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ヘタレ魔王の英雄烈伝!  作者: 雅敏一世
新章第一幕 東共奪還作戦編
74/124

新章55「知」の試練




NO.71「知」の試練


「本当に壊れてるよな?」


 王花によって叩き潰された的……正確には、数秒前まで的だったものを突いてみるが、特に動く気配はない。


 よかったー。ちゃんと壊れてる。さっきまでのしぶとさを考えると、この状態でもまだ動くんじゃねぇかと思ったけど、流石にここまで木っ端微塵にされたら動けないみたいだな。


「にしても、そんなでかいもんどこに隠してたんだ? ……ってか、王花って他にも色々と謎が多いよな」


「ふふっ、大人は秘密が多い方が魅力的なんですよ。ちなみに、これに関しては、魔法で認識を阻害してるだけでずっと背負ってましたよ」


 くすくすとイタズラっぽく笑いながら、王花は唇に人差し指を当てる。

 これだけで絵になるんだから、美形はずるいよなぁ。


「そういえば、俺らこの任務が終わった後、どうやって帰るんだ? ヒルデガルドを倒したところで、即鎖国解除とはならねぇだろ」


「あれ? 真宗くん知らないの? 行きに乗ってきた列車なら、国境を跨げるんだよ」


「えっ、なにそれ知らなかったんだけど」


 ってか、ギルマスから何にも説明されてないのおかしくない?

 これ、セリカが知らなかったらどうするつもりだったんだよ。


 でも、これで何の障害もなく東共に来れた理由がわかったな。てっきり、ギルマスが裏道的なのを手配してくれてたのかと思ってたけど、単純に正規の手順で来ただけだったみたいだ。

 そんなことだろうと思ってたけど。


「さて、こんなとこに長居しても仕方ないし、さっさと次の試練に行くか!」


「おー!」


 そう言って、拳を振り上げると、何故かやたらとやる気満々なセリカはノってくれるが、流石に王花はノってくれないみたいだ。


「……あっ。お、おー」


 いや、ノってくれるんかい。


「別に、無理して合わせてくれなくてよかったんだぞ?」


 一瞬間が空いたせいで、冷静になってちょっと恥ずかしいし……


「んじゃまぁ、すっごい気まずくなったけど、気を取り直して次行くか!」


♦︎♦︎♦︎


 ってなわけで、第二の試練、『知』の試練の間に来たわけだけど……あれだな。1個前の試練の時とほとんど変わんないな。


 ひとつだけ違う部分を上げるとするなら、壁の左右に時計が10個くらい――正確には12個付いている。ってことくらいか。


「あっ、またあの怪し〜い看板がありますね」


 そう言って王花が指差す方向には、もはや見慣れた趣味の悪い看板が立っていた。


「はぁ、またかよ。もうここまでくると、この怪しさにもいい加減慣れてきたな」


 えーっと、なになに? 『ここは「知」の試練でーっす♪この看板の上にあるなぞなぞを解いて、正解の時計に触れてね☆』か。


「こんなの、全部触ればすぐ終わるじゃん」


「真宗くん、待って!!」


 手始めに、1番手前にあった時計に触れようとした俺を、セリカが大声で制止してくる。


「えっ? これが1番手っ取り早くね?」


「ここ見て! この下のところ」

  

 えーっと? 『追記☆間違った時計に触れると2度と出れなくなるから気をつけてよね♪』だと?


「そういう大事なことはもっとでかい字書いとけよ!!」


 あっぶねぇー。もうちょっとで取り返しがつかなくなるとこだったじゃねぇか。


「ま、まじでさんきゅー。セリカ」


 って、すげぇデジャブを感じるけど


「真宗様の案、自分もいいと思ったんですがね……流石に対策されていましたか」


「みたいだな。まぁ、ともかくこれで、正々堂々謎解きをしないと出れないってわかったな」


 探せば方法は他にもあるかもしれないけど、看板に書かれてない以上、なにが地雷になるかわからない。

 余計なことはしない方が良さそうだ。


 で、肝心の謎解きだけど――


「これ、ばつ印……かな?」


 セリカの言う通り、部屋の説明が書かれていた看板の上にある、もうひとつの看板には、長短2本の棒で形作られた黒色のばつ印が描かれていた。


 全然わかんねぇな。それに、セリカの方もイマイチピンときてなさそうだ。今俺と全く同じ仕草で首傾げてたし。


「ばつ印にしては、長さが違うのが気になりますね。そもそも、これ本当にばつ印なんでしょうか?」


「どういうことだ?」


「いえ、ばつ印と言うには、角度がなさすぎる気がしまして」


 確かに、言われてみればそうだな。

 この2本の棒がクロスした形。これは、ばつ印というよりも――


「十字架って言った方がしっくりくるな」


 となると、答えは出ちゃってるんだよなぁ。

 けど、流石に十字架を表してるから『10時』だ!ってのは、流石に安直すぎる気もするし。


「なぁ、これって十字架だから答えは『10時』ってことなのか?」


「どうだろう。そんなに簡単な問題なのかな? ……でも、ほかに思いつかないし。なんか、疑心暗鬼になってきちゃうね」


 そうなんだよなぁ……ここまで、出題者側の性格を見てきてる限り、『10時』であってても、この答えがブラフだったとしてもしっくりきちゃうんだよ。


 かと言って、向こうも心配だから、あんまりここで長居もしたくないんだよ。

 リズひとりなら別に心配する必要なんてないんだけど、何せトラブルメーカー2人がハッピーセットだからなぁ……


「うん。やっぱ急いだ方がいいな」


「どうしたの? いきなり」


「いや、イナルナがなんかやらかしてないか心配だなって」


「ちょ、ちょっとだけ急ごうか」


 やっぱそうなるよな。今でもたまに初任務のトラウマが蘇るもん。…………やばいやばい。トリップしてまた立ち直れなくなるとこだった。


「まぁ、悩んでも埒があかなそうですし、10時でいいのではないですか? 最悪の場合でも、なんとか交渉の余地はありそうですし」


 そう。実は王花の言う通り、看板の裏側に『失敗ちゃった時はここを押してねん☆』と書かれたボタンが設置されてんだよな。


「そうだな。ちょっと心配だけど、そうするか」


 セリカと王花が、こくりと頷いて肯定してくれたのを合図に、10時ちょうどを指している時計に触れる。


「うわぁっ!!」


 すると、突如強すぎる光に包まれて、なにも見えなくなる。


「――ってあれ?」


 光が収まり、目を開けると試練の待機場所に戻ってきていた。


「これは……合格したってことでいいのかな?」


「多分、そうじゃないか? ほら、上のランプも2つ光ってるし」


「な、なんだかやけにアッサリでしたね」


 結局、ブラフなんかじゃなく、読みの通り10時で正解だったみたいだな。

 本当に、こんなことさせて、あのオカマ野郎は何がしたいんだか。


 終始意味はわからなかったけど、ともかくこれで、第二の試練「知」の試練。をクリアしたわけだな!


………………………………………………………………

To be continued

どもども!!皆さん!!!!!雅敏一世です!!!!

……はい、勢いだけじゃ乗り切れませんね。

もう素直に謝ります!ヘタレつを楽しみに待っていてくれた方(居るかはわかりませんが)最新話遅くなってしまい本当に申し訳ございません!!

さて、毎回謝っている気がしますが、今回のお話はいかがだったでしょうか?

『最近、イナルナの出番少ないなぁ』とか思った方。大丈夫です。投稿頻度が遅いだけで、草薙小隊が分断されてからそんなに話数重ねてないので(笑)

ではでは、今回はこの辺りで失礼。

また会いましょー♪


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