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ヘタレ魔王の英雄烈伝!  作者: 雅敏一世
新章第二幕 灼熱大陸編
108/124

新章86 激動の始まり




NO.102激動の始まり


「で、結局お前の名前聞けてないんだけど」


 ヒュートが戻ってきた後、聞き忘れていた一番大事な質問をすると、思い出したように少年が口を開く。


「そういえば忘れてましたね。僕はルティスといいます。なんかすごく遅い自己紹介な気がしますが、以後お見知り置きを」


 確かにめちゃくちゃ遅いな。ってか、こいつヒュートがいるから猫かぶってやがる。なんだよその意味のないウインクは。さっきまでの太々しさはどこに行ったんだこの野郎。


「で、早速になって悪いけど、事の顛末(てんまつ)を聞かせてもらおうか。一体何があったんだ?」


 若干申し訳なさそうな表情を残しつつも、それ以上の焦りに急かされたヒュートが、ルティスの視線の高さまでしゃがみ込んで問いかける。


「依頼したいことは至ってシンプルです。捕まっている僕の()()を救出してほしいんですよ」


「家族の救出? 誘拐されたってことか?」


 聞き返してみると、ルティスはゆるゆると横に首を振ってから、言いたくなさそうに話し始める。


「僕たちは孤児なんですよ。子供の頃、親に捨てられて、今の孤児院に拾われたんです」


 いきなりのクソ重い話に、全員が言葉に詰まっていると、ルティスがため息をついてから「まぁ、そこが路地裏よりもよっぽどクソだったんですが」と小さくこぼした。


「ご飯はほとんど残飯。床で雑魚寝は当たり前、罵倒されるわ蹴り飛ばされるわで散々でしたよ。ご飯はともかく、寝るときに段ボールもないっておかしいでしょうが!」


「いや、段ボールも大概だと思うけど」


 というか、イナルナも初めに会った時は段ボールの中に居たな。そんなに居心地いいのか? 見た目暖かそうではあるけど。


「外出も一切禁止なので、助けを求めることもできなかったんです」


 そこまで言い終えると、一度目を伏せて忌々しげに舌打ちを一回、盛大にため息をついてから再び話し始める。 


「でも最近、管理人のクソジジイがよく家を空けるので、チャンスだと思ってここまで来たんですけど、辺境だから時間がかかると言われてしまって……すぐ戻れると思ってあの子たちを置き去りにして来たのが心配で」


 なるほど。それであの慌て様だったのか。


「しかも、子供だと手続きに時間がかかるからなぁ」


「どういうこと?」


 しゃがみ込みながらヒュートがこぼしたひと言を疑問に思い、聞き返してみる。


「ほら、ギルドって公国からの給付……つまりは税金と依頼人から直接渡される依頼料で成り立ってるだろ? けど、子供や貧困層には払えない人もいる」


「言われてみればそうだな。その場合ってどうなるんだ?」

 

「審査を受ければ無償で依頼できる。けど、この審査が面倒でな。イタズラ防止のために結構細かく調べるんだよ」


 ヒュートが「そうだろ?」と言いたげに、ルティスへと視線を送ると同意するようにコクコクと頷く。


「まぁ、そのおかげであのクソジジイが『ゾラーク』とかいうヤバい組織の幹部だったことが分かったんですけど」


「あぁ、それでわかったのか。じゃあ別に悪いことだけってわけじゃ……今なんて言った?」


「へ? だから、あのクソジジイが幹部だったって」


 聞き間違いかと思ったけど、どうやら違ったらしい。

 ゾラーク幹部といえばバルトもそうだったな。そっか、バルトと同じか――


「はぁ!? バルトと同じ!?」


「うるせぇな。ってか誰だよそいつ」


 1人驚く俺を他所に、リズが鬱陶しそうな顔で耳を塞ぐ。


「前に任務で戦ったゾラークの幹部だよ。雷刃と2人がかりでやっと倒せたってのに……」


「なら余裕じゃねぇの?」


「戦ってないからそんなこと言えるんだよ。余裕なわけ――」


 いや待てよ? 確かに前回は2人。それに対して今回は3人だ。しかも忘れてけど、ヒュートも雷刃と同じく勇者。

 あれ? これってヒュートが勇者の中で最弱とかじゃない限りいけるんじゃないか?


「まぁ、相手が誰にしてもこの面子なら過剰戦力だろ。“覚醒者”3人だし」


 「よっこらしょ」と声を出しながら、膝に手をついてヒュートが立ち上がる。


「そうと決まれば善は急げだ。ルティス、案内頼めるか?」


 ドアの方は歩いて行き、ドアノブに手をかけながらヒュートが問いかける。


「はいっ!」


 それを受けたルティスが元気良く返事をし、顔を綻ばせる。

 こういうところ見てると、やっぱまだ子供なんだな。クソ生意気だけど。


「んぁ? やっと話終わったか?」


 珍しく口数が少なくぼーっとしていたリズが、ゼンマイを巻き直したおもちゃのように、再び動き始める。


「リズ、今日眠そうだな」


「ガキどものせいでな」


 あぁ、そういえば東共から戻ってきたあとずっと面倒見ててもらってたんだったな。

 俺だったら8割スルーだから大した労力じゃないけど、リズみたいにいちいちツッコんでいたら体力も持たないのも無理ない。


「そんじゃ、気合い入れて任務開始と行くか!」


「ってぇ」


 未だ眠そうにしているリズの背中をバンと叩くと、不服そうな声をあげて歩き始める。

 そして、これを最後に俺の意識は途絶えた。


………………………………………………………………

To be continued

どもども!お久しぶりでございます!雅敏一世です!

いやぁ、ほんっとーに申し訳ない!1ヶ月も空いてしまいました。

色々と理由はあるのですが、割愛させていただきまして、一応週一回の投稿を心がけてはおりますが、なにぶん私生活の関係上来年の3月辺りまでは不定期が続きますのでご了承ください。

ではでは、今日はこの辺りで。また会いましょ〜♪

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