるとするなら、壁の左右に時計が10個くらい――正確には12個付いている。ってことくらいか。
「あっ、またあの怪し〜い看板がありますね」
そう言って王花が指差す方向には、もはや見慣れた趣味の悪い看板が立っていた。
「はぁ、またかよ。もうここまでくると、この怪しさにもいい加減慣れてきたな」
えーっと、なになに? 『ここは「知」の試練でーっす♪この看板の上にあるなぞなぞを解いて、正解の時計に触れてね☆』か。
「こんなの、全部触ればすぐ終わるじゃん」
「真宗くん、待って!!」
手始めに、1番手前にあった時計に触れようとした俺を、セリカが大声で制止してくる。
「えっ? これが1番手っ取り早くね?」
「ここ見て! この下のところ」
えーっと? 『追記☆間違った時計に触れると2度と出れなくなるから気をつけてよね♪』だと?
「そういう大事なことはもっとでかい字書いとけよ!!」
あっぶねぇー。もうちょっとで取り返しがつかなくなるとこだったじゃねぇか。
「ま、まじでさんきゅー。セリカ」
って、すげぇデジャブを感じるけど
「真宗様の案、自分もいいと思ったんですがね……流石に対策されていましたか」
「みたいだな。まぁ、ともかくこれで、正々堂々謎解きをしないと出れないってわかったな」
探せば方法は他にもあるかもしれないけど、看板に書かれてない以上、なにが地雷になるかわからない。
余計なことはしない方が良さそうだ。
で、肝心の謎解きだけど――
「これ、ばつ印……かな?」
セリカの言う通り、部屋の説明が書かれていた看板の上にある、もうひとつの看板には、長短2本の棒で形作られた黒色のばつ印が描かれていた。
全然わかんねぇな。それに、セリカの方もイマイチピンときてなさそうだ。今俺と全く同じ仕草で首傾げてたし。
「ばつ印にしては、長さが違うのが気になりますね。そもそも、これ本当にばつ印なんでしょうか?」
「どういうことだ?」
「いえ、ばつ印と言うには、角度がなさすぎる気がしまして」
確かに、言われてみればそうだな。
この2本の棒がクロスした形。これは、ばつ印というよりも――
「十字架って言った方がしっくりくるな」
となると、答えは出ちゃってるんだよなぁ。
けど、流石に十字架を表してるから『10時』だ!ってのは、流石に安直すぎる気もするし。
「なぁ、これって十字架だから答えは『10時』ってことなのか?」
「どうだろう。そんなに簡単な問題なのかな? ……でも、ほかに思いつかないし。なんか、疑心暗鬼になってきちゃうね」
そうなんだよなぁ……ここまで、出題者側の性格を見てきてる限り、『10時』であってても、この答えがブラフだったとしてもしっくりきちゃうんだよ。
かと言って、向こうも心配だから、あんまりここで長居もしたくないんだよ。
リズひとりなら別に心配する必要なんてないんだけど、何せトラブルメーカー2人がハッピーセットだからなぁ……
「うん。やっぱ急いだ方がいいな」
「どうしたの? いきなり」
「いや、イナルナがなんかやらかしてないか心配だなって」
「ちょ、ちょっとだけ急ごうか」
やっぱそうなるよな。今でもたまに初任務のトラウマが蘇るもん。…………やばいやばい。トリップしてまた立ち直れなくなるとこだった。
「まぁ、悩んでも埒があかなそうですし、10時でいいのではないですか? 最悪の場合でも、なんとか交渉の余地はありそうですし」
そう。実は王花の言う通り、看板の裏側に『失敗ちゃった時はここを押してねん☆』と書かれたボタンが設置されてんだよな。
「そうだな。ちょっと心配だけど、そうするか」
セリカと王花が、こくりと頷いて肯定してくれたのを合図に、10時ちょうどを指している時計に触れる。
「うわぁっ!!」
すると、突如強すぎる光に包まれて、なにも見えなくなる。
「――ってあれ?」
光が収まり、目を開けると試練の待機場所に戻ってきていた。
「これは……合格したってことでいいのかな?」
「多分、そうじゃないか? ほら、上のランプも2つ光ってるし」
「な、なんだかやけにアッサリでしたね」
結局、ブラフなんかじゃなく、読みの通り10時で正解だったみたいだな。
本当に、こんなことさせて、あのオカマ野郎は何がしたいんだか。
終始意味はわからなかったけど、ともかくこれで、第二の試練「知」の試練。をクリアしたわけだな!
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To be continued
どもども!!皆さん!!!!!雅敏一世です!!!!
……はい、勢いだけじゃ乗り切れませんね。
もう素直に謝ります!ヘタレつを楽しみに待っていてくれた方(居るかはわかりませんが)最新話遅くなってしまい本当に申し訳ございません!!
さて、毎回謝っている気がしますが、今回のお話はいかがだったでしょうか?
『最近、イナルナの出番少ないなぁ』とか思った方。大丈夫です。投稿頻度が遅いだけで、草薙小隊が分断されてからそんなに話数重ねてないので(笑)
ではでは、今回はこの辺りで失礼。
また会いましょー♪




