新章102 繋がる縁
NO.118繋がる縁
「すごいですよこれは!」
持って帰ってきた設計図を見せるなり、ルティスが興奮した様子で叫ぶ。
「やっぱりそうだよな。こんな細かい設計図見たことねぇもん」
「それもそうなんですけど、飛行船なんて空想に近い代物を、こうも簡単に形にするなんて、はっきり言って異常ですよ!」
手に持った設計図を、しげしげと見つめるルティスの目は輝いていた。これだけ喜んでくれるの見たら、作った側も嬉しいだろうな。
ちなみに、麗奈さんのことは誤魔化して、それとなく詮索するなって雰囲気を出してある。めんどくさいから話していいかって聞いたら、速攻で却下されたからな。
「そんじゃ、こっからは手分けして作業するか」
「つっても、どうやって分ける?」
「設計図の最終調整、職人のスカウト、あと材料調達ってとこだな」
リズが淡々とやる事を挙げていくが、こっから材料調達か……本当にこれあと1週間で終わるのか?
「とりあえず俺はこのまま設計図作った人と、ルティスとの連絡係をやるとして、顔が広いセリカに職人探しを任せたいんだけどいいか?」
「顔が広いかは分からないけど、わかった! みんなにあたってみるね」
「イナも手伝い頼めるか?」
「えー! あたしも設計図描きたいのに!」
「だったら試しに船の絵描いてもらおうか」
そう促すと、目を輝かせながら机の上に転がっていたペンと紙を手に取り、ものすごい速さで見事な……見事な正方形が生み出された。
「ふふん! どんなもんよ!」
「窓ないじゃん」
「いや、そこじゃねぇだろ。せめて長方形であれよ」
案の定論外だということが判明したため、イナは製図係からクビに。
結局、俺とルティスで製図係、イナとセリカで職人のスカウト、リズとルナで材料調達をすることになった。
「じゃあ、時間もないし各々作業開始といくか!」
♦︎♦︎♦︎
材料調達班であるリズとルナは、まず基礎素材を集めるため、とある工房を訪れていた。
流石に飛行船を作るほどの木材等を集めるとなると、市場では難しい。
クロスから紹介してもらったツテを辿って、ギルドお抱えの職人を訪ねることになった。
なったのだが――
「お前ら、なんでここにいんだよ」
「あら、あんたは相変わらず釣れないことばっかり言うわねん♪お嬢ちゃんなんか、一瞬で順応して、ブランコ漕いでるわよん☆」
「あいつもルナもブランコ好きすぎだろ」
そこに居たのは見覚えのある。いや、ありすぎる2人組だった。デスピナとプロテウス、元ヒルデガルドの部下だった2人は、クロスに勧誘されギルドの工房で見習いとして働いていたのだ。
「まぁ、あいつらは遊ばせとけばいいとして、ここに書いてあるもの持ってきてくれ」
「了解したわよん♪……にしてもすごい量ねん☆」
「それは材料書き出してた俺が1番わかってる」
この材料が全て無駄になる可能性もなくはないのだが、そんなことを気にしていても仕方がない。今はルティスと謎の協力者を信じる他ないのだ。
「……リズ」
ちょいちょいと袖を引かれる感覚に振り返ると、青白く光る石を持ったルナが佇んでいた。
「お前、それどうした?」
「……拾った」
「……そうか」
いつもはイナと2人セットだからあまり気にならないが、ルナ単体だとあまりにも意思の疎通が難しい。
別段、口数が少ないというわけでもないのだが、ひと言に込められている語彙があまりにも少ない。
そのくせ、本人は普通に文で話しているつもりなので1単語の中から1文分の意味を見出さなければならないのだ。よって、ルナとの会話では高度な読解力が求められる。
もっとも、自称『愛の力』でその障害を乗り越える例外も存在するのだが、そんなものどこぞのシスコン以外に到底真似できたものではない。
「持ってきたわよーん!」
「おう、ありがとな」
「……? どうしたのよん? きょとんとしちゃって☆」
やけにテンションの高いデスピナが引いてきた台車には、彼の巨体を持ってしてもどうやって積んだのか分からないほどの木材の山がそびえたっていた。
「いや、なんでもねぇ。まさか1往復で全部持ってくるとは思わなかっただけだ」
「あっははは! この部屋に『ワンダーランド』を使ってるから余裕よん♪ここを出たらとんでもない重さになるから、外へはちまちま運び出すしかないわん☆」
「マジのマジでなんでもありだなそれ」
デスピナから台車の操作を代わり、その軽さと見た目のギャップによろめきながらも出入り口まで運ぶ。
「あら? あんたその石は……」
その様子を満足げに見つめていたデスピナは、ふとルナの手元で煌々と輝いている石に目が行った。
「……そこで拾った。ダメだった?」
「いんや☆ ダメではないのよん♪ただ、それが光ってるってことはあんたやっぱり――」
「おい! わりぃがどっちか手伝ってくれ! 流石にこれ全部一気には無理だ!」
「はいはい、分かったわよん♪ じゃあ行きましょ☆ おチビちゃん」
差し出された手をちょこんと握り、あまりにも体格差の大きい2人がドアへと向かって歩いていく。
材料調達はこれにて完了。この後、リズが材料を運ぶため死ぬ思いをすることや、今回かかった費用のことを考えると全く持って“落着”ではないのだが、ひとまずは一件落着である。
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To be continued
どもども!とってもお久しぶりで申し訳ございません、雅敏一世です!いやー、本当に久々の投稿となってしまいましたねぇ…色々と忙しかったり、シンプルにモチベの問題だったりでしばらく界隈から離れておりました。
一応、死ぬまでにヘタレつだけは最後まで書き上げたいなぁと密かな野望を抱いているので、命ある限りはちまちまと自分のペースで進めさせていただきます。
それでも良いよって方は、マイペースな作者にお付き合いいただけると幸いでございます。
ではでは、また会いましょー♪




