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ヘタレ魔王の英雄烈伝!  作者: 雅敏一世
新章第二幕 灼熱大陸編
112/124

新章90 傍観者は語る



NO.106傍観者は語る


「っていうのが、ルティスの過去。その全てだ」

 

 モルドと名乗る受付のお兄さん。もとい、ゾラークの手先だったらしい男から、ルティスの過去を聞かされた。


 まさかルティスにそんな重い過去があったとはな。しかも、あいつまだ10歳かそこらだろ? そんな子供を奴隷にして犯罪の片棒を担がせるとか、胸糞悪いなんてものじゃない。


 で、話を聞かされたのはいいんだけど、とにかくこの男謎が多すぎる。なんでゾラークを裏切るリスクを負ってまで俺たちにこの話をするんだ?


 そもそも、俺らに手を貸して欲しいなら別にこんな洞窟まで連れてくる必要もないだろ。しかもわざわざ眠らせるなんて手のかかることまでして。


「何か言いたげだな黒いの」


「黒いの言うな。真宗だよ。まーさーむーね! ちょっと前にギルド支部で名乗っただろ」


「まぁいいじゃないか。名前なんてさ」


 いいかどうかは普通こっちが決めるものだと思うんだけどな。いちいち気にしてたら話が進まなくなりそうだからもういいか。


「面倒だからそれでいいや。で、なんで俺らにそんな話するんだ?」


「そんな話?」


「だから、なんでルティスの身の上話を俺らにするんだよ。ルティスを助けてほしいってのも、あんたにメリットなんてないだろ」


 しかも口ぶりからして、あいつに対する思い入れなんて内容に思える。

 ぶっちゃけ、ゾラークを裏切ってまでルティスを助ける理由が見当たらない。どころか、はっきり言うと――


「この話すら罠なんじゃないか、だろ?」


「わかってんじゃねぇの」


 まんまと図星をついたモルドのひと言に俺よりも早く反応したのは、ずっと眠そうにしていたリズだった。

 どうやら睡眠薬の効果がきれてやっと頭が冴えて来たらしい。


「ぶっちゃけお前の言動全部が怪しいんだよ。目的も、何もわかんねぇからな」


「目的! そうかなるほど。そういえば言ってなかったな」


 怪訝そうなリズから投げかけられる疑問に、わざとらしく大げさに頷いてモルドは続ける。


「俺はゾラークに拾われた身だが、一切恩なんて感じてないんだ。どころか、思い入れすらない。稼げたから残ってたまでだ」


 こいつは本当に疑いを晴らす気があるのか?

 そんなこと言われたら、余計に信用出来なくなるんだけど。


「今まではそれでよかった。けど、そうは言ってられなくなってしまってな」


「何かあったのか?」


「あぁ。ギルドによるゾラーク本社の制圧。そのせいでゾラークはほぼ壊滅状態だ。ここみたいにまだやっていけてる場所もあるが……まぁ、時間の問題だろうな」


「それって――」


 確実に俺のせいですよね。いや、やってることがやってることだから、自業自得としか言いようがないけども。


 けども、だ。自分が原因で誰かが職を失うってのを目の当たりにするとなんかくるものがあるな。 

 だからと言って同情とかはしないんだけど……あぁ、なんかモヤモヤする!


「そう。もちろんお前と『傲慢』のせいだ。だーかーら、少しでも申し訳ないと思ってるなら、お前たちに頼みがある」


 そんな俺の葛藤をよそに、モルドは顔をずいっと近づけて続ける。


「な、なんだよ」


「俺をギルド隊員に推薦しろ。そうすれば、入隊試験すっ飛ばして入れるんだろう? と言ってもそこの『強欲』様にはもう掛け合ってるんだが――」

「はぁ!?」


 何言ってくれちゃってんの? この人。って言うか、そもそも推薦って何? そんなのまかり通るなら、入隊試験の時の苦労は一体……


「ヒュート! どういう事だよ!!」


 こういう時は大人しく有識者に頼ろう。

 一応勇者なんだしその辺りは詳しいだろ。さっきから寝てるんじゃないかってくらい静かだけど。


「……おい、寝てんじゃねぇよ! お約束か!」


「――んぐが、あぁ? おはよう」


「お、おはよう。ってそうじゃねぇ。寝起きで悪いけど緊急事態なんだ。えっと、カクカクシカジカで――」


 とりあえずヒュートにこれまでのあらましを伝えるが、まるで全部分かっていたかのように反応は薄かった。


「なるほど、思ってたより早かったな」


「なんでそんな反応薄いんだよ」


「そりゃあ、事前に知ってたからな」


「はぁ!?」


 話を聞くに、着いてすぐヒュートが裏に連れていかれた際、今回の件の全容を伝えられたらしい。


 ルティスが睡眠薬で俺たちを眠らせること。眠っている俺たちをモルドが運ぶことでごく自然にゾラークの目から逃れる手筈だったこと。


 その全てをヒュートだけが事前に知っていた。


「もっと早く俺らにも言っておいて欲しかったよね。それ」


「しょうがないだろ。兄貴たちすぐボロを出しそうだし。それに、知らなくてもこうやって予定通り進んだだろ?」


 最初のひと言にぐうの音も出ないのが心底悔しいが、言い分としては理解できる。

 というか、実際本当に予定通り進んでいるんだからヒュートの判断は正解だったと言わざるを得ないだろう。


「けどよ、話を聞く限りじゃ俺らを拘束した時点でルティスたちは解放されてんじゃねぇのか?」


「いや、ビル――この支部のボスは約束なんで守る性質(たち)じゃない。というか、多分奴隷との約束なんて約束とも思ってない」


 リズが口にした淡い希望だったが、モルドの言葉にすぐさま否定されてしまう。

 ってか、マジでクソ野郎だなそいつ。じいちゃんですら、約束くらいは守るのに。


「そんなこともないか」


「――? どうした? 兄貴」


「い、いや。なんでもない」


 ともかく、ルティスたちの状況も決して言い訳じゃない現状、あまりもたついている時間もないだろう。


「チビ達に脱出できたら連絡を送るよう言っておいたんだが、未だ音沙汰もないってことはまぁ、そういうことだろうな」


「よっし、じゃあこうしよう。俺とモルドで本拠地を抑える。リズと兄貴はさっきの小屋まで戻って、ルティスたちを安全なところまで送り届けてくれ」


「「了解!!」」


 こうして、少し遠回りしたものの、ようやく救出任務がスタートした。


…………………………………………………………………

To be continued

どもども!お久しぶりでございます。雅敏一世です♪

ようやく最新話を皆さんにお届けできること、嬉しく思いますよ!!

さて、本編ではようやく全てが明らかとなり、ここから反撃が始まる……ということで次回より救出任務編も山場でございます。乞うご期待!!

ではでは、また会いましょ〜♪

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