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ヘタレ魔王の英雄烈伝!  作者: 雅敏一世
新章第二幕 灼熱大陸編
122/124

新章100 作る物と創る者




No.116作る物と創る者


「お祭りを! するよ!!」


 そう叫ぶギルマスの顔は得意げで、対照的にセリカ以外の顔には困惑の色が浮かんでいた。多分、俺も同じ顔をしているだろう。


「お祭り?」


「そう、お祭りだよ。本当はもう少し先なんだけど、建国祭ってお祭りがあってね、君たちの褒賞授与式と時期も近いから、前倒しで同時にやろうって話になったんだよ」


 なるほど、建国祭か。そういえば俺がこっちに来る時にも、北王が同じような祭りをやってたっけ。


「つまり、串カツを食べて、捨て子を拾う祭りか」


「それはアンタだけよ」


 なんて冗談はともかく、ひとつ気になったことがある。何でわざわざ全員集めてこの話をするんだってことだ。


「別に祭りをやるって連絡だけなら、紙かなんかで配りゃ良かったんじゃねぇの?」


 どうやらリズも全く同じことを思ったらしい。というか、この人何かにつけて俺らを招集しようとするよな。暇なんだろうか。


「連絡だけなら、確かにリズくんの言う通りだよ。けど、毎年の恒例行事で各隊ひとつ出し物をしてもらってるんだ」


「出し物?」


「そっ。今の時代、大きい組織には社会貢献が求められるからねぇ。まぁ、とはいえみんな忙しいから簡易的なものだけど。気分転換も兼ねてってとこかな」


 若干こじつけ感はあるが、他にも連絡事項があったってことか。にしても出し物……北王と同じなら、出店とかになるのかな?


「一応、君らは『暴食』の隊ってことになってるんだけど、小隊だからさ。人数的に厳しいかと思って是非を問いたかったんだよ」


 そう言って片目を瞑り、こちらに視線を送るギルマスだったが、返事なんて考えるまでもないだろう。


「「「「やる!!!!」」」」


 俺とイナルナ、そしてルティスは即答。リズとセリカは、たぶん俺らの判断に任せるスタンスだろう。特に反対はしてこなかった。


「よし! じゃあ決まり! 何やるか決まったら教えてね」


♦︎♦︎♦︎


 あれから、執務室でしばらく談笑した後、話し合いのため俺の部屋に全員で集まってきた。


「さてと、即答したはいいけど、何したいか具体的な案があるやついる?」


「……」


 返事はない。いや、この沈黙が返事か。ともかく誰も何も考えてなかったみたいだな。まぁ、それは俺も同じなんだけど。


「あの……」


 そんな沈黙の中、おずおずと手を小さく挙げて発言したのはルティスだった。


「どうした? ルティス」


「実は、やってみたいこと自体はあるんです。ただひとつ問題がありまして……」


 ギルド(こっち)に来てから、ルティスの態度がずっとしおらしい。まだ遠慮があるのか、任務中からは考えられないくらいに縮こまっている。


「別に遠慮することないから言ってみな? 他に意見があるわけでもないんだし」


 そう言って笑いかけると、ルティスの顔がパァっと明るくなる。


「じゃあ、少し待っててください! 今資料を持ってきます!」


 満面の笑みで言い残すと、4兄弟と共にドアから出て駆け出していく。


 うんうん。子供に遠慮なんて似合わない。ワガママなくらいでちょうどいいんだ。まぁ、初めて会った時はワガママ通り越してちょっと腹立ったけど。


「ふふっ。ルティスくん、嬉しそうだったね」


「だな」


 一体何をやりたいんだろうか。やっと自由になれたんだ。ある程度融通はきかせてやりたいけど、なんせ期間が1週間しかないからなぁ……


「にしても何がやりてぇんだろうな。ルティスのやつ」


「さぁ? 何にしても、せっかくやりたいって言ってくれたんだ。できる限り叶えてやろうぜ」


「そうだな。とか言って、とんでもねぇもんやりたいとか言い出したりしてな」


「流石に大丈夫だろ」


 あの年にしては大人びてるとはいえ、言い方は悪いが所詮10歳児だ。大それたことっていってもたかが知れてるだろ。


「それよりも、イナとルナはいいのか? いの1番に返事してたけど」


「あたしもやるって言っちゃった手前、何か案出さなきゃって困ってたところだから別にいいわよ」


「……同じく。何も考えてなかった」


 まぁ、そんなことだろうとは思ってた。あれだけいい返事をしておいて、俺が聞いた時は2人して何故かハッとしてたからな。


 多分あの時、何をしたいかまで考えてなかったことに気づいたんだろう。


「じゃあ、ひとまずルティスの案を聞いてみて、マジで無理そうなら頑張ってみんなで絞り出すってことで」


 そうこうしているうちに、ドタドタと忙しない足音がこちらへと迫ってくる。


「ありました!! この本です!」


 ルティスが音を立てて机の上に置いたその本は、古い童話だった。ふわふわした絵柄の絵がいっぱい描いてある、いわゆる絵本だな。


 想定通り、子供然とした可愛い出し物だ。何だろうか? 絵本を描きたいとかか? 1週間がちょっと厳しいかもだけど、まぁ軽い物ならいけるだろ。


「絵本を描くってことか? なら手分けして――」

「違いますよ! ちょっと待ってくださいね。確かこの辺りのページに……」


 ワクワクした顔で、ページをめくるルティスを見ていると、こいつも年相応な子供なのだと思い出させられる。


「ありました! これですこれ!」


 そう言ってこちらに向けて広げられたページを見て嫌な予感がする。そして、俺は知っている。こういう時、俺の予感は当たるのだと。


「“飛行船”!! これを作りたいんです!」


 ……やっぱり当たったか。


…………………………………………………………………

To be continued

どもども!お久しぶりでございます!毎度お馴染み雅敏一世です♪

祝!新章100話突破ー!ついに大台突破です!話がちっとも進んでいない気がするんですけど、まぁ、ゆっくりまったり行かせていただきます。

さてさて、今回とんでもない物を作りたいと言い出したルティスくんですが、このぶっ飛んだ案を真宗たちは受け入れるのか否か。やるとしてどうやって作るのか!乞うご期待でございます。

ではでは、また会いましょ〜♪

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