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ヘタレ魔王の英雄烈伝!  作者: 雅敏一世
新章第二幕 灼熱大陸編
121/124

新章99 いざ建国祭!




NO.115いざ建国祭!


「あのー、セリカさん。本当にそろそろどいてくれない?」


「重い?」


「正直ちょっと首が痛くなってきた」


「そっか」


 しゅんとした様子で、俺の頭から離れたセリカが、左隣にちょこんと座る。

 うぐっ、なんか罪悪感が。


「セリカ……怒ってる?」


「当たり前だよ! いきなり黙って居なくなっちゃうんだもん!」


 俺の膝に手を置き、「ガバッ」という効果音がつきそうなほどの勢いで、前のめりになったセリカが顔を近づけてくる。


 やっぱり離れなくなった原因はこれか。

 緊急の任務で、説得する時間がなかったとはいえ、流石に何も言わずに出て行くのはダメだよな。


「ごめん、もうしない。今度からはちゃんと言うから」


「えへへ、しょーがないから許してあげる」


 頭を撫でてちゃんと謝ると、あまりにもあっさり許してくれた。

 俺が言うのもなんだけど、ちょっとチョロすぎないか?


「イチャつくなら他所でやってくれませんかね」


 テーブルに片肘をついたルティスが、どこから取り出したかも分からない若葉を咥えて悪態をつく。


「そう言ってやるなよ。真宗も寂しかったんだろ」


「ちがっ……そういうわけじゃねぇよ!」


 ルティスと同じ姿勢で、テーブルに片肘をつくリズが、これまた同じく若葉を咥えて生暖かい視線を向けてくる。


 お前ら、揃いも揃ってどこから葉っぱなんて出したんだよ。


「えー、真宗くんは寂しくなかったんだぁ。私は寂しかったのになー」


「うん。全く――いたぁっ! ちょ、ごめん! ごめんってば!」


 ニヤニヤしながら言われたのが腹たったので、少しやり返してやろうと思ったが、無言で脇腹を殴られた。


「うわぁ、流石に今のは酷いですよ。見損ないました」


「お前はどうしたいんだよ」


 元はと言えば、お前が煽ったのが発端だろうが。

 そんなことを思いつつ、ポスポスとセリカに脇腹を叩かれていると、ひとつ気になっていた事を思い出した。


「そうだセリカ。お前、契約するとき、離れられなくなるとか言ってなかったか? 今回結構遠いところまで行ったんだけど」


「え? なんの話……はっ!」


 何を言っているか分からないといった風に話し始めたセリカだったが、途中で何かに気付いたのか、慌てて両手で口を塞ぐ。


「やっぱアレ嘘だったのか」


 セリカと契約する時に提示された条件。それが「契約したら離れられなくなるから、結婚しなきゃいけない」ってやつだ。


 離れたら爆発するとか脅された割に、その後セリカが一切気にしてるそぶり見せないから、変だとは思ってた。


 けど、まさか自分で言っといて忘れてたとはな。


「だって! だって、この機会を逃したら絶対後悔すると思ったから」


「だとしても嘘が雑すぎだろ」


 いやまぁ、その雑すぎる嘘にまんまと引っかかったのが俺なんだけども。


「ごめんなさい。いつか本当のこと話さなきゃって思ってたんだけど……忘れちゃってた」


 そう言うとセリカは首を傾け、舌を出し、コツンと頭に手をやる。こう言う仕草をすると、心底似似合うなこいつ。


「もういいよ。俺だってあの時セリカを選んでよかったって思ってるし。ただ気になったから聞いただけ」


「真宗くん……」


「待たせたわね!」


 ちょっといい雰囲気になりかけていたその瞬間、静寂を破ったのは、聞き慣れた少し懐かしい声だった。


「……待たせた」


「おい、まずは遅刻してごめんなさいだろ」


 声の方へと目をやると、やたら息の上がったイナが、手足を投げ出してされるがままになったルナの襟元を掴んで立っていた。


「あ、あたしは頑張った方よ……ここまで連れてこられたんだもの」


 やはりと言うかなんというか、ルナが原因か。

 今だって、イナに掴まれてぶら下がったまま、死んだ目で虚空を見つめてるし。


「この子をベッドから出すのが、どれだけ大変だったと思ってるのよ!」


「わかった、わかったからとりあえず座れって」


 部屋の隅にあった椅子を引っ張ってきて、イナを座らせる。


「で? なんでこんなに遅くなったんだよ」


「だから言ってるじゃないの。ルナをベッドから引っ張り出して、着替えさせて……床にへばり着くこの子を着替えさせるのがどれだけ大変だったか」


「あー、うん。軽率なこと言った俺が悪かった。大変だったんだな。ルナ、イナとみんなにごめんなさいしろ」


「……ごめんちゃい」


 謝る気ないだろと言いたくなるような、ふざけた謝罪だけど、当のイナは満足そうだしまぁいいか。


「さて、全員揃ったみたいだし、本題に入ろうか」


 そうだった。そのために今日集められたんだったな。


「と言っても、別に大した話じゃなくて、ただの業務連絡なんだけどね。かなり前、勇者全員に通達しておいたんだけど、忘れてる子が居たみたいだから」


 ギルマスが含みを持たせた言い方をすると、隣から小さく「あっ」と言う声が聞こえる。

 集められているこの状況を見れば明らかだけど、やっぱり伝え忘れていたのはセリカだったみたいだ。


「で? その伝え忘れってのは?」


 話を軌道に戻しつつ、ギルマスに話題を振ると、よくぞ聞いてくれたとばかりに大袈裟な咳払いをひとつ。


「お祭りを! するよ!!」


 それは、本来なら唐突じゃなかったはずの、唐突なお知らせだった。


…………………………………………………………………

To be continued

どもども!お久しぶりでございます!雅敏一世です!

お待たせしてほんっとーに申し訳ございません!しばらく私生活の方がごちゃごちゃしておりまして遅くなってしまいました!そちらの方が落ち着いたので、ようやく投稿できた次第でございます。

さて、ここからはしばし小休憩。ちょいとまったりしたお話が挟まります。その後に章タイトルの回収があると思いますので、どうぞ今後ともよしなに!

ではでは、また会いましょ〜♪

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