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ヘタレ魔王の英雄烈伝!  作者: 雅敏一世
新章第二幕 灼熱大陸編
113/124

新章91 締まらない接敵




NO.107締まらない接敵


「ふと思ったけど、別に連れ出すだけだったらどっちかひとりで十分じゃね?」


「逆に言えば向こうに3人もいらないってことだろ。それに、あれでも勇者だからな。面子があんだろうよ」


 そういえばあいつ勇者だったな。完全に忘れてた。

 じゃあ心配要らないか。俺らはこっちに集中しよう。


 ……いや、ちょっと待て。なんかすごく大事なことを忘れてる気がする。


「なぁリズ」


「あ? どうした?」


 ひとつ完全に失念していたことを思い出して足を止めると、少し前を走っていたリズも振り向きながら立ち止まる。


「お前、小屋の場所わかる?」


「はぁ? んなの当たり前――あれ? そういや、ここどこだ?」


 何も気にせず真っ直ぐ走ってきたはいいものの、そういえば小屋の場所どころか現在位置すらわからない。


 それも当然。意識のないまま運ばれ、そこで解散した挙句、場所すら聞いてないんだからわかるはずがない。むしろわかったら怖いくらいだ。


 ただ、この場合だと怖くても分かってほしかったな。

 なんせ森のど真ん中で絶賛迷子なんだから。


「どーすんだ! カッコつけて『了解!』とか言い残して出てきたのに迷子じゃねぇか!」


「落ち着けっての。別にさっきの洞窟まで戻りゃいいだろうが」


「いや、戻ってところでもう誰もいなくない?」


 こうなるともう口論することすらなく、その場で2人して頭を抱えるほかない。まさかこんななんでもないところで詰むとはなぁ。


「おう、にいちゃん達こんなところで何やってんだ?」


 なす術なく立ち尽くしていると、不意に後ろから声がかかる。

 こんな森の中で誰が? という問いは、振り返った途端に解消されることになる。


「あんたは――」


 凶悪な人相に、小太りでスキンヘッド。モルドから聞かされていた情報と完全に一致している。

 間違いない。こいつがゾラークのボス、ボス……あれ? 名前なんだっけ? えぇっと、確か


「ヒル?」


「ちげぇよ。俺は――」

「おい真宗! 名前言ったら関係者だってバレるだろうが!!」


 しまった! 言われてみればそうじゃん。バレてなければ不意打ちならできたかもしれないのに!


「ふん、もう遅――」

「こんのバカが! 少しは任務中だって自覚待て!」


「そこまで言わなくたっていいじゃんか! 大体、リズだってもう少し早く止めてくれれば良かったのに!」


 リズの言うことはごもっともだし、苦しい言い訳なのもわかってるんだよ。けどさ、あんまりな言い方じゃん。


「ちょ、聞けっ――」

「止まる間もなかっただろうが! 大体てめぇはいつも余計な事しやがって。足手まといが!」


「はい超えたー。超えちゃいけない一線超えましたー! おい、そんなに言うならかかってこいよ。抗争だこーそー!」


 一度火がついてしまったが最後、その後はすったもんだの大騒ぎ。

 何か言いたげに佇んでいるヒル(?)を他所につかみ合いの大喧嘩だ。


「………やぁっかましいわ!!! いい加減しばくぞゴラァ!」


「「きったねぇ!」」


 そんな状況に我慢の限界が来たのか、唾を撒き散らしながら怒鳴りつけてくるヒル。唾を避けるため、互いにほっぺから手を離す俺とリズ。


 奇しくもこれで1対1プラス除け者の構図が、2対1に戻ったわけだ。


「おい真宗。とりあえず一旦休戦だ」


「あぁ。って、まだ続けるつもりだったのかよ」


 どうやら相当不満が溜まっていたらしい。

 最近、イナルナが懐いてきたから任せることが増えたもんなぁ。多分それだけじゃないだろうけど。


「てめぇらなぁ! 人様の前でごちゃごちゃごちゃごちゃ……名前間違いを訂正する隙もないじゃねぇか!」


 清々しいまでのド正論だ。返す言葉もない。というか、流石に敵とはいえ初対面の相手の前で喧嘩は流石に見苦しいよな。


「ったく、油断して背中向けたらボコボコにしてやろうと思ってたのに、その気も失せたじゃねぇか……って、うぉあ!?」


「ちょ、リズ!? お前今日緩急おかしくないか!?」


 まだ何かを言いかけていたヒルに、問答無用でリズが切り掛かる。

 そのまま倒れたところに覆い被さり、顔の横に剣を突き立て睨みつけた。


「テメェみたいなクズの言葉、一言だって聞いてたくねぇんだよ。昔の親父を思い出して反吐が出る」


 冷たく言い放つリズに、ヒルは倒された瞬間と違って余裕を取り戻している。


「あんま舐めるなよ? ガキの分際で」


「――ぐはっ!」


「リズ!!」


 同じく低い声で呟くヒルによって、リズが蹴り飛ばされ、次の瞬間には俺の横に転がっている。


「大丈夫か!?」


「あぁ、悪い。油断してた」


 頭を押さえながらも、リズはゆっくり立ち上がる。

 よかった。とりあえず無事みたいだ。


「お前ら、ずいぶん好き放題してくれたなぁ」


 雰囲気がさっきまでとまるで違う。やっぱりふざけてられる相手じゃないな。


「かかってこいよ。二度と舐めた口聞かないようにしてやる」


…………………………………………………………………

To be continued

どもども!今回は割と早い雅敏一世です!

さてようやく佳境となって参りました、救出任務編。遂に姿を表したビル。任務は一体どうなっていくのか!

ではでは、また会いましょ〜♪

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