新章103 旧友との再会
No.119旧友との再会
「いやぁ、それにしても相当夢見がちな少年みたいだねぇ、そのルティスって子は。後1週間しかないの、ほんとに分かってる?」
ルティスが要望を書き記した計画書を麗奈さんに手渡すと、かなり無茶な要求だったのか眉間に皺を寄せて唸り始めた、
「そこをなんとかならないかな? 麗奈さん。無理言ってるのは分かってるけど、やっと自由になれたルティスが、初めてやりたいって言い出したことなんだ」
「うーん……ボクも出来る限りのことはするけどさ、ぶっちゃけて言うとこんなのほとんど空飛ぶ家なんだよね」
麗奈さん曰く、無茶とは言っても荒唐無稽なものではなく、時間と人員さえしっかりと揃っていれば実現自体は可能らしい。
ただこの少人数、加えて制限時間が1週間しかないこの現状じゃほぼ無理。ってのが、麗奈さんの判断だ。
セリカが職人と協力者を探しに行ってくれてるけど、ギルドも通常の依頼も受けながら建国祭の準備を進めている以上人手不足はどこも同じ。あんま期待はできないな。
「まぁ、実際に間に合うかはともかく、作るってなった時に困らないようにはしておくよ」
「ほんとか? ありがとう麗奈さん!」
「お安い御用だよ。お土産ももらっちゃったしね」
動き的にウインクをしたであろう麗奈さんが顔を向ける先には、俺一推しの焼き鳥が入った紙袋が置いてある。
渡す直前になってから、こんな本だらけの場所に密封されてない食べ物ってどうなんだと気付いたけど、当人は大して気にしていないらしく、喜んで受け取ってくれた。
「そういや、ヒルデガルドは? 麗奈さんの近くにいないなんて珍しいですね」
「今ちょっと本棚の整理お願いしててね。ほら、最近また増えちゃったから」
「増えちゃったって、麗奈さんが増やしたんでしょ」
「んー……まぁね」
首を傾けながら頭をコツンとし、舌を出してうっかりアピールをしてくる。つくづく思うが、こう言うあざとい動き似合うよなこの人。同じ動きでも、ギルマスとこの人じゃ天と地のほどの差がある。
「それに、多分呼べば飛んでくるよ」
「お呼びですか。麗奈様」
叩こうとした手が、そのままヤレヤレという動きに変わる。口にこそ出してはいないが、「ほらね」と言う心の声が聞こえてくるようだ。
「どういう手品だよ」
「自分が麗奈様の元へと駆けつけるのに、理屈が必要だとでも?」
何でこんなに自信満々なんだこいつは。おいこら、理解できない俺がおかしいみたいな顔をするんじゃねぇ。どう考えてもおかしいのはお前だろうが。
「ガルド、真宗くんが焼き鳥買ってきてくれたから、お皿出してくれる?」
「このような場所に土産が焼き鳥とは貴様、匂いがついたらどうする気だ」
「わかってるよ。渡す時になって気づいたんだからしょうがないだろ。なんかここの持ち主は全然気にしてないし」
めちゃくちゃ文句言いたげだったくせに、麗奈さんが気にしていないと言った途端、「それならいいか」と言わんばかりにそそくさと皿を準備し始める。ほんっと単純だなこいつ。
「じゃあ、ヒルデガルドの顔も見れたことだし、俺はそろそろお暇させてもらいますね」
「えぇー、食べてかないの?」
「みんなそれぞれ頑張ってるんだし、俺だけゆっくり食べてるわけにはいかないですよ」
「そっか……じゃあ、設計図が完成したら、またギルマスづてで連絡するね」
「はい、お願いします! ヒルデガルドも、またな!」
いそいそと食器の準備をしているヒルデガルドは、麗奈さんの命令(お願い)が最優先なこともあって、片手を上げるだけだ。まぁ、それももう慣れてきたけど。
♦︎♦︎♦︎
「あれ? 真宗くん?」
そんなわけで、麗奈さんのところからの帰り道、ギルド本部に続く大通りを歩いていると、聞き慣れた声がかけられる。
