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ヘタレ魔王の英雄烈伝!  作者: 雅敏一世
新章第二幕 灼熱大陸編
117/124

新章95 思わぬ反撃




NO.111思わぬ反撃


「おい、真宗。ヒュートたち戻ってきたぞ……って、そいつどうした?」


「大丈夫。寝てるだけだ。相当気を張ってたみたいだな」


 ルティスに気を使い、外に出ていたリズが戻ってきた。

 と、同時に扉の隙間からヒュートがひょっこり顔を出す。


「よぉ、兄貴。そっちもなんとかなったみたいだな」


「おう。とりあえずはな。そっちは大丈夫だったのか?」


「あったりまえだっての。これでも一応『勇者』よ? 俺」


 そう言って自慢げに胸を叩いているのに、全くもって安心できないのは何故だろう。

 言い方のせいかな。あとは日頃の態度とか。


 まぁ、本人も言っている通り腐っても勇者だし、いざという時は頼りになるだろ。……多分。


「てか、思ってたよりも早かったな」


「あぁ、読みが外れてボスがこっちに居なかったからな。過剰戦力もいいとこだったぜ」


 そういやこっちに居たな。とはいえ、あの程度の雑魚がヒュートたち側だったところで、時間稼ぎにもならなかっただろうけど。


「それより大変だったのは――」


 途中で言い淀んだヒュートが見たのは何故か全身返り血まみれになっているモルドの方だ。


 何かを言いたげにチラ見している姿には見覚えがある。いや、身に覚えがあるというべきか。とにかくこいつも大変だったんだな。


「何にしても一件落着だな」


「その一言で片付けるには、詰み要素が多かった気がするが」


 リズが茶々を入れてくるが無視だ無視。まぁ、確かにちょーっと危なかった部分もあったけど、そんなのは誤差の範疇(はんちゅう)だ。


「そういえば、ずっと聞きたかったんだけどよ。なんでこいつこんなボロ雑巾みたくなってんの?」


 ヒュートが指さす先には文字通りボロ雑巾――もといビルが白目を剥いて転がっていた。

 引きずっている間中、既に死にそうな顔をしてたけど、とうとう限界を迎えたらしい。


「えっと、話すと長くなるんだけど――」


♦︎♦︎♦︎


「「ひじゃい」」


 事の顛末(てんまつ)をひと通り説明し終わると、俺とリズは頭に鈍い痛みを抱えながら正座させられていた。


 そして目の前には、さっきの頼りなさはどこへやら、いつになく真剣な顔をしたヒュートが仁王立ちで腕組みをしている。


「荷物全部忘れてくるやつがあるか!」


「「すみませんでした」」


 荷物、そう荷物だ。思えば任務の初めからおざなりにされていたけど、結局洞窟に置き去りになったらしい。


「いや、モルドの奴がわざわざ洞窟まで持ってきてくれてたの知らなくてよ。こっちにあると思ってたらなかったんだ」


 ナイスリズ! これならなんとか騙せ……違った、納得してもらえる!


「本当は?」


「かんっぜんに忘れてました」


 弱い。あまりに弱い。俺もあの圧で問い詰められたら自白しちゃうけどさ。それにしてももうちょっと粘って欲しかった。


「今回は何もなかったからいいけど、気が緩んでんじゃないのか?」


「ぐぅ」


「ぐうの音は出たか」


 その後、ひとしきり説教を受け、足が痺れてまともに立てなくなった頃。


「きゃぁぁあ!!!」


 子供特有の甲高い叫び声が小屋に響く。

 声の方を見ると、4兄弟がせっせと縛っていたビルが起き上がり、1人を踏みつけていた。


「へっ、こいつらを解放してほしけりゃ……は?」


「どこまでも小物だな」


 そのはずだったのだが、小さくひと言い放つ頃には、音もなく着地したヒュートが4兄弟を両脇に抱えて立っていた。


「はや――」


 と、呟く頃にはすでに隣からヒュートの姿は消えており、前を見ると小さく間抜けな声を上げたビルが組み伏せられていた。


 瞬殺。そう言う他ない状況に、俺含めて全員が呆然と眺めるしかない。


「おーい、2人とも。何ぼーっとしてんだ。早く縛ってくれ」


「お、おう」


 分かってはいたが、これが勇者か。

 純粋な強さだけじゃない。非常時の反応速度が段違いだ。


「お前演技下手すぎな。『勇者』を騙すんならもっとうまくやらねぇと」


 朝から順に縛られていくモルドの頬をペタペタと叩き、ヒュートが煽るように笑う。


「覚悟しろよ。お前ら」


「ははっ。絵に描いたような負け惜しみだな」


 なんか引っかかる言い方だけど、今更こいつに何ができるわけでもないか。

 それはリズもわかっているのか、なおも煽るヒュートを咎めることはしない。


「――!? 全員伏せろぉぉぉ!!!」


 直後、轟音と共に頭上が粉々に砕け散る。

 あっぶねぇ! ヒュートの言うとおり伏せてなかったら俺の頭もああなるとこだったぞ!


 が飛んできたんだ? ……犬? いや、あの感じだと狼か。にしても何でいきなり?


「し、死んでる?」


 気になって近づいてみると壁を破壊して入り込んできた狼は、頭部がそれは無惨なことになって息絶えていた。

 しかも、さっきからそこら中で遠吠えや唸り声が聞こえる。


 つまり、こいつ1匹じゃない。どころか、狼だけじゃなく、周辺の生き物の様子がおかしい。

 

「おい、ヒュート。なんか変だぞ!」


「てめぇ! 何しやがった?」


 胸ぐらを掴んで問いただすヒュートだったが、対するビルは今までになく落ち着いた様子で


「覚悟しろよ。お前ら」


 同じ言葉を繰り返し、不敵に笑っていた。


…………………………………………………………………

To be continued

どもども。皆さん毎度お馴染み雅敏一世です!

さて、一件落着……かと思いきやもう一波乱。真宗たちは無事帰還できるのか? クライマックス詐欺みたいになっていますが、もう少しお付き合いください。

ではでは、また会いましょ〜♪

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