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ヘタレ魔王の英雄烈伝!  作者: 雅敏一世
新章第一幕 東共奪還作戦編
48/124

新章30 いざ行かん楽園へ!




NO.46いざ行かん楽園(キャバクラ)へ!


「うぉぉぁお!! すっげぇぇぇぇえ!!」


「あんまはしゃぎすぎて転ぶなヨ?」


 テンション爆上げで叫んでいるとすかさず苦笑いした雷刃が注意してくる。


「そんなこと言ったって、これがはしゃがずにいられるかよ!!」


 何故俺がこんなにテンションが上がっているかというと、人生ではじめての夜遊びだからだ。

 鬼ヶ島じゃそもそも遊ぶ場所なんて無いし、こっちに来てからは色々あって夜にゆっくり出歩くなんて時間はなかった。


「なぁマサ。これが任務だってちゃんと覚えてるよナ?」


「当たり前だろ? 忘れるわけないって」


 そう。俺と雷刃は今、とある任務でギルドが存在する公都の外れ。そこにある繁華街に来ていた。ここはキャバクラ店などが立ち並ぶ、いわゆる夜の街というやつだ。


 ちなみに任務先がこの街だと知って、セリカはまぁごねた。それはもう隣の部屋からうるさいと苦情が来るくらいにはごねた。


 最終的にはギルマスから小一時間くらい説教を食らって大人しくなったため、こうしてめでたく任務に来れたというわけだ。


 「公都」と一口に言ってもとんでもない広さで、いくつもの街がくっついてできている。ギルドは街の中心にある城の隣にあるためこの繁華街からだと結構距離がある。別の街といっても差し支えはないのだ。


 で、とある任務というのがこの街にあるらしい指定暴力団隊にうちの団員が拉致られたらしいのだ。これ以上の被害拡大を防ぐために少数精鋭、俺と雷刃が送り込まれた。


「でも暴力団隊なんてさっさと潰せばいいのに。『勇者』がいれば楽勝だろ?」


 頭の上で腕を組みながら目的地に向かって歩いている途中、ふとそんなことが思い浮かんだ。


「そんな簡単にはいかねえんだヨ」


「なんで?」


「一個でかい組織があったほうが対応しやすいんだヨ。でかい組織があると小さい組織は淘汰されるか、取り込まれていくかの2択だからナ。一つだけならその動向に気をつけてるだけでいい。だから泳がせてたんだけど――」

「それでうちの隊員に被害が出たと。」


「そっ! うちのギルマス義理とかにうるさいからナ」


 と言って、指を鳴らす雷刃の説明でやっと理解できた。

 なるほどな。なんで即対処しないのかずっと気になってたけど、そんなメリットもあるのか。


「で? 今どこに向かってるんだ?」


「キャバクラ」


「は?」


 思ってもみない返答に、思わず間抜けな声を出してしまった。だって任務で行く先がキャバクラだよ? 予想できるわけないだろ。


「別に遊びに行くわけじゃないゾ?さっき話してた指定暴力団隊、『ゾラーク』の下請け企業だからナ」


 ああ、そういうつながりがあったのか。

 びっくりした。任務ほっぽり出して遊びに行くのかと思った……まぁ、流石の雷刃もそこまでいい加減じゃないか。

 ない、よな?


「業務連絡はこのくらいにして……久々だナ!! マサ!!」


「うわぁっ!」


 さっきまでの真面目な雰囲気は何処へやら。いきなり雷刃が飛びついてきた。


「色々大変だったみたいだけど元気そうだ何よりダ!!話したいことはいっぱいあるけど、まずは――」


 まぁ、確かに久々だしな。積もる話もあるだろう。たまには兄弟水入らずで話すのも悪くはないかもな。まだ着くまでは時間がかかるみたいだし。


「切れ痔は治ったのカ?」


 そこかよ!! 1番に聞くのそこかよ!! いや、途中で別れる理由が切れ痔だったから気になるのもわかるけどさ!


「……治ったよ。ヴェストに治してもらってたらしい」


「らしい?」


 半分呆れながら答えると、雷刃が聞き返してくる。

 ちっ、誤魔化されなかったか。切れ痔の話題なんて長く続けたくないのに。


「覚えてないんだよ。多分ぶっ倒れた時に直してもらったんだと思うけど、治してもらった記憶はないんだよな」


「そっか。んで? もう既に結構やらかしてるみたいだけド? その辺の話はないのカ?」


 興味ないなら聞くんじゃねえよ!!

 ……とツッコミたかったが、おそらく言っても無駄なので諦めてここまでの俺の旅路を聞かせることにした。


「お前と別れた後、予定通りに風霊峰に向かったんだよ。そこで何があったと思う? 話に聞いてた通り、『風古竜』がいたんだけどさ――」 


 そう切り出した俺の愚痴とも言える話を、雷刃は我が子の成長を喜ぶような優しい微笑みで聴いてくれた。


♦︎♦︎♦︎


「……なんつーか、お前も大変だったんだナ」


 というのが俺が全て話終わった後、雷刃が重々しく吐いた感想だ。


「雷刃……分かってくれるのか」


 長いこと雷刃と一緒に過ごしてきたが、こんなに心が通じ合ったと感じたのは初めてかもしれない。


「さて、そろそろ着くかな……っと、あれカ!!」


 雷刃が指差す先には、『黒音亭』と書かれた看板のかかったお店があった。いや、ネーミングセンスがラーメン屋じゃねえか。


「さっ、入るカ。くれぐれも俺らがギルドの隊員だってバレないようにナ!」


 と言ってウインクしながら入っていく雷刃に、置いていかれまいと緊張を隠しながら着いていく俺には予想もつかなかった。


 この一件が、この先俺の運命を大きく変えることになるとは――


………………………………………………………………

To be continued

どもども、2月最終投稿の雅敏一世です!

6000pv突破、本当にありがとうございます♪

いゃ〜時間かけた割には進展が少ないこと少ないこと。ですが、自信作にはなっております。お楽しみいただけましたでしょうか。

ではでは、早いですがここいらで失礼致します。

また会いましょー!!

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