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ヘタレ魔王の英雄烈伝!  作者: 雅敏一世
新章第二幕 灼熱大陸編
109/124

新章87 悪意の裏側




NO.103悪意の裏側


「ふぅ、やっと眠りましたね」


 そう呟く少年の足元には、3人がうつ伏せで転がっているシュールな光景が広がっている。

 一仕事終えたことに嘆息し、先程まで座っていたベンチへと再び逆戻り。


「まさか2発も必要になるとは。さすが“勇者”というべきですか、他2人とは鍛え方が違いますねぇ」


 言葉とは裏腹に褒めるつもりもない台詞を吐くルティスの小さな手に握られている注射器は4本。本来なら3本で事足りたものを、まさか予備まで使うことになるとは。もはや驚きを通り越して呆れるほどだった。


「すみませーん! こっちはもう終わったんで、回収お願いしまーす!」


 大声でカウンターの奥へと呼びかけると、ギルドの隊員服に身を包んだ青年が気だるそうに出てくる。

 その顔に笑みはなく、先程まで真宗達と話していた人間と同一人物とは到底思えない。


「それにしてもギルドのスパイまでいるとは。意外と層が厚いんですね。ゾラークは」


「一応、こんな辺境まで支配下にしている組織だからな。それより、私はお前がここにいることの方が驚きだ。監禁されていたのではなかったのか?」


 口では驚いたと言いつつ、全くそんな素振りは見せず、青年はどこまでも無関心を貫いている。

 そしてルティスの問いに応じながらも、テキパキと手を動かして簀巻(すま)きを3つ作り出す。


「ご主人様が僕の忠義を買って任せてくれたんですよ。子供の方が信用されやすいって。まぁ、読みはドンピシャでしたね。見事なまでに引っかかってくれましたし」

 

「ルティス、話すのは構わないが、報告に行かなければならないのではないか?」


「あぁ〜、そうでした。殴られる前に戻って報告しないと」


 額に手を当て、心底面倒くさそうに天井を仰ぐルティスを横目に、青年が作業を終えて3つの簀巻きを肩に担ぐ。


「ではな。報告は任せたぞ」


「へーい」


 遠くなっていく青年の背中を見届けて、ルティスも足を振り子のようにしてベンチから立ち上がる。


「じゃあ行きますか」


♦︎♦︎♦︎


「んぁ? どこだ? ここ」


 いや待て。本当にどこだ? なんか薄暗いしジメジメしてるけど、俺たちさっきまでギルド支部にいたよな?

 …………だめだ。何にも思い出せない。


 ドアを開けて外に出ようとして、その後から記憶が一切ない。多分気を失ったんだろうな。

 そうなると、全身ぐるぐる巻きにされて身動きが取れないのにも説明が――


 って、簀巻きにされてる!? おいおい、確実に襲われたやつじゃねぇか! 

 周りは……あっ、よかった。リズもヒュートも無事みたいだ。2人とも同じく縛り上げられてるけど、目立った外傷は見当たらない。


 これって声出せるかな?


「んむー」


 だめだったわ。いや、口元に何か当てられてる時点で無理だろうとは思ってたけどさ。

 さてと、どうしたもんか。助けを呼ぼうにも声は届かない。しかも薄暗いせいで視野も限られてると来た。


 あれ? 詰んでる?

 そもそもどうやって連れてこられたのかも、なんで拉致されたのかも何一つわからない。外からの攻撃だったら先頭にいたヒュートが気づいていただろうし、そうなると中にいたのは2人――


「ん? あぁ、目が覚めたようだな」


「んんふふ(あんたか)」


 暗がりからランタンを持って現れたのは受け付けにいたお兄さん。ルティスって可能性は低いだろうから、多分こいつにやられたんだろうな。


「んんー!!」


 見下ろしてくるお兄さんを睨みつけていると、隣に転がっているもう一つの簀巻きからうめき声が聞こえてくる。


「待っていろ。口元の布は外してやる。叫ぶんじゃないぞ」


「ぷはぁ! だーれかー!! たーすけ――へぶっ!」


「耳ついてねぇのかクソガキが!」


「だからってランタンで殴ることねぇだろ! 角当たったぞ角!」


 大体、この状況だったら誰だってこうするだろ。まぁ、音の反響的にだいぶ広い空間みたいだから外には聞こえなかっただろうけど。


 ちなみに、今口の拘束を解かれたリズも同じ様に叫んでぶん殴られてる。そんでもって、そのまま気絶した。

 あーあ、目が覚めたばっかりなのに。

 

「クソガキ共が……やはり眠らせたままの方が良かったか?」


「やっぱ眠らせたのあんただったのかよ! おい、口だけじゃなくて体の拘束も取れよ!」


「無理だ。少なくとも勇者が起きるまではな」


 即答かよ。ってか、ヒュートは寝過ぎじゃね? 俺とリズはほぼ同時に起きたのに、ヒュートだけまだイビキかいてるし。


「なぁ、なんでヒュートだけ起きないんだ?」


「睡眠薬が1本では効かなかったからな、2本では逆に多すぎたらしい。心配せずともじきに目を覚ますだろう」


 そこまで言い終えたお兄さんは、しゃがみ込んでずいっとランタンを顔の前まで近づけてくる。


「その前にお前たちにも言っておかなければな」


「――? なにを?」


「このような仕打ちをしておいて、厚かましいのは重々承知なのだが……」


 一瞬、躊躇ったように言葉を詰まらせて、一呼吸おいてから再びお兄さんは告げる。


「ルティスを、ルティスを救ってやって欲しい」


………………………………………………………………

To be continued

どもども!お久しぶりでございます!雅敏一世です♪

毎度遅くなって申し訳ない…そして、今回全然進まなかった!次回から色々動き出すと思いますので、どうぞご容赦ください。

ではでは、今回はこの辺りで!

また会いましょ〜♪

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