「セリカ! 職人もう見つかったのか? 超早いじゃんか」
「うん見つかったよ。すんなり見つかりすぎて、私もびっくりしちゃった」
セリカの隣には、フードを被った細身の男がひとり。流石は勇者の人脈といったところか、設計図の完成と同時に作業を始められるのはありがたい。
「ちょっと、あたしもいるんですけど」
そんなことを考えていると、セリカの影からひょっこり金色の頭が顔を出し、怪訝そうな声が聞こえる。
「なんだ、お前もいたのか」
「なんだって何よ! 最近あんたあたしの扱い雑じゃない!?」
「そうだよ真宗くん。イナちゃんも頑張ってくれてたんだから」
「悪い、そうだったのか……で、具体的には何頑張ったんだ?」
気まずそうに目を逸らすセリカ。まぁ、これが答えだろう。とはいえ、今回の件に関しては入隊したてのイナに手伝えることも少ないだろうから、俺の人選ミスってのもある。これ以上詮索するのはやめてやろう。
それよりも、せっかく協力してくれるって言ってくれてる職人の人に挨拶もしてないことのが問題だ。
「えっと、初めまして。大和真宗です。急な案件だったのに受けてくれてありがとうございます」
「あぁ、よく知っているとも」
そう言ってフードを脱ぐ細身の男、その顔には見覚えが……ってか、最近見たばっかだわ。
「モルド、お前マジでギルドに入ったのか」
「ヒュートの旦那が『強欲』隊の専属顧問として雇ってくれたからな。まぁ、絶対に逆らわないって誓約書書かされたけど」
ルティスの一件で、ギルドに再就職するとか言ってたけど、本当にすんなり入隊してるとは。勇者を懐柔するとは大したもんだ。
「あれ? 真宗くんとモルドさんって知り合いだったの?」
「ルティスの件でちょっとな」
「あぁ〜、ヒュートさんのところに来た新人さんって、モルドさんのことだったんだ」
その後、雑談しつつルティスの部屋へと向かう。すると、リズたちもちょうど帰ってきていたところだったみたいだ。
「リズ、ルナ! 材料見つかったか?」
「あぁ、なんとかな。見つけるのよりも、運ぶ方が大変だったわ……って、懐かしいの連れてるじゃねぇか」
「よぉ、赤いの。久しぶりってほどでもないが、その節は世話になったな」
和気藹々と話しているところで、元ヒルデガルドの部下たちが目に入る。あいつらも手伝いに来てくれたのか。まぁ、早くとりあえず作業を始めないと終わらないから挨拶は後だ。
集まったのは、俺、セリカ、イナ、ルナ、リズ、ルティス、部下2人に、モルドの9人か。正直、人手なんかいくらあっても足りないくらいだから、3人も手伝ってくれるのは渡りに船だ。
「えっと、皆んな集まってもらったばっかりで申し訳ないんだけど、今回マジで時間がないから今からでも作業に取り掛かりたいと思う」
各々、話しをやめ、こちらに注目してくれる。あんまこう言う場面で仕切るのって得意じゃないんだけど、ルティスの案を通すって決めたのは俺だし、ここは俺が買って出るしかないだろう。
「じゃあ、各自作業開始!!」
…………………………………………………………………
To be continued
どもども、お久しぶりでございます。雅敏一世です!
もはや、久しぶりという挨拶が定例と化してきた今日この頃、建国祭編もいよいよ佳境、ついに飛行船製作に取り掛かってまいります。
たぶんおそらくめいびー、後2〜3話程度で終了の予定ですが、この手の宣言で予定通り行った試しがないので難しいところ。いい加減先に進みたいため、出来るだけ冗長にならぬよう引き締まったストーリー作りを心がけていく所信表明をしたところで、この辺りで失礼させていただきます。
ではでは、また会いましょ〜♪